ニッポン放送の完全子会社化(2005年・フジ・メディアHDの決断)

更新:
論点逆転した資本関係をどう解消するか
フジ・メディアHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
ライブドア・パートナーズの買収と、逆立ちした資本関係の解消

何をなぜ決めたか:ライブドア・パートナーズの買収と、逆立ちした資本関係の解消

概要

2005年4月18日の取締役会で、フジテレビジョンはライブドアの完全子会社であるライブドア・パートナーズの全株式を670億円で譲り受けること、あわせてライブドアが実施する第三者割当増資440億円を引き受けることを決議した。ライブドア・パートナーズはニッポン放送の発行済株式総数32,800,000株の32.4%にあたる10,627,410株を保有しており、譲受けによってニッポン放送の持株比率は68.87%へ上がった。

同年9月1日、産業活力再生特別措置法第3条第1項の認定に基づく金銭交付による簡易株式交換で、残る株主に1株6,300円を交付して完全子会社とした。

背景

完全子会社化を目指した理由は、両社の経営資源の選択と集中を機動的かつ効率的に行えるグループ経営体制を構築し、生産性の向上と企業価値の増大を図ることにあった。ニッポン放送は関連会社にとどまる一方、同社が保有するフジテレビジョン株式は1,456億円にのぼっていた。子会社が親会社の株式を大量に抱える関係が残ったままでは、グループの資本は整理できない。

内容

完全子会社化は3段階を踏んだ。2005年5月23日にライブドア・パートナーズの全株式を譲り受けて子会社とし、7月12日には商号をLFホールディングスへ改めた同社を簡易合併で吸収した。この合併で引き継いだ資産は650億44百万円、そのうち649億9百万円がニッポン放送株式であった。9月1日の簡易株式交換では1株6,300円の金銭を交付し、株式交換とニッポン放送による自己株式の公開買付け等を合わせたグループの支払予定総額は638億円となった。

含意

2006年4月1日、ニッポン放送はラジオ放送事業その他すべての事業を新設分割で新しいニッポン放送へ移し、商号をニッポン放送ホールディングスへ改めたうえでフジテレビジョンに吸収合併された。この合併で承継した自己株式573,704.84株は、同年4月27日の取締役会決議を経て5月16日に消却され、当期未処分利益は1,453億46百万円減少している。子会社が親会社の株式を保有する関係は、この消却によってようやく解けた。

いつ何が起きたか6件
考察:逆立ちした資本を清算するということ
考察

考察:逆立ちした資本を清算するということ

この一連の取引が正したのは買収者の排除ではなく、子会社が親会社の株式を大量に抱えるという資本の逆立ちであった。ニッポン放送が保有するフジテレビジョン株式は1,456億円にのぼり、同社を完全子会社にしただけでは解けない。翌年4月に吸収合併し、承継した573,704.84株を5月に消却して、その関係はようやく消えている。638億円という支払予定総額は、株式を買い戻す代金というより、長く放置した資本構造を清算する費用であっただろう。

もっとも、清算の代償は小さくなかった。自己株式の消却で当期未処分利益は1,453億円減少し、自己資本比率は2004年3月期の80.2%から2006年3月期には66.9%まで下がっている。ニッポン放送とポニーキャニオンを取り込んで売上高は増加したが、経常利益の伸びはそれに見合っていない。規模を得る代わりに手元の資本を薄くした取引であり、資本の順序を正した効果が数字に表れるまでには、なお時間を要したのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る2表

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図と表

フジ・メディアHD:連結売上高と資本構成の推移

純資産(百万円)負債(百万円)
フジ・メディアHD:連結売上高と資本構成の推移
(百万円)売上高総資産純資産備考
2002年3月期436,902485,594373,973
2003年3月期429,004480,913367,796
2004年3月期455,945625,786501,870自己資本比率80.2%。ニッポン放送はなお関連会社であった
2005年3月期476,733681,190479,088買収の基本契約はこの期の後発事象として記載された
2006年3月期593,493692,357462,903ニッポン放送とポニーキャニオンを連結。自己資本比率は66.9%へ下がった
2007年3月期582,660731,496469,5864月にニッポン放送ホールディングスを吸収合併し、自己株式を消却した期
2008年3月期575,484677,000456,077
2009年3月期563,320683,523453,39510月に認定放送持株会社へ移行。純資産額は少数株主持分を含む
2010年3月期583,843753,191464,187
2011年3月期589,671723,789461,631
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等) / フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第70期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等) / フジ・メディア・ホールディングス 有価証券報告書 第70期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)

資本政策の条件

資本政策の条件
科目概要備考
基本契約の決議日2005年4月18日ライブドア・パートナーズの買収と、ライブドアの第三者割当増資の引受けを決議
買収した会社㈱ライブドア・パートナーズ投資事業。本社は東京都港区、代表は堀江貴文氏、資本金10百万円
同社が保有していた株式ニッポン放送株10,627,410株同社の発行済株式総数32,800,000株の32.4%にあたる
買収総額67,000百万円予定額。ライブドア側の同社に対する貸付金債権の買い受けまたは弁済額を含む
株式の譲受け日2005年5月23日譲渡の相手方は㈱ライブドアフィナンシャルホールディングス
第三者割当増資の引受け44,000百万円ライブドア普通株式133,740,000株を1株329円で引受け。出資後の持分比率12.75%
子会社化後の持株比率68.87%22,588,424株。ライブドア・パートナーズの保有分を含む
LFホールディングスの合併期日2005年7月12日商号を変更した同社を簡易合併で吸収。新株の発行と資本金の増加はない
合併で引き継いだ資産65,044百万円うちニッポン放送株式64,909百万円。引き継いだ負債は1百万円
完全子会社化の方法金銭交付による簡易株式交換産業活力再生特別措置法第3条第1項の認定に基づく支援措置を用いた
株式交換の日2005年9月1日前日の株主名簿に記載されたニッポン放送の株主(当社を除く)が対象
株式交換の条件1株につき6,300円金銭を交付し、株式は交付していない
グループの支払予定総額63,800百万円株式交換と、ニッポン放送が行う予定の自己株式の公開買付け等を合わせた額
引き継いだニッポン放送の資産206,703百万円2005年3月31日現在。うちフジテレビジョン株式145,668百万円。負債合計65,265百万円
資金の手当てコミットメントライン契約2005年5月13日決議。㈱みずほコーポレート銀行がジョイントアレンジャー
吸収合併の期日2006年4月1日ラジオ放送事業を新設分割したのちのニッポン放送ホールディングスを吸収した
合併の会計処理共通支配下の取引連結財務諸表の作成にあたってすべて消去し、連結への影響はない
承継した自己株式の消却573,704.84株2006年4月27日決議、5月16日消却。当期未処分利益は145,346百万円減少した
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】【発行済株式総数、資本金等の推移】 / 第66期(2007年3月期)【企業結合等関係】
出所:フジテレビジョン 有価証券報告書 第65期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】【発行済株式総数、資本金等の推移】 / 第66期(2007年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • フジテレビジョン 有価証券報告書(連結・沿革)
  • フジテレビジョン 有価証券報告書「第65期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • フジテレビジョン 有価証券報告書「第65期(2006年3月期)【重要な後発事象】」
  • フジテレビジョン 有価証券報告書「第65期(2006年3月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】」
  • フジテレビジョン 有価証券報告書「第66期(2007年3月期)【企業結合等関係】」

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