確信があったから押し切ったのではなく、大手にない商品でなければ競争劣位に立つという競争上の必要と、外注生産ゆえに最悪でも3億円で済むという損失の上限が、確信の不足を埋めていた。新規事業の可否を、成功の見込みではなく失敗したときの傷の深さで測る判断のしかたは、資金力の乏しい新参企業がとりうる数少ない攻め方だったと思われる。
缶の色をめぐって創業社長が引き下がった場面も、同じ性格を持っている。誰もが支持する新製品は大ヒットにつながらない、と正則氏は後に振り返っている。役員12人中10人の反対という数字は、失敗の確率が高かった証しであると同時に、当時の常識から十分に離れていた証しでもあった。その距離をどう測るかは、新しい商品を出す企業がいまも抱える問いであるといえる。