フジテレビジョン新設分割(2008年・フジ・メディアHDの決断)

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論点認定放送持株会社へ移行するか
フジ・メディアHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
認定放送持株会社体制への移行と、フジ・メディア・ホールディングスの発足

何をなぜ決めたか:認定放送持株会社体制への移行と、フジ・メディア・ホールディングスの発足

概要

2008年5月15日の取締役会で、放送事業等の主要事業を分割する会社分割を10月1日付で行うことを決議し、6月27日の定時株主総会で承認された。10月1日、フジテレビジョンは商号を株式会社フジ・メディア・ホールディングスへ改めて認定放送持株会社となり、グループ経営管理事業を除く一切の事業を新設分割で切り出して、新しい株式会社フジテレビジョンへ承継させた。上場会社の地位は分割会社に残っている。

背景

分割の狙いに置いたのは、放送事業を核としつつ放送以外の周辺事業領域へグループ経営資源の選択と集中を進め、外部との資本・業務提携や事業再編を積極的に行える体制を構築することであった。「メディア・コングロマリット」を目指す長期的なグループ経営ビジョンには、経営の意思決定の迅速性と事業執行の機動性、そして適正なグループガバナンスが要る。この3つを同時に満たす組織形態が認定放送持株会社体制であり、移行そのものをメディアグループとしての「第二の創業期」と位置づけた。

内容

方式は分社型新設分割で、新設会社は普通株式2,000株を発行し、その全てを分割会社へ割当交付した。承継させた資産は2,369億8百万円、うち流動資産が1,274億43百万円、固定資産が1,094億64百万円で、純資産は1,618億8百万円。分割する事業の規模は2008年3月期実績で売上高3,829億71百万円であった。新設会社は資本金88億円、本店は東京都港区台場、事業の内容はテレビ放送事業等で、代表取締役社長には豊田皓氏が就任している。共通支配下の取引にあたり、のれんは発生していない。

含意

認定放送持株会社は総務大臣の認定を受けることで、マスメディアの所有及び支配が原則として特定のものに集中しないという表現の自由享有基準の特例を受け、一定の放送事業者を子会社とすることができる。認定には二以上の一般放送事業者を子会社とすることなど放送法の要件を満たす必要があり、外国人等が議決権の5分の1以上を占めることとなるときは株主名簿への記載を拒み、その割合が100分の15に達したときは6か月ごとに公告する。移行に合わせ、事業の種類別セグメントも放送・制作・映像音楽・生活情報・広告・その他の区分へ改めた。

いつ何が起きたか6件
考察:収益を上げる会社と、資本を配分する会社を分離した設計
考察

考察:収益を上げる会社と、資本を配分する会社を分離した設計

この移行を、ライブドア攻防を受けた買収防衛策とだけ読むのは事の半分しか見ていない。分割で切り出したのは放送そのものを含む主要事業で、分割会社に残したのはグループ経営管理事業だけであった。前期の単体実績で3,829億71百万円を売り上げる本業を子会社へ移し、親会社には資本を配分する機能しか置かない。放送で稼ぐ会社と、稼いだ資本をどこへ置くか決める会社を分けたところに、この組織設計の眼目があったのだろう。

もっとも、会社の形を組み替えたことがただちに果実を生んだわけではない。連結経常利益は移行前の2008年3月期の270億56百万円から、翌々期の2010年3月期には120億60百万円まで減少している。持株会社という枠は、資本を動かす自由を与えると同時に、動かした先の成否をそのまま連結の数字へ映し出す。2008年の再編が問うたのは、放送で稼いだ資本をどこへ配るのかという、その後も長く問われ続ける主題であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

フジ・メディアHD:連結業績と総資産の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
フジ・メディアHD:連結業績と総資産の推移
(百万円)売上高経常利益総資産備考
2004年3月期455,94545,564625,786
2005年3月期476,73344,478681,190
2006年3月期593,49350,340692,357ニッポン放送を完全子会社化し、連結に取り込んだ期
2007年3月期582,66045,995731,496
2008年3月期575,48427,056677,000分割する事業の規模は、この期の単体実績で売上高382,971百万円
2009年3月期563,32022,365683,52310月1日に認定放送持株会社へ移行。第3四半期からセグメント区分を変更
2010年3月期583,84312,060753,1917月に公開買付けでセシールを連結子会社化した期
2011年3月期589,67129,460723,789
2012年3月期593,64552,320953,537ビーエスフジの完全子会社化とサンケイビルの連結で総資産が跳ねた
2013年3月期632,02947,209952,335
2014年3月期642,14534,8381,011,696
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等) / フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第70期(2011年3月期)・第73期(2014年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等) / フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第70期(2011年3月期)・第73期(2014年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)

新設分割の条件

新設分割の条件
科目概要備考
取締役会の決議日2008年5月15日放送事業等の主要事業を分割する会社分割を2008年10月1日付で行うことを決議
株主総会の承認2008年6月27日定時株主総会で承認された
効力発生日2008年10月1日同日付で商号を㈱フジ・メディア・ホールディングスへ変更。上場は継続した
分割の方式分社型新設分割持株会社体制への迅速かつ効率的な移行のためにこの方式を採った
承継させた事業グループ経営管理事業を除く一切の事業分割する事業の規模は2008年3月期実績で売上高382,971百万円
交付された株式普通株式2,000株新設会社が発行し、その全てを分割会社へ割当交付した。他の対価はない
割当ての算定根拠第三者機関の算定は実施せず単独の新設分割で、他に割当て・交付する対価が存在しないため
承継させた資産236,908百万円流動資産127,443百万円、固定資産109,464百万円
承継させた負債流動負債53,758百万円固定負債は21,340百万円
承継させた純資産161,808百万円新設会社の設立時の純資産
新設会社の商号株式会社フジテレビジョン本店は東京都港区台場二丁目4番8号。事業の内容はテレビ放送事業等
新設会社の資本金8,800百万円代表取締役社長は豊田皓氏
会計処理共通支配下の取引のれんの発生はない。連結財務諸表の作成にあたって全て消去している
本社建物の賃貸借2008年10月1日から10年間フジテレビ本社ビルを新設会社へ賃貸。期間満了以降は3年ごとに自動更新
認定の要件二以上の一般放送事業者の子会社化認定放送持株会社の資産に関する基準など放送法の要件にも適合を要する
認定の効果表現の自由享有基準の特例マスメディアの所有及び支配が特定のものに集中しない原則の特例を受ける
外国人等の議決権5分の1以上で認定取消し該当するときは株主名簿への記載を拒む。100分の15で6か月ごとに公告
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第68期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】【事業等のリスク】 / フジテレビジョン 有価証券報告書 第67期(2008年3月期)【重要な後発事象】
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第68期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】【事業等のリスク】 / フジテレビジョン 有価証券報告書 第67期(2008年3月期)【重要な後発事象】
参考文献

参考文献

参考
  • フジテレビジョン 2008年3月期決算説明会 配布資料
  • フジ・メディア・ホールディングス 2009年3月期決算説明会 配布資料
  • フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書【沿革】
  • フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書「第68期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • フジテレビジョン 有価証券報告書「第67期(2008年3月期)【重要な後発事象】」
  • フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書「第68期(2009年3月期)【企業結合等関係】」
  • フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書「第68期(2009年3月期)【事業等のリスク】」

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