パワーグリッドとミライズへ分社(2020年・中部電力の決断)

更新:
論点送配電・小売を分社し持株会社へ移行するか
中部電力:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
送配電・小売の分社化と持株会社体制への移行

何をなぜ決めたか:送配電・小売の分社化と持株会社体制への移行

概要

2020年4月1日、中部電力は一般送配電事業等を中部電力パワーグリッドへ、小売電気事業等を中部電力ミライズへ吸収分割で承継させ、自らは持株会社となった。渡した資産はパワーグリッドが2兆1,311億円、ミライズが2,743億円である。

前年4月に火力発電をJERAへ全面移管しており、報告セグメントはミライズ・パワーグリッド・JERAの3つに整理された。

背景

2016年4月の電力小売全面自由化で新電力が急増し、大手電力は地元で顧客を奪われる一方、エリア外へ攻め込む競争が始まった。2015年6月に改正された電気事業法では、送配電部門の一層の中立性確保のため、2020年4月までに発電・小売事業と送配電事業を法的に分離することが求められた。

内容

2019年4月26日の取締役会で両承継会社との吸収分割契約の締結を決議し、同日契約を締結した。同年6月26日の定時株主総会で一般送配電事業等の吸収分割契約の承認を得て、2020年3月13日に所管官庁の分割認可を取得している。

分割の前年度、中部電力単体の売上高2兆7,190億円のうち、小売電気事業等が92.28%、一般送配電事業等が7.33%を占めていた。売上のほとんどを本体から外へ出す再編である。

含意

承継によって中部電力単体の従業員は14,363人から3,092人へ減り、本体は経営管理と浜岡原子力発電所、新規事業を担う会社に変わった。林欣吾社長は2020年代後半の連結経常利益2,500億円以上を掲げ、国内エネルギー事業と新しい成長分野・海外事業等の利益創出割合を、当時の4対1から1対1へ組み替える考えを示した。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役12名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

考察:分離することと、収益を上げること
考察

考察:分離することと、収益を上げること

制度が求めたのは送配電部門の切り出しであって、小売まで別法人にすることでも、持株会社へ移ることでもなかった。中部電力はその求めを超えて中部電力ミライズを分け、単体売上高の92.28%を占める小売電気事業等までを外へ出している。本体に残ったのは経営管理と浜岡原子力発電所、新規事業で、従業員は14,363人から3,092人になった。林欣吾社長が掲げた2020年代後半の連結経常利益2,500億円以上という目標と、利益創出割合を4対1から1対1へ組み替えるという方針は、電力を数ある事業の一つとして扱う宣言でもあった。

ただ、分社の初年度となる2021年3月期は、売上高2兆3,570億円を負ったミライズの利益が380億円にとどまり、売上高が7分の1に満たないパワーグリッドの588億円を下回った。競争事業を独立した法人にしても、その稼ぐ力がただちに立ち上がったわけではない。翌期には燃料価格の高騰がミライズに834億円の損失をもたらし、規制で収入が定まるはずのパワーグリッドまで148億円の損失に沈んでいる。法人を分けることは責任の所在をはっきりさせても、稼ぐ力そのものをつくるところまでは届かないといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る4表

数字で見る

図と表

中部電力:中部電力単体と連結の従業員数

中部電力単体(人)子会社(人)
中部電力:中部電力単体と連結の従業員数
(人)連結従業員数中部電力単体備考
2016年3月期30,65916,796
2017年3月期30,63516,632
2018年3月期30,55416,461
2019年3月期30,32116,086
2020年3月期28,44814,363
2021年3月期28,2383,092送配電・小売の承継で単体は14,363人から3,092人へ減った
2022年3月期28,3653,127
2023年3月期28,3673,153
2024年3月期28,3743,180
2025年3月期22,5663,289
2026年3月期22,7003,367
出所:中部電力 有価証券報告書 第92〜102期【従業員の状況】
出所:中部電力 有価証券報告書 第92〜102期【従業員の状況】

