東北電力ネットワークへ分社(2018年・東北電力の決断)

更新:
論点送配電部門を別会社へ分社するか
東北電力:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
発送電の法的分離を受けた送配電部門の切り出しと別会社化

何をなぜ決めたか:発送電の法的分離を受けた送配電部門の切り出しと別会社化

概要

2020年4月1日、東北電力は一般送配電事業および離島における発電事業等を、吸収分割により100%子会社の東北電力ネットワークへ承継させた。2015年6月に成立した改正電気事業法が定めた送配電部門の法的分離に対応する手続きで、1951年の設立以来続いた発送配電の一貫経営が法人の形のうえで解かれた。

渡した資産は2兆213億円、負債は3,377億円。提出会社の従業員は7,470人減少して5,061人になった。

背景

日本では2003年の制度改正で送配電部門の会計分離が導入されていたが、中立性が不十分との指摘を受けて2013年に法的分離の実施が閣議決定された。発電は1995年以降に参入が自由となり、小売は2016年4月に全面自由化されており、残る送配電の中立性が競争の条件になっていた。

内容

2018年9月に分社化の方向性を公表し、2019年4月25日の取締役会で吸収分割契約の締結を決議して同日契約を締結した。同年6月26日の第95回定時株主総会で関連議案の承認を得て、2020年3月13日に電気事業法に基づく経済産業大臣の認可を取得している。

純粋持株会社を新設せず、発電事業と小売電気事業等を営む本体を「事業持株会社」として残し、その下に100%出資の東北電力ネットワークを置く体制を選んだ。承継会社は普通株式3,548万株を発行してすべてを東北電力へ割り当て、資本金は240億円となった。

含意

分割対象事業の売上高は1,895億円で、東北電力単体の売上高の9.4%にとどまる。それに対して承継した資産は2兆213億円、移った従業員は7,470人で、単体従業員の6割近くが送配電側へ移った。売上の比率と資産・人員の比率の開きが、送配電が設備と人手で支える事業であることを表している。分社後、発電・販売側は燃料と市場価格の振れを受けて2022年3月期・2023年3月期に赤字を計上し、送配電側は2023年4月に始まったレベニューキャップ制度のもとで5年間の収入の枠を得た。

いつ何が起きたか10件
考察:期日の決まった再編が残したもの
考察

考察:期日の決まった再編が残したもの

この分社は、東北電力が自ら望んで描いたものではなく、2015年の改正電気事業法が期日まで指定した制度対応への回答であった。それでも回答の仕方には幅があり、東北電力は純粋持株会社を新設せず、発電と小売を営む本体を「事業持株会社」として残したうえで、その下に東北電力ネットワークを置いた。切り出した事業の売上高は単体の9.4%にすぎないが、移した従業員は7,470人で、提出会社の従業員は12,531人から5,061人へ減少している。売上の比率では小さく、人と設備の比率では大きい——この非対称が、送配電という事業の姿をそのまま映しているといえる。

もっとも、分離の意味がはっきり見えたのは、その後に並んだ数字のほうであった。2022年3月期に830億円、2023年3月期に2,184億円のセグメント損失を計上したのは、燃料と市場価格の振れを引き受ける発電・販売部門である。一方の送配電側は、同じ2期とも黒字を保ち、2023年4月に始まったレベニューキャップ制度のもとで5年間の収入の枠を国から承認された。同じ法人の内側で均されていた二つの収益構造は、分社を境に別々の決算として並ぶ。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る4表

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図と表

東北電力:東北電力単体と連結の従業員数

東北電力単体(人)子会社(人)
東北電力:東北電力単体と連結の従業員数
(人)連結従業員数東北電力単体備考
2016年3月期24,28512,311
2017年3月期24,77112,748
2018年3月期25,05812,839
2019年3月期25,03212,678
2020年3月期24,87012,531
2021年3月期24,7175,061一般送配電事業等の承継で提出会社の従業員は7,470人減少した
2022年3月期24,8334,927
2023年3月期24,5284,901
2024年3月期24,2344,763
2025年3月期18,3784,661ユアテックと同社の子会社16社が11月に連結子会社でなくなり5,856人減
2026年3月期18,4034,587
出所:東北電力 有価証券報告書 第92〜102期【従業員の状況】
出所:東北電力 有価証券報告書 第92〜102期【従業員の状況】

