レノの臨時株主総会請求(2020年・レオパレス21の決断)

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論点 取締役全面交代の要求にどう対抗するか
レオパレス21:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
取締役10名の解任要求の撤回と、社外取締役2名を対置した会社提案の可決

何をなぜ決めたか:取締役10名の解任要求の撤回と、社外取締役2名を対置した会社提案の可決

概要

2019年12月27日、株式会社レノと株式会社エスグラントコーポレーションが臨時株主総会の招集を請求した。議題は宮尾文也氏ら現任取締役10名の解任と、大村将裕氏ら3名の取締役選任である。会社は2020年1月17日、請求は権利濫用に当たるとして招集手続きを行わないと決議し、東京地方裁判所へ意見書を提出した。

地方裁判所での協議を経て会社は請求の正当性を認め、1月27日に自ら招集することを決める。提案株主は1月28日に解任議案を全部撤回し、選任も候補者を大村将裕氏1名へ絞った。2月27日の総会で会社提案の社外取締役2名が可決され、株主提案は44.48%で否決された。

背景

2018年に発覚した界壁の施工不備は、全棟調査と補修工事の長期化で会社の信用を削った。入居率は2020年1月末で80.19%まで落ち、2020年3月期は親会社株主に帰属する当期純損失802億円、自己資本比率0.66%と、純資産は15億円まで痩せる。

招集請求の理由に並んだのは、業績予想の度重なる下方修正と開示の遅れ、改修工事の完了時期を自ら公表しながら1年以上延期したこと、2018年5月から8月の自己株式取得50億円が分配可能額の欠損を生み、決議に賛成した取締役4名が欠損填補責任を負うことであった。

内容

提案株主の要求は事業譲渡(会社分割)で、会社は取締役会の検討に提案株主の関係者を加える要求を断ったところ招集請求を受けた。取締役会が反対の理由に挙げたのは、経営権の取得後に資産を切り売りする解体型買収の企図、賃貸募集の最繁忙期である1月から3月に総会を求めた事業価値への無配慮、低層の集合住宅の建築に大村氏の知識が生きないことの3点である。

会社は総会の20日前に取締役の過半数を社外とする方針を前倒しし、企業再生の藤田和育氏と品質管理の中村裕氏を候補に立てた。議決権行使助言会社のISSは株主提案に賛成を推奨したが、会社は候補者が誓約書の提出を拒んだ事実に触れていないとして2月12日に反論を開示した。

含意

会社提案の社外取締役2名は56.64%と56.66%、株主提案の大村将裕氏は44.48%で、両者の差は12ポイントであった。出席議決権1,994,899個のうち会社提案には786,557個、株主提案には418,260個の棄権が投じられ、どちらにも与しない票が会社提案では4割近くを占めた。

会社は総会の20日前に抜本的な事業戦略再構築の検討開始を公表し、レノおよびそのグループを検討プロセスから明示的に除外する。2020年7月の定時株主総会で宮尾文也氏の賛成率は88.97%へ戻り、同年11月にはFortress Investment Groupの関連事業体である千鳥合同会社への第三者割当などで572億円を調達した。

いつ何が起きたか 11件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 宮尾文也:社長執行役員
  • 蘆田茂:常務執行役員
  • 斜木克彦:常務執行役員
  • 岡本誠司:常務執行役員
  • 早島真由美:執行役員
  • 児玉正之:取締役
  • 田矢徹司:取締役
  • 笹尾佳子:取締役
  • 村上喜堂:取締役
  • 古賀尚文:取締役
考察:危機の会社を誰が立て直すのか
考察

考察:危機の会社を誰が立て直すのか

解任議案が撤回された時点で、この総会は経営権の争奪ではなくなっていた。残ったのは取締役1名の選任という小さな議案で、会社もまた社外取締役2名を対置しただけである。それでも会社提案の賛成率が56%台にとどまり、出席議決権の4割近くが棄権に回った事実は、株主が現経営陣にも提案株主にも委ねきれなかったことを示している。純資産が1,589百万円まで痩せ、自己資本比率が0.66%になった会社で、誰の手にも安心して預けられないという判断が数字に出たのだと思われる。

