神戸製鉄所の上工程休止(2017年・神戸製鋼所の決断)

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神戸製鋼所:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
加古川製鉄所への一貫工程の集約2013年5月29日の取締役会で、鋼材事業の上工程生産体制変更による構造改革の実行を決定した。2017年度を目処に神戸製鉄所の高炉をはじめとする上工程設備を休止し、加古川製鉄所へ集約する内容である。

何をなぜ決めたか:加古川製鉄所への一貫工程の集約

概要

2013年5月29日の取締役会で、鋼材事業の上工程生産体制変更による構造改革の実行を決定した。2017年度を目処に神戸製鉄所の高炉をはじめとする上工程設備を休止し、加古川製鉄所へ集約する内容である。

集約に伴う加古川製鉄所の設備増強には655億円、並行して進めた第3高炉の改修には192億円を投じた。神戸製鉄所の上工程設備は2017年10月末に止まり、集約は同年11月に完了した。

背景

鋼材の中長期の事業環境は、自動車を中心とした製造業の海外移転により内需が漸減する可能性が高く、東アジアで新製鉄所の稼働が予定されていることから、競争はさらに激化すると見込まれた。決議の直前にあたる2013年3月期の鉄鋼事業部門は、売上高7,428億円に対して502億円の経常損失で、粗鋼生産も708万トンまで減少している。神戸と加古川の二拠点に上工程を分けたままでは、もう一段の競争力強化には届かなかった。

内容

神戸製鉄所の高炉から連続鋳造までを止め、加古川製鉄所に最新鋭のブルーム連続鋳造設備と溶鋼処理設備を新設し、分塊圧延機を能力増強した。狙いは加古川製鉄所の稼働率向上と固定費の削減で、年150億円のコスト低減を見込んだ。

休止予定設備は遊休化の決定に伴い、2014年3月期に219億円の減損損失を計上している。内訳は機械装置及び運搬具132億円、建物及び構築物58億円、土地14億円ほかで、回収可能価額は割引率6%の使用価値で測った。

いつ何が起きたか9件
筆者考察
考察

考察:閉鎖するために積んだ四年半

高炉を止める判断は、決めたその日に実行できるものではなかった。2013年5月に決めてから実際に火を落とすまで四年半を要したのは、加古川にブルーム連続鋳造設備と溶鋼処理設備を新設し分塊圧延機を増強する655億円の工事と、上工程の変更に伴う需要家の再承認取得が先に立っていたからである。しかも会社は、その原資の一部を2013年度の公募増資で市場から集めている。6億3,250万株を発行して調達した836億円は、戦略投資とこの構造改革の設備投資に充てられた。閉鎖の決断が、まず投資として現れる構図であったとみられる。

もっとも、集約で見込んだ年150億円は、鉄鋼の振れ幅を吸収するには小さかった。集約を終えた2019年3月期の経常利益は47億円にとどまり、翌期には213億円の損失に転じている。そして2025年3月期には、残した加古川製鉄所の第1高炉も休止設備として解体が決まり、生産体制変革に備えた用地の確保が始まった。1959年に灘浜で火が入った高炉の系譜は、2017年の集約で落ち着いたのではなく、カーボンニュートラルを前提とした次の作り替えの途上に置かれているといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

