サンケイビルの子会社化(2012年・フジ・メディアHDの決断)

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論点放送依存から不動産へ収益を広げるか
フジ・メディアHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
都市開発と観光を第二の柱とする、放送一本の収益構成の組み替え

何をなぜ決めたか:都市開発と観光を第二の柱とする、放送一本の収益構成の組み替え

概要

2012年3月8日、フジ・メディア・ホールディングスは完全子会社のフジ・メディア・サービスを通じた公開買付けで、持分法適用関連会社であったサンケイビルを連結子会社とした。議決権比率は31.8%から97.1%へ上がり、同社の子会社3社もあわせて連結に加えて都市開発事業を新設している。2015年にはサンケイビルを通じてグランビスタ ホテル&リゾートを取り込み、2018年5月の中期経営計画で事業区分をメディア・コンテンツと都市開発・観光の2本柱へ再編した。

背景

連結売上高は2008年3月期の5,755億円から2011年3月期の5,897億円までほぼ横ばいで、経常利益は2010年3月期に120億60百万円まで減少していた。2008年10月の認定放送持株会社への移行で、放送以外の周辺事業領域へ経営資源を振り向け、外部との資本・業務提携や事業再編を積極的に行う体制はすでに整っている。サンケイビルは当時、議決権の31.8%を保有する持分法適用関連会社であった。

内容

買付けはフジ・メディア・サービスが、サンケイビルの普通株式および新株予約権の全てを対象に実施した。取得原価は492億72百万円で、内訳は公開買付けによる取得価額312億24百万円、公開買付け前に保有していた株式の企業結合日の時価175億31百万円、取得に直接要した費用5億16百万円である。受け入れた資産2,330億34百万円に対して引き受けた負債は1,508億71百万円で、時価純資産が取得原価を上回った差額304億72百万円を負ののれん発生益に計上した。段階取得に係る差損は55億10百万円であった。

含意

当期は期末で取得したとみなして貸借対照表のみを連結したため、都市開発事業の業績は記載していない。期首に完了したと仮定した概算では、売上高384億92百万円と営業利益54億46百万円が加わる計算であった。都市開発事業の外部売上高はその後、2013年3月期の397億50百万円から2017年3月期の1,019億88百万円へ伸び、2015年にはグランビスタを加えて観光へ広がっている。都市開発・観光事業としての外部売上高は2018年3月期の1,083億89百万円から2026年3月期には1,928億59百万円に達した。

いつ何が起きたか5件
考察:利益の置き場所を組み替えるということ
考察

考察:利益の置き場所を組み替えるということ

放送局が不動産へ広げたこの多角化を、本業の頭打ちに対する場当たりの穴埋めと見るのは、話を単純にしすぎる。太田英昭社長のサンケイビル子会社化から宮内正喜社長の2本柱再編まで、一連の判断が組み替えたのは事業の顔ぶれというより、放送で稼いだ利益の置き場所であった。広告という一本の柱に収益を託す構造から、賃料と宿泊という別の周期で動く資産へ利益を移す——都市開発・観光を1,083億円から1,928億円へ育てた歩みは、その資本配分を形にしたものであったとみられる。

もっとも、第二の柱が目立って伸びたのは、第一の柱がそれだけ速く減少したことの裏返しでもあった。メディア・コンテンツが5,316億円から3,499億円へ縮む間に不動産と観光が伸びたからこそ、構成比の変化は鮮やかに映る。しかも育った資産は6,738億円まで増加し、連結総資産に占める不動産と観光の比率を押し上げた。放送局が不動産と観光で稼ぐ構造は、収益の安定と資本効率のどちらを優先するかという問いを経営に残したと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

フジ・メディアHD:都市開発事業セグメントの推移

外部売上高(百万円)セグメント利益率(%)
フジ・メディアHD:都市開発事業セグメントの推移
(百万円)外部売上高セグメント利益セグメント資産備考
2012年3月期−−233,034期末で取得したとみなし貸借対照表のみ連結。業績は記載されていない
2013年3月期39,7505,444239,167損益を通年で連結した最初の期。内部売上を含む売上高は40,172百万円
2014年3月期42,7595,333260,598オフィスビルの売却で増収。ビル事業の原価率上昇で減益となった
2015年3月期56,4287,319275,4754月にグランビスタ ホテル&リゾートを子会社化し、観光が加わった
2016年3月期82,1319,441374,817
2017年3月期101,98810,968390,971
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第71期(2012年3月期)〜第76期(2017年3月期)【セグメント情報】(外部顧客への売上高・セグメント利益・セグメント資産)
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第71期(2012年3月期)〜第76期(2017年3月期)【セグメント情報】(外部顧客への売上高・セグメント利益・セグメント資産)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業㈱サンケイビル不動産の賃貸事業、不動産の取引事業他。同社の子会社3社もあわせて連結子会社とした
買付けを行った会社㈱フジ・メディア・サービス完全子会社。普通株式および新株予約権の全ての取得を目的に公開買付けを実施した
企業結合日2012年3月8日企業結合の法的形式は株式の取得
公開買付け前の議決権比率31.8%持分法適用関連会社であった
追加取得した議決権比率65.3%取得後の議決権比率は97.1%
取得原価49,272百万円公開買付けによる取得価額31,224百万円、取得に直接要した費用516百万円を含む
既保有株式の時価17,531百万円公開買付け前に保有していたサンケイビル株式の企業結合日における時価
段階取得に係る差損5,510百万円取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
負ののれん発生益30,472百万円企業結合時の時価純資産が取得原価を上回ったため、その差額を認識した
受け入れた資産合計233,034百万円流動資産21,978百万円、固定資産211,056百万円
引き受けた負債合計150,871百万円流動負債36,030百万円、固定負債114,840百万円
連結した業績の期間該当なし当連結会計年度末で取得したとみなし、貸借対照表のみを連結した
通期換算した売上高38,492百万円期首に完了したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した営業利益5,446百万円同じ概算で経常利益3,010百万円、当期純利益731百万円。監査証明を受けていない
企業結合を行った主な理由潜在的な収益力の顕在化土地・建物と運営ノウハウ、顧客ネットワークをグループの資産と融合させる
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第71期(2012年3月期)【企業結合等関係】
出所:フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第71期(2012年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考

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