もっとも、決着した先で会社が採った策は、提案株主が求めたものと遠くない。ノンコア事業の譲渡・撤退、希望退職、店舗の統廃合という構造改革は総会の3か月後に決まり、外部資本の受け入れは同年11月に572億円の第三者割当として実を結んだ。解体型買収を退けた経営陣が、自らの手で事業を切り縮め、別の投資ファンドの資本を頼んだことになる。物言う株主を斥けることと、その主張を退けることは同じではなかったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

レオパレス21:純資産と当期純損益の推移

純資産額(百万円)負債純資産額(百万円)率(%)
レオパレス21:純資産と当期純損益の推移
純資産額(百万円)総資産額(百万円)親会社株主に帰属する当期純損益(百万円) 備考
2015年3月期 124,928308,88215,175 自己資本比率40.44%
2016年3月期 144,865327,60919,631 自己資本比率44.21%
2017年3月期 158,870337,82820,401 自己資本比率46.98%
2018年3月期 159,438337,13414,819 自己資本比率47.18%。この期の5月から8月に50億円の自己株式取得を実行
2019年3月期 81,338291,790△68,662 自己資本比率27.73%。補修工事関連損失引当金の計上で分配可能額が欠損
2020年3月期 1,589196,953△80,224 自己資本比率0.66%。臨時株主総会はこの期の2月に開かれた
2021年3月期 3,277161,708△23,680 自己資本比率△5.25%。親会社株主に帰属する持分は8,106百万円の債務超過
2022年3月期 11,034145,43011,854 自己資本比率0.73%
2023年3月期 32,922166,54819,810 自己資本比率14.48%
2024年3月期 71,679205,00042,062 自己資本比率31.17%
2025年3月期 88,268216,62517,861 自己資本比率37.52%
出所:レオパレス21 有価証券報告書 第46期・第47期・第52期【主要な経営指標等の推移】
出所:レオパレス21 有価証券報告書 第46期・第47期・第52期【主要な経営指標等の推移】

レオパレス21:所有者別の持株比率

  • アルデシアインベストメント 20%
  • シティインデックスイレブンス 9%
  • エスグラントコーポレーション 7%
  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3%
  • 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口5) 2%
  • その他 59%
レオパレス21:所有者別の持株比率
(%) 金融機関金融商品取引業者その他の法人外国法人等個人その他 備考
2015年3月期 25.013.392.5150.6518.44
2016年3月期 23.071.72.454.5518.28
2017年3月期 23.581.92.6449.7122.17
2018年3月期 23.431.722.4458.2914.12
2019年3月期 14.737.710.4938.9628.12 施工不備の発覚後の1年で外国法人等が19.3ポイント減り、個人その他が14.0ポイント増
2020年3月期 12.861.9537.8317.0630.3 その他の法人が27.3ポイント増。請求人のレノは大株主上位10名に入らない
2021年3月期 7.082.7142.4815.5932.14 千鳥合同会社への第三者割当で発行済株式総数が244,882千株から329,389千株へ
2022年3月期 9.271.2742.8718.4728.12
2023年3月期 8.332.2544.9920.7223.71
2024年3月期 11.953.7645.3815.3323.58
2025年3月期 10.791.9645.3720.8521.03
出所:レオパレス21 有価証券報告書 第42期・第43〜52期【所有者別状況】 / レオパレス21 有価証券報告書 第47期(2020年3月期)【大株主の状況】(発行済株式総数244,882千株)
出所:レオパレス21 有価証券報告書 第42期・第43〜52期【所有者別状況】 / レオパレス21 有価証券報告書 第47期(2020年3月期)【大株主の状況】(発行済株式総数244,882千株)

