レノによる臨時株主総会請求と全取締役解任要求への対抗

施工不備で揺れる経営を誰の手で立て直すのか——旧村上系レノとの委任状争奪

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時期 2020年2月
意思決定者 宮尾文也・取締役会 社長
論点 経営再建の主導権とガバナンス
概要
2019年12月27日、大株主の投資会社レノ(旧村上ファンド系)がレオパレス21に臨時株主総会の招集を請求し、宮尾文也社長を含む取締役10人全員の解任と、村上世彰氏が推薦する社外取締役3人の選任を求めた経営判断をめぐる攻防。会社側は反対を表明し、2020年2月27日の臨時株主総会でレノ提案は否決された。
背景
2018年に発覚したアパートの界壁施工不備で信用が失墜し、入居率が損益分岐点の8割を割り込んだレオパレス21は、2020年3月期に802億円の最終赤字と債務超過へ陥った。経営再建の道筋をめぐり、水面下で意見交換してきた大株主レノとの協議が2019年末に決裂した。
内容
レノは取締役10人全員の解任と社外取締役3人の選任を求めた。会社側はレノが賃貸事業の譲渡を通じた「解体型買収」を企図しているとして反対。他の大株主アルデシアが全員解任に難色を示したため、レノは2020年1月28日に解任提案を撤回し、取締役候補を清水建設出身の大村将裕氏1人へ絞った。
含意
2020年2月27日の臨時株主総会でレノ提案は否決され、宮尾社長の経営陣が信任された。レノ側は同年7月に保有株を一部売却し、11月にはソフトバンク系フォートレスの出資でレオパレスの再建が動き出す。危機下の会社をアクティビストと現経営陣のどちらが立て直すかが問われた事案であった。
筆者の見解

危機の会社を誰が立て直すのか

この攻防が問うたのは、危機に瀕した会社の主導権を、大株主と現経営陣のどちらが握るべきかという主題であった。レノは賃貸事業の切り出しや取締役の全面交代という切れ味の鋭い処方を掲げ、株主総会という正面から経営に介入しようとした。一方で、施工不備の後始末は行政との地道な調整を要し、事業の担い手であるアパートオーナーの信頼なしには進まない。全取締役解任という劇薬に他の大株主が乗らず、オーナー株主が反発した事実には、危機下の統治が短期の切れ味だけでは動かないことがにじんでいるとみられる。

もっとも、経営陣が信任されたことは、それだけで再建の正しさを保証するものではない。レノを退けた現経営陣もまた、みずからの力だけでは危機を越えられず、フォートレスという別の投資ファンドの資本と高い金利負担を受け入れて急場をしのいだ。物言う株主を斥けた先で、結局は外部資本の論理に組み込まれていった経緯には、アクティビストとの対決が経営の独立を守り切ったとは言い切れない含みが残る。危機の会社を誰の手で立て直すのかという問いは、勝敗の一点では閉じないものといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

施工不備が招いた経営危機

レオパレス21の危機の発端は、2018年に発覚したアパートの施工不備であった。防火のために屋根裏へ設けるべき界壁が施工されていないなどの欠陥が明らかになり、改修と補償の負担が重くのしかかった。ブランドイメージの低下で賃貸の入居募集がはかどらず、入居率は損益分岐点の8割を割り込んでいった。オーナーから物件を借り上げて転貸するサブリースの構造では、保証賃料という固定費が先行する。入居率の下落は、そのまま資金繰りの逼迫へ直結していった[1]

業績はこの時期に急速に悪化した。2020年3月期は連結売上高が4,336億円へ縮み、営業損益は365億円の赤字、最終損益は802億円の赤字に達し、レオパレス21は債務超過へ陥った。2019年5月には施工不備問題の責任をとって深山英世社長が辞任し、経営企画部長などを務めた宮尾文也氏が社長に就いていた。再建を託された新体制は、資本政策を含めた抜本策を迫られる位置に立たされていた[2]

大株主レノとの協議決裂

危機のレオパレス21には、旧村上ファンド系の投資会社レノが有力株主として入っていた。両者は経営再建について、主に水面下で意見交換を重ねてきた。ところが2019年末、その話し合いが決裂する。レノは賃貸事業の譲渡などを主張していたのに対し、会社側はこれを自社の解体につながる要求と受け止め、隔たりは埋まらなかった。株主と経営陣の対話は、公然の対立へと転じていった[3]