中部電力:中部電力ミライズの売上高とセグメント利益

ミライズ売上高(百万円)ミライズセグメント利益率(%)
中部電力:中部電力ミライズの売上高とセグメント利益
(百万円)ミライズ売上高ミライズセグメント利益備考
2019年3月期2,646,01664,411分社前。区分名は「販売」で、翌期有報の組替後の数値
2020年3月期2,604,24745,242分社前。区分名は「販売」で、翌期有報の組替後の数値
2021年3月期2,357,01838,0364月1日に小売電気事業等を承継し、中部電力ミライズとして発足
2022年3月期1,966,812△83,461燃料価格の高騰で電源調達コストが増え834億円の損失
2023年3月期2,989,15164,851
2024年3月期2,848,984203,836
2025年3月期2,911,129117,079
2026年3月期2,815,065137,990
出所:中部電力 有価証券報告書 第95〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)
出所:中部電力 有価証券報告書 第95〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)

中部電力:中部電力パワーグリッドの売上高とセグメント利益

パワーグリッド売上高(百万円)パワーグリッドセグメント利益率(%)
中部電力:中部電力パワーグリッドの売上高とセグメント利益
(百万円)パワーグリッド売上高パワーグリッドセグメント利益備考
2019年3月期123,07842,748分社前。区分名は「電力ネットワーク」で、翌期有報の組替後の数値
2020年3月期195,98547,939分社前。区分名は「電力ネットワーク」で、翌期有報の組替後の数値
2021年3月期310,01058,8144月1日に一般送配電事業等を承継し、中部電力パワーグリッドとして発足
2022年3月期375,051△14,836電力需給調整コストの増加で148億円の損失
2023年3月期586,8137,034
2024年3月期347,35995,633
2025年3月期410,00747,582
2026年3月期403,54047,596
出所:中部電力 有価証券報告書 第95〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)
出所:中部電力 有価証券報告書 第95〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)

吸収分割の条件

吸収分割の条件
科目概要備考
決議日2019年4月26日取締役会で両承継会社との吸収分割契約を決議し同日締結。6月26日の定時株主総会で承認
分割認可2020年3月13日一般送配電事業及び小売電気事業について所管官庁の分割認可を取得
企業結合日2020年4月1日
企業結合の法的形式吸収分割中部電力を分割会社、100%子会社のパワーグリッドとミライズを承継会社とする
承継会社(送配電)中部電力パワーグリッド一般送配電事業、電気通信事業及びこれらに附帯関連する事業を承継
承継会社(小売)中部電力ミライズ電気販売事業、ガス事業及びこれらに附帯関連する事業を承継
分割対象事業の売上高(送配電)199,353百万円中部電力単体の売上高2,719,087百万円の7.33%(2020年3月期・外部売上高)
分割対象事業の売上高(小売)2,509,289百万円同じ単体売上高の92.28%(2020年3月期・外部売上高)
承継した資産(送配電)2,131,068百万円固定資産2,092,902百万円、流動資産38,166百万円(2020年4月1日現在)
承継した負債(送配電)232,145百万円固定負債101,554百万円、流動負債130,591百万円
承継した資産(小売)274,345百万円固定資産40,238百万円、流動資産234,106百万円(2020年4月1日現在)
承継した負債(小売)203,839百万円固定負債9,543百万円、流動負債171,849百万円、特別法上の引当金22,446百万円
会計上の取扱い共通支配下の取引100%子会社への承継のため、企業結合会計基準に基づき共通支配下の取引として処理
出所:中部電力 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【企業結合等関係】重要な後発事象・第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】
出所:中部電力 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【企業結合等関係】重要な後発事象・第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役12名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 中部電力 有価証券報告書【沿革】【事業の内容】
  • 中部電力 適時開示「分社化後の新たなブランドについて」
  • 中部電力 適時開示「分社化後の事業体制に応じた組織再編(2020年4月1日付)について」
  • 中部電力 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【企業結合等関係】重要な後発事象」
  • 中部電力 有価証券報告書「第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】」
  • 中部電力 統合報告書「中部電力グループレポート2020」

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