KDDIauのCDMA一本化とPDC除却:二方式の併走を解いてCDMAへ寄せ、稼働中のPDC設備1,283億円を一期で落とした資産の入れ替え

更新:

時期 2002年3月
意思決定者(推定) 小野寺正 社長
論点 合併で抱えた二通信方式の解消と設備の集中
概要

2002年3月、KDDIはauの通信方式をCDMAへ一本化し、旧方式のPDCの携帯電話設備をすべて除却した。同月に公表した「中期経営計画2002」は事業構造改革の第一にこの除却を据え、対象となった基地局やネットワークの設備1,283億円を2002年3月期の特別損失へ落としている。

稼働している設備を帳簿から外す代わりに、以後の減価償却費と通信設備使用料の負担を断ち切る組み替えであった。

背景

2000年10月にDDIKDDIDOが合併して発足したKDDIは、旧IDO系のPDCと旧セルラー系のcdmaOneという二つの方式を抱えていた。2001年10月に子会社の株式会社auを合併して移動体を一社に統合したものの、PDCは採算が取れず、契約者も大幅に減っていた。

一方でcdmaOneの通信設備は、基地局のパネルとソフトウエアの変更だけで第三世代のCDMA2000 1xへ移せる。追う側にとって、どちらへ寄せるかの答えは設備の側から出ていた。

内容

2002年3月11日に第三世代のCDMA2000 1xを33都道府県477市区町村で開始し、同月末にPDC方式の新規契約受付を止めて設備を一括で除却した。プリペイドの受付も6月末で締め、2003年2月28日にサービスそのものの終了を総務大臣へ申請している。

除却費を含む事業構造改革費用1,854億円の原資には、新宿本社ビルなど4棟の証券化で得た1,437億円の売却益を充てた。

含意

除却によって2003年3月期の減価償却費は440億円、通信設備使用料は2004年3月期以降で年220億円が消えた。2002年3月期の連結当期純利益は130億円まで落ち込んだものの、2004年3月期には1,170億円へ戻っている。

PDCの契約者をCDMAへ移す施策も効き、2003年3月期のauは純増シェア28.1%を取った。稼働資産を落とす痛みを一期に集めたことが、追撃の速度を生んだ。

筆者の見解

除却ではなく顧客の付け替え

PDC設備の一括除却は、負の遺産の処理というより、合併で手に入れた二つの資産のうち一つを自ら使えなくする決断であった。稼働している設備を帳簿から外すことは、そこにいる契約者を他社へ逃がす危険と引き換えになる。KDDIはその危険を、CDMAへの機種変更を促す費用として買い直した。サービス終了の期に計上した556億円のうち282億円が移行促進に充てられていることは、これが設備の処分であると同時に顧客の付け替えの費用でもあったことを示しているとみることができる。

もっとも、この身軽さは合併三社の資産が重なっていたからこそ選べたものであった。同じ時期に単一方式で走っていた事業者に、捨てる選択肢はない。KDDIが一期で1,854億円を落とせたのは、新宿本社ビルなど4棟の証券化で1,437億円の売却益を作れたからでもある。構造改革の痛みを、別の資産を現金に変えて相殺する組み立てであり、財務の余力が意思決定の速度を決めた例といえる。除却の翌々期に連結当期純利益が1,170億円へ戻ったことは、この賭けが当たったことを示している。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

CDMAへ一本化した条件

科目 概要 備考
決定の枠組み 中期経営計画2002 2002年3月に公表。事業構造改革の第一にPDC設備の除却を置いた
捨てた方式 PDC(デジタル)方式 1994年4月から提供してきた旧方式。契約者が大幅に減り採算が取れなかった
寄せた方式 CDMA方式(cdmaOne・CDMA2000 1x) cdmaOneの基地局はパネルとソフトウエアの変更だけで1xへ移せた
除却した設備 基地局・ネットワーク等 1,283億円 2002年3月末にauのPDC方式の携帯電話設備をすべて除却した
計上した期と区分 2002年3月期の特別損失・128,319百万円 廃棄損と事業構造改革費用の注記で最大の項目
au事業の構造改革費用 1,551億円 PDC設備の一括除却1,283億円と携帯電話端末の廃棄及び評価損268億円
全社の構造改革費用 1,854億円 上記に固定通信の設備廃棄損175億円、PHS端末廃棄損77億円などが加わる
費用に充てた原資 特別利益 1,448億円 新宿本社ビル等4ビルの証券化。売却益1,437億円で7年後に買戻しの優先交渉権
新規契約の受付停止 ポストペイド2002年3月31日・プリペイド6月30日 プリペイドの受付終了は2002年4月26日に総務大臣へ届け出た
サービスの終了 2003年3月31日 2003年2月28日に総務大臣へ申請。CDMAへの移行が順調に進んだため
減価償却費の削減 2003年3月期に440億円 除却した設備の償却が以後発生しない
通信設備使用料の削減 2004年3月期以降 年220億円 PDC用に借りていた専用線とメンテナンスの費用も削減できる
終了に伴う費用 2003年3月期に556億円 撤去関連274億円と機種変更促進282億円。2004年3月期以降は発生しない

出所:KDDI アニュアルレポート2002(株主の皆様へ/事業構造改革/連結財務諸表注記7「廃棄損と事業構造改革費用」)/アニュアルレポート2003(au事業概況)/ニュースリリース(2002年4月26日・2003年2月28日)

KDDI:意思決定の前後5期の連結業績

(百万円) 営業収益経常利益当期純利益 備考
1997年3月期 KDDIは2000年10月に発足。それ以前の連結は会社の公表資料で照合できていない
1998年3月期
1999年3月期
2000年3月期
2001年3月期
2002年3月期 2,833,79978,75612,979 事業構造改革費用1,854億円を特別損失に計上し、当期純利益は130億円
2003年3月期 2,785,343113,21057,358 PDCサービスを3月末に終了。撤去と移行促進の費用556億円を計上
2004年3月期 2,846,097274,547117,025 PDC関連の費用が発生しなくなった最初の期
2005年3月期 2,920,039286,343200,591
2006年3月期 3,060,814294,001190,569 ツーカーのPDC設備等の減損損失1,142億円を別に計上した期
2007年3月期 3,335,259350,923186,747
連結営業収益と当期純利益率
営業収益(百万円)当期純利益率(%)

出所:KDDI 有価証券報告書 第22期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / KDDI 有価証券報告書 第27期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】

KDDI:au事業の営業損益と構造改革費用

(億円) 営業収益営業利益事業構造改革費用 備考
1997年3月期 auは2001年10月に合併するまで別会社。事業別の開示がない
1998年3月期
1999年3月期
2000年3月期
2001年3月期
2002年3月期 15,2465741,551 当期利益は587億円の赤字。EBITDAマージンは1.9ポイント改善し17.7%
2003年3月期 16,263538 当期純利益は210億円。純増シェア28.1%、累計契約数シェア18.6%
2004年3月期 PDC関連の費用は発生しない
2005年3月期 事業区分をau事業から移動通信へ改めており、同じ基準で接続できない
2006年3月期
2007年3月期

出所:KDDI アニュアルレポート2002(au事業概況) / KDDI アニュアルレポート2003(au事業概況)

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出典・参考

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