東北電力:送配電事業の売上高とセグメント利益

送配電事業売上高(百万円)送配電事業セグメント利益率(%)
東北電力:送配電事業の売上高とセグメント利益
(百万円)送配電事業売上高送配電事業セグメント利益備考
2021年3月期421,05440,9374月1日に一般送配電事業等を承継し、報告セグメントとして分かれた
2022年3月期348,93440,945
2023年3月期617,66111,388
2024年3月期371,26660,701
2025年3月期443,83416,925翌期有報は区分変更後の数値へ組み替え、売上高475,392・利益20,335
2026年3月期476,702△1,078
出所:東北電力 有価証券報告書 第97〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高・経常損益ベース)
出所:東北電力 有価証券報告書 第97〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高・経常損益ベース)

東北電力:発電・販売事業の売上高とセグメント利益

発電・販売事業売上高(百万円)発電・販売事業セグメント利益率(%)
東北電力:発電・販売事業の売上高とセグメント利益
(百万円)発電・販売事業売上高発電・販売事業セグメント利益備考
2021年3月期1,648,95313,975送配電を切り出した残りの本体事業が独立した報告セグメントになった
2022年3月期1,498,107△83,017燃料価格と電力市場価格の上昇で830億円の損失
2023年3月期2,100,247△218,4782期連続の赤字で損失は2,184億円に広がった
2024年3月期2,163,720220,201
2025年3月期1,998,491243,853翌期有報は区分変更後の数値へ組み替え、売上高2,061,127・利益245,178
2026年3月期1,843,438126,604
出所:東北電力 有価証券報告書 第97〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高・経常損益ベース)
出所:東北電力 有価証券報告書 第97〜102期【セグメント情報】(外部顧客への売上高・経常損益ベース)

吸収分割の条件

吸収分割の条件
科目概要備考
企業結合の法的形式吸収分割東北電力を分割会社、100%子会社の東北電力ネットワークを承継会社とする
取締役会決議日2019年4月25日同日に承継会社の取締役決定があり、同日付で吸収分割契約を締結した
株主総会承認日2019年6月26日第95回定時株主総会で承認可決。承継会社も同日の臨時株主総会で承認
経済産業大臣の認可日2020年3月13日一般送配電事業の分割について電気事業法に基づく認可を取得した
効力発生日(企業結合日)2020年4月1日
承継させた事業の範囲一般送配電事業、離島における発電事業等これらに附帯関連する事業に関して有する権利義務を効力発生日に承継
分割対象事業の売上高189,541百万円東北電力単体の売上高2,025,559百万円の9.4%(2019年3月期・外部売上高)
承継した資産2,021,341百万円固定資産1,828,465百万円、流動資産192,875百万円(2020年4月1日現在)
承継した負債337,774百万円固定負債64,414百万円、流動負債273,360百万円(2020年4月1日現在)
割当ての内容普通株式3,548万株承継会社が発行し、すべてを分割会社である東北電力へ割当て交付した
承継会社の資本金24,000百万円分割会社である東北電力の資本金251,441百万円に変更はない
承継しない権利義務既存の公募社債に係る債務等債務の承継は免責的債務引受による。新株予約権付社債の義務も承継しない
会計上の取扱い共通支配下の取引企業結合に関する会計基準(第21号)等に基づき処理。のれんの記載はない
出所:東北電力 有価証券報告書 第95期(2019年3月期)【重要な後発事象】・第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】
出所:東北電力 有価証券報告書 第95期(2019年3月期)【重要な後発事象】・第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 東北電力 有価証券報告書 第101期(2025年3月期)【沿革】【事業の内容】
  • 東北電力 有価証券報告書 第97〜102期【従業員の状況】【セグメント情報】
  • 東北電力ネットワーク「レベニューキャップ制度の概要について」(2023年9月29日)
  • 東北電力 適時開示「法的分離に伴う一般送配電事業の分社化の方向性について」
  • 東北電力 適時開示「一般送配電事業の分社化に向けた吸収分割契約の締結について」
  • 東北電力 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【重要な後発事象】」
  • 東北電力 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 東北電力 有価証券報告書「第97期(2021年3月期)【企業結合等関係】」
  • 東北電力ネットワーク 企業公式サイト「新たな託送料金制度に基づく託送供給等に係る「収入の見通し」の承認について」

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