浜岡1・2号機の廃炉(2008年・中部電力の決断)

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論点1・2号機を廃炉にして6号機を新設するか
中部電力:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
運転終了と隣接地への6号機新設という設備更新の選択

何をなぜ決めたか:運転終了と隣接地への6号機新設という設備更新の選択

概要

2008年12月22日、中部電力は取締役会で、浜岡原子力発電所1・2号機の運転終了と6号機の建設等を内容とするリプレース計画等を決定した。経済産業大臣への電気工作物変更届出を経て、出力540千kWの1号機と840千kWの2号機は2009年1月30日をもって発電用の電気工作物として廃止された。

運転終了に伴う損失1,536億円を2009年3月期の特別損失に計上し、同期は189億円の当期純損失となっている。三田敏雄社長のもとでの設備更新の判断である。

背景

浜岡は東海地震の想定震源域に立地し、耐震強化の要請が重かった。出力の小さい初期の2基を耐震補強して残すか、廃止して大型の新型機に置き換えるかが、費用対効果の観点から2000年代を通じて問われていた。

内容

1976年運転開始の1号機と1978年運転開始の2号機を2009年1月に運転終了し、2040年代前半まで約30年をかけて4段階で解体する廃止措置に入った。同時に、隣接地への6号機新設をリプレースとして計画した。

特別損失1,536億円の内訳は、投資の回収が困難となった発電設備の減損損失309億円と、解体等により今後発生する費用に備える運転終了関連損失引当金870億円などである。減損の回収可能価額は、他への転用や売却が困難なため零円とした。

含意

運転終了関連損失引当金は2010年3月期に866億円あったが、2011年3月期に資産除去債務会計基準の適用で一部が資産除去債務へ移り449億円となり、2014年3月期には228億円まで減少した。2011年の福島第一原発事故後に浜岡は全基停止となり、6号機新設は2016年に長期経営指針から外れた。廃炉だけが進み、2025年に2号機で商業炉として国内初の原子炉解体に着手した。

いつ何が起きたか8件
考察:設備更新という計算が、時代に追い越されるとき
考察

考察:設備更新という計算が、時代に追い越されるとき

この判断を"安全のための廃炉"とだけ読むと、芯を外す。決定は福島事故より前の2008年で、中心にあったのは安全そのものより費用対効果の計算であった。営業運転から30年を超えた出力の小さい2基を、東海地震向けの耐震補強を重ねて延命させるより、廃止して大型の新型機に置き換えるほうが得策とみた設備更新の選択である。想定震源域の直上という立地が、その計算の重みを他社より大きくしていた点に、この判断の特徴がうかがえる。

もっとも、リプレースという枠組みは、もう一方の中核である6号機新設を失って完結しなかった。福島事故で浜岡は全基停止となり、6号機は2016年に長期経営指針から外れた。残ったのは1,536億円の特別損失と、解体費用に備えて積んだ870億円の引当金である。設備更新のはずが、結果として原発を2基減らしただけの廃炉に変わり、その廃炉も2040年代前半まで約30年を要する事業になった。老朽機の整理という前向きな計算が、外部環境の激変によって輪郭を書き換えられた——中部電力の原子力をめぐる歩みは、一つの経営計算が時代に追い越される例として読むことができる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

中部電力:浜岡1・2号機の廃止に備えた引当金

原子力発電所運転終了関連損失引当金(百万円)
中部電力:浜岡1・2号機の廃止に備えた引当金
(百万円)原子力発電施設解体引当金原子力発電所運転終了関連損失引当金備考
2005年3月期82,638−
2006年3月期89,093−
2007年3月期92,020−
2008年3月期113,069−省令改正で解体費の総見積額が増加し、増加額14,574百万円を一括計上
2009年3月期117,92987,009リプレース計画の決定を受け、運転終了関連損失引当金87,009百万円を新たに計上
2010年3月期119,85886,557
2011年3月期−44,926資産除去債務会計基準の適用で解体引当金は全額、関連損失引当金は一部が移行
2012年3月期−39,365
2013年3月期−31,125
2014年3月期−22,768
出所:中部電力 有価証券報告書 第82〜90期(連結貸借対照表)
出所:中部電力 有価証券報告書 第82〜90期(連結貸借対照表)

中部電力:連結の売上高と経常利益

売上高(億円)経常利益率(%)
中部電力:連結の売上高と経常利益
(億円)売上高経常利益備考
2004年3月期21,0101,849
2005年3月期21,3321,951
2006年3月期21,5052,197
2007年3月期22,1371,786
2008年3月期24,3281,234
2009年3月期25,0991,305経常利益は71億円の増益だが、特別損失の計上で当期純損失189億円
2010年3月期22,3851,785
2011年3月期23,3081,463
2012年3月期24,492△679浜岡の全炉停止で火力の燃料費が増加し経常損失に転じた
2013年3月期26,489△435
2014年3月期28,421△926
出所:中部電力 有価証券報告書 第80〜90期【主要な経営指標等の推移】(連結)
出所:中部電力 有価証券報告書 第80〜90期【主要な経営指標等の推移】(連結)

リプレース計画の条件

リプレース計画の条件
科目概要備考
決議日2008年12月22日取締役会で1・2号機の運転終了と6号機の建設等を内容とするリプレース計画等を決定
運転終了日2009年1月30日経済産業大臣への電気工作物変更届出により、発電用の電気工作物としては廃止
対象号機と出力1号機540千kW・2号機840千kW合計1,380千kW。2009年1月に廃止
浜岡1,2号運転終了関連損失153,698百万円2009年3月期の特別損失。前期の特別損失13,694百万円から1,400億円の増加
うち減損損失30,861百万円投資の回収が困難なため帳簿価額を回収可能価額まで減額して計上
減損した資産の内訳機械装置25,372百万円建物1,396百万円、構築物2,996百万円、その他1,097百万円
回収可能価額零円正味売却価額を使用。他への転用や売却が困難なため零円とした
運転終了関連損失引当金87,009百万円発電設備の解体等により今後発生する費用または損失の合理的な見積額
当期純損益当期純損失189億円前期は当期純利益706億円。経常利益は1,305億円で71億円の増益
併せて決めた計画6号機の建設1・2号機に代えて隣接地へ新設するリプレース計画の一部
出所:中部電力 有価証券報告書 第85期(2009年3月期)【設備の状況】【連結損益計算書関係】【連結貸借対照表関係】
出所:中部電力 有価証券報告書 第85期(2009年3月期)【設備の状況】【連結損益計算書関係】【連結貸借対照表関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 中部電力 各号機建設経緯(浜岡原子力発電所)
  • 中部電力 浜岡原子力発電所 設備データ
  • 中部電力 有価証券報告書【沿革】
  • 中部電力 有価証券報告書「第85期(2009年3月期)【設備の状況】」
  • 中部電力 有価証券報告書「第85期(2009年3月期)【連結損益計算書関係】浜岡1,2号運転終了関連損失」
  • 中部電力 有価証券報告書「第85期(2009年3月期)【重要な会計方針】原子力発電所運転終了関連損失引当金」
  • 中部電力 企業公式サイト「浜岡1・2号の廃止措置について」

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