レオパレス21:株主総会ごとの議案別・候補者別の賛成率

レオパレス21:株主総会ごとの議案別・候補者別の賛成率
(%) 賛成率 備考
2019年6月定時総会 宮尾文也 67.47 候補者4名を差し替える修正動議が出たが、原案の可決により議決権数は集計されず
2019年6月定時総会 児玉正之 69.44 自己株式取得の決議に賛成した取締役の1人。業務執行取締役4名は95%台
2020年2月臨時総会 藤田和育(会社提案) 56.64 賛成1,129,967個、反対78,375個、棄権786,557個
2020年2月臨時総会 中村裕(会社提案) 56.66 賛成1,130,369個、反対77,971個、棄権786,559個
2020年2月臨時総会 大村将裕(株主提案) 44.48 賛成887,415個、反対689,222個、棄権418,260個。ISSは賛成を推奨していた
2020年7月定時総会 宮尾文也 88.97 社外取締役6名を含む9名を選任。藤田和育氏は93.82%、中村裕氏は93.83%
2021年6月定時総会 宮尾文也 87.79 資本金を811億円減らし1億円とする減資の議案は93.20%で可決
出所:レオパレス21 臨時報告書(2019年7月3日提出)第46期定時株主総会の議決権行使結果 / レオパレス21 臨時報告書(2020年3月2日提出)臨時株主総会の議決権行使結果 / レオパレス21 臨時報告書(2020年7月29日提出・2021年7月6日提出)定時株主総会の議決権行使結果
出所:レオパレス21 臨時報告書(2019年7月3日提出)第46期定時株主総会の議決権行使結果 / レオパレス21 臨時報告書(2020年3月2日提出)臨時株主総会の議決権行使結果 / レオパレス21 臨時報告書(2020年7月29日提出・2021年7月6日提出)定時株主総会の議決権行使結果

株主提案の条件

株主提案の条件
科目 概要 備考
招集を請求した株主 レノ、エスグラントコーポレーション 総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主であると請求人らが表明
招集請求書の受領 2019年12月27日 請求人らは2020年1月15日に東京地方裁判所へ株主総会の招集許可を申し立てた
当初の請求議案 取締役10名解任の件、取締役3名選任の件 解任対象は宮尾文也氏ら現任取締役全員。候補者は大村将裕氏、福島啓修氏、中島章智氏
会社の対応 2020年1月17日に招集手続きを行わないと決議 権利濫用に当たるとして東京地方裁判所へ意見書を提出。協議を経て1月27日に自ら招集
撤回後の株主提案 取締役1名選任の件(候補者:大村将裕氏) 2020年1月28日に解任議案を全部、選任議案は3名のうち2名を撤回する書面を受領
対象の総会 2020年2月27日開催の臨時株主総会 議決権行使の基準日は2020年1月24日。出席株主の議決権数は1,994,899個
会社提案の議案 取締役2名選任の件(藤田和育氏、中村裕氏) 2019年12月16日公表の取締役の過半数を社外取締役とする方針を前倒しした2名
提案の理由 業績予想の下方修正と施工不備問題の未解決 2018年5月から8月の自己株式取得50億円が分配可能額の欠損を生んだ点も挙げた
取締役会の意見 株主提案に反対 解体型買収の企図、短期的な自己利益の追求、事業特性の無理解の3点を理由とした
可決の要件 議決権の3分の1以上の出席と出席議決権の過半数
議決の結果 会社提案は可決、株主提案は否決 大村将裕氏への賛成は44.48%。会社提案は藤田和育氏56.64%、中村裕氏56.66%
議決権行使助言会社の推奨 ISSは株主提案に賛成を推奨 会社は候補者が誓約書の提出を拒んだ事実に言及がないとして2月12日に反論を開示
出所:レオパレス21 臨時株主総会招集ご通知(2020年2月7日)・臨時株主総会の議案に対する当社取締役会の意見・臨時報告書(2020年3月2日提出)
当時の取締役 10名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 宮尾文也:社長執行役員
  • 蘆田茂:常務執行役員
  • 斜木克彦:常務執行役員
  • 岡本誠司:常務執行役員
  • 早島真由美:執行役員
  • 児玉正之:取締役
  • 田矢徹司:取締役
  • 笹尾佳子:取締役
  • 村上喜堂:取締役
  • 古賀尚文:取締役
参考文献

参考文献

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