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神戸製鋼所:鉄鋼セグメントの売上高と経常損益

神戸製鋼所:鉄鋼セグメントの売上高と経常損益

売上高(億円)経常損益率(%)
神戸製鋼所:鉄鋼セグメントの売上高と経常損益
(億円)売上高経常損益備考
2009年3月期10,224−鉄鋼関連事業。この期までは営業損益のみの開示で、営業利益は777億円
2010年3月期7,180−営業損益は243億円の損失
2011年3月期8,403237この期から鉄鋼事業部門としてセグメント損益を経常損益で開示
2012年3月期8,542△146
2013年3月期7,428△502主原料価格の下落と輸出環境の悪化で、前期比355億円の損益悪化
2014年3月期8,0853352013年5月に上工程集約を決議。休止予定設備の減損損失219億円を特別損失に計上
2015年3月期7,978287
2016年3月期7,42536
2017年3月期6,206△295加古川製鉄所の高炉改修の一時費用を計上。セグメント名は鉄鋼へ変更
2018年3月期7,1551732017年10月末に神戸製鉄所の上工程設備を休止し、11月に集約が完了
2019年3月期7,53947集約の収益改善は進んだが、設備トラブルと自然災害で125億円の減益
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第156〜166期(セグメントごとの状況)
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第156〜166期(セグメントごとの状況)
神戸製鋼所:粗鋼生産量の推移

神戸製鋼所:粗鋼生産量の推移

粗鋼生産量(千トン)
神戸製鋼所:粗鋼生産量の推移
(千トン)粗鋼生産量備考
2009年3月期7,329
2010年3月期6,622金融危機後の需要減で前期比9.6%減
2011年3月期7,681
2012年3月期7,245
2013年3月期7,087
2014年3月期7,686
2015年3月期7,549
2016年3月期7,543
2017年3月期7,275
2018年3月期7,537神戸製鉄所の上工程設備の休止を挟んで前期比3.6%増
2019年3月期6,978加古川製鉄所の設備トラブルと自然災害で前期比7.4%減
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第156〜166期(生産実績)
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第156〜166期(生産実績)
構造改革の条件

構造改革の条件

構造改革の条件
科目概要備考
決議日2013年5月29日取締役会で鋼材事業の上工程生産体制変更による構造改革の実行を決定した
休止する設備神戸製鉄所の高炉をはじめとする上工程設備高炉から連続鋳造までを止め、加古川製鉄所へ集約する
休止の時期2017年10月末決議時は2017年度を目処としていた。加古川への集約の完了は2017年11月
減損損失21,931百万円2014年3月期に計上。決議時点の見込みは約185億円だった
減損した資産神戸市灘区他 計7件の事業用資産等機械装置及び運搬具13,269、建物及び構築物5,859、土地1,465百万円ほか
回収可能価額の測定割引率6%を用いた使用価値減損損失は原則として事業所ごとにグルーピングして把握している
加古川製鉄所への設備投資65,500百万円上工程集約に伴う設備増強・物流設備ほか。2014年2月着手、2017年11月完了
第3高炉の改修工事19,200百万円加古川製鉄所。2014年2月着手、2016年12月完了
新設・増強した設備ブルーム連続鋳造設備と溶鋼処理設備分塊圧延機も能力増強し、主力の特殊鋼線材・棒鋼の競争力を強化する
見込んだコスト低減年150億円加古川製鉄所の稼働率向上と固定費の削減による
調達した資金836億円2013年度に6億3,250万株を公募発行。戦略投資と構造改革の設備投資に充当
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第160期(2013年3月期)【重要な後発事象】・第161期(2014年3月期)【減損損失】【設備の新設、除却等の計画】・第164期(2017年3月期)【対処すべき課題等】
出所:神戸製鋼所 有価証券報告書 第160期(2013年3月期)【重要な後発事象】・第161期(2014年3月期)【減損損失】【設備の新設、除却等の計画】・第164期(2017年3月期)【対処すべき課題等】
参考文献

参考文献

参考

  • 神戸製鋼所 ニュースリリース「加古川製鉄所第6号連続鋳造工場・2分塊新ラインの竣工式を実施」
  • 神戸製鋼所 ニュースリリース「神戸製鉄所 上工程休止について」
  • 神戸製鋼所 有価証券報告書「第160期(2013年3月期)【対処すべき課題】【重要な後発事象】」
  • 神戸製鋼所 有価証券報告書「第161期(2014年3月期)【減損損失】【設備の新設、除却等の計画】」
  • 神戸製鋼所 有価証券報告書「第164期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 神戸製鋼所 有価証券報告書「第165期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【生産実績】」
  • 神戸製鋼所 有価証券報告書「第172期(2025年3月期)【解体撤去関連費用】」

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