株主構成も対立の帰趨を左右した。レオパレス21では、レノが共同保有を含めて14.46%、英運用会社オデイ・アセット・マネジメントが14.34%、国内運用会社アルデシアインベストメントが16.1%を握り、大株主3社で発行済み株式の4割強に達していた。危機下で株価が沈むなか、物言う株主が相次いで持ち分を積み上げていた構図であり、経営陣が単独で事態を制することは難しくなっていた[4]

決断

臨時株主総会の請求と全取締役解任要求

2019年12月27日、レノはレオパレス21に臨時株主総会の招集を請求した。求めたのは、宮尾文也社長を含む取締役10人全員の解任と、村上世彰氏が推薦する社外取締役3人の選任である。現経営陣を総入れ替えして再建の主導権を握ろうとする、踏み込んだ要求であった。会社側は、レノが賃貸事業の切り出しを通じてレオパレス21の解体型買収を企図しているとして反対を表明し、委任状争奪の様相を帯びていった[5]

会社側は当初、臨時株主総会そのものの開催に反対の構えをみせた。だが法定の請求要件を満たした提案を退けることは難しく、2020年1月下旬には自ら株主総会を開く方向へ方針を転換し、開催日を2月27日を軸に調整した。株主提案の是非を、他の大株主を含めた投票の場で決着させる段取りが整えられていった[6]

提案の撤回と候補1人への絞り込み

攻勢に出たレノだったが、他の大株主の賛同を取り付けられなかった。とりわけアルデシアインベストメントが全取締役の解任に難色を示した。現経営陣が退けば、施工不備問題をめぐる国側との調整が滞り、かえって事業改善が遅れるという懸念である。足並みが揃わないと判断したレノは、2020年1月28日、取締役10人全員の解任を求める株主提案を撤回した。総会の直前での方針転換であった[7]

全面交代を諦めたレノは、争点を1点へ絞り込んだ。新たに選任を求める取締役候補を、清水建設出身の大村将裕氏1人に限定した提案へ修正した。全取締役の解任という劇的な構図は消え、社外取締役を1人送り込めるかどうかへと論点が小さくなった。臨時株主総会は、この修正された提案の可否を問う場として2020年2月27日に開かれた[8]

結果

臨時株主総会での否決

2020年2月27日、レオパレス21の臨時株主総会が開かれた。争点は、レノが提案した大村将裕氏の取締役選任の可否である。採決の結果、レノの株主提案は否決され、会社が推した経営体制が信任された。会社側は東洋シヤッター元社長の藤田和育氏、パナソニック ホームズ元上席主幹の中村裕氏を新たな社外取締役候補に据えており、これらの会社提案が可決された。宮尾社長は、施工不備で毀損した信頼の回復に向けて動いている旨を株主へ訴えた[9]

賛否は僅差ではなかった。ダイヤモンド・オンラインの報道によれば、会社提案は賛成比率およそ56%で可決され、レノの株主提案は44%で否決された。総会の場では、レノが掲げる賃貸事業の切り出しを警戒するアパートオーナー株主から、方針への強い反発も出たと伝えられている。物言う株主の描く再建像は、事業の担い手であるオーナーの支持を得られなかったことがうかがえる[10]

レノの撤退とフォートレスによる再建

総会での敗北を境に、レノは矛を収めていった。2020年7月、旧村上ファンド系3社がレオパレス株を一部売却したことが判明し、共同保有の比率は低下した。臨時株主総会での取締役選任という正面からの経営関与に失敗したのち、株式を手放して撤退する選択であった。危機の底にある会社の主導権を株主提案で握る試みは、こうして実を結ばずに終わった[11]

現経営陣が主導権を保った再建は、外部資本の力を借りて動き出した。レオパレス21は2020年9月にソフトバンク系の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループのスポンサー支援を発表し、同年11月に約570億円の出資・融資を受け入れた。フォートレス傘下の低価格賃貸「ビレッジハウス」の運用ノウハウを取り込み、入居率の改善へと動いた。株主提案で退場を迫られた経営陣が、別の投資ファンドと組んで危機を脱していく展開となった[12]

出典・参考