ブルドックソース スティールへの買収防衛策 TOBに対する新株予約権無償割当の実施と、経営権を守る姿勢の明示
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2007年、米系投資ファンドのスティール・パートナーズによる全株式取得の公開買付に対し、池田章子社長と取締役会が、差別的行使条件付きの新株予約権無償割当という買収防衛策を発動した経営判断。株主総会の特別決議と最高裁の適法判断を経て、日本で初めて買収防衛策が現実に発動された事例となった。
- 背景
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1959年の更生債務一掃以来ほぼ50年守られた無借金・換金性資産温存の財務体質が、2007年3月期末で現預金18億円・土地27億円・投資有価証券84億円・自己資本比率75.75%という割安な貸借対照表を生み、成長投資機会の乏しさとあいまって海外アクティビストの標的になった。
- 内容
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6月24日の定時株主総会で議決権総数の83.4%の特別決議を得て、全株主に1株につき3個の新株予約権を無償割当。スティールは非適格者として行使できず、持株比率は10.25%から2.82%へ希薄化する設計とし、会社がスティール分を現金で取得した。東京地裁・東京高裁・最高裁がいずれも適法と判断した。
- 含意
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法廷闘争には勝ったが、公開買付対応費用・自己新株予約権取得対価・特別損失合計38億円で2008年3月期は19億円の最終赤字に転落した。50年守った財務体質が初めて毀損し、資産価値が株価に映らないという指摘そのものは課題として残った。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
株主平等と企業価値の間で
ブルドックソース事件は、敵対的買収に対する日本企業の防衛が、株主総会の意思と司法の判断という二つの関門を通って初めて許されることを示した先例といえる。会社は、スティールだけを狙い撃つ差別的な仕組みを、全株主への平等な割当という形式と、議決権の8割を超える賛成、そして相手方への現金補償で包み、株主平等原則との衝突をかろうじて避けた。守ったのは、更生法の記憶から50年かけて積み上げた堅実な財務体質そのものであった。もっとも、その堅実さがなぜアクティビストを招いたのかという問いには、防衛の勝利は答えていない。
残るのは、企業価値とは誰のためのものかという問いである。温存された資産は、経営陣にとっては危機に備える安全弁であり、買収者にとっては株主へ還元されるべき余剰であった。最高裁が会社の防衛を認めた一方で、資産が株価に映らないという批判は宙に浮いたまま残り、12年を経て、会社自身が配当倍増によってその批判に応え始めた。敵対的買収を退けた企業が、退けた相手の主張を時間をかけて実装していく——この事件は、防衛の成否だけでは測れない、株主平等と企業価値をめぐる問いを今日にも投げかけているだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
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参考文献
- 野田経済 1978年11月号(佐藤和雄・ブルドックソース社長 インタビュー)
- ブルドックソース 有価証券報告書(1979年3月期)
- ブルドックソース 有価証券報告書(2007年3月期)
- ブルドックソース 有価証券報告書(2008年3月期)