ローソンをTOBで買収(2024年・KDDIの決断)

更新:
論点 全国の店舗網を共同経営で得るか
KDDI:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
三菱商事との共同経営という形をとった全国店舗網の取り込み

何をなぜ決めたか:三菱商事との共同経営という形をとった全国店舗網の取り込み

概要

2024年2月6日にKDDIが三菱商事と基本契約書・株主間契約書を、3社で資本業務提携契約書を締結し、3月28日から4月25日までローソン株に公開買付けを実施した案件。決済の開始日である5月7日に議決権41.1%で持分法適用関連会社とし、同年8月のクロージングで三菱商事と各50.0%を持つ共同経営体制へ移った。9月からは三菱商事50%・KDDI50%の新経営体制が動き出し、Real×Tech Convenience、Ponta経済圏の拡大、社会課題の解決の3つを共同経営の柱に掲げた。

背景

人口減少と少子高齢化が加速するなか、全国にリアル店舗を持つコンビニの地域インフラとしての役割は高まり、人手不足を補うデジタル技術の活用も必然とKDDIは見ていた。リテイル分野では各社が業界横断のサービスを広げ、それぞれの経済圏を築きつつあった。通信の側では中容量帯の料金競争が激しく、KDDIはDX・金融・エネルギーとローソンの4つを注力領域に並べ、通信以外の利益を積む算段を立てていた。

内容

KDDIは公開買付けで議決権41.1%を取得したのち、ローソンの株主を三菱商事と自社のみとする一連の手続きを経て議決権を50.0%ずつとした。店舗網の相互活用、店舗での通信・金融・ヘルスケアの拡充、ポイント経済圏の拡大というリアル・デジタル融合型サービスの開発を狙いに掲げた。取得の完了に先立つ2024年7月にはKDDIから10名程度がローソンへ出向し、10を超えるワーキンググループでビジネス面の貢献を詰めた。9月18日にはリテールテックとしてサイネージやバックヤードの品出しを公表し、ローソンのシステム更改への関与にも動いた。KDDI自身はリテールを手がけるのではなく、省人化などローソンが抱える課題を手伝う側に回る。

含意

議決権が三菱商事と同率で支配が生じないため、KDDIはローソンを連結子会社とせず持分法適用共同支配企業として扱った。買収でのれんを積む形ではなく、持分の帳簿価額と持分法投資利益で損益を取り込む異業種提携である。初年度の取り込み利益は期初計画の100億円プラスαに対し194億円で、共通ポイントの会員向けサービスであるPontaパスの販促費は膨らんだものの、ローソンへの送客と日販の向上に振り替わったとKDDIは見ている。

いつ何が起きたか 8件
当時の取締役 12名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:経済圏の融合という新しい型
考察

考察:経済圏の融合という新しい型

KDDIによるローソンの公開買付けは、通信会社が全国規模のリアル店舗網を経済圏の基盤として取り込んだ、新しい型の資本提携といえる。リテイル分野で各社が業界横断のサービスを広げて自らの経済圏を築くなか、日々の生活接点を押さえる小売との融合は、通信・金融・ヘルスケアといった領域へ広げるための合理的な一手であった面は否めない。一方で、投じた資金が店舗網の規模に見合うリターンを生むかは、経済圏の競争が激しさを増すなかで、なお見極めが必要なのだろう。異業種の融合が掛け声で終わらず、店舗の現場の価値にどう結びつくかが問われる。

もう一つの含意は、支配を取らないという選択である。KDDIは議決権を三菱商事と同率の50.0%にとどめ、ローソンを連結子会社ではなく持分法適用共同支配企業として扱った。連結でのれんを積んで事業を丸抱えするのではなく、持分の帳簿価額と持分法投資利益という形で損益を取り込む構えである。事業会社を単独で背負う難しさと、外部の知見を呼び込む利点とをはかりにかけた選択とみることもできる。規模や比率といった入口の条件よりも、異業種の経営をどう統括するかという実務の設計が、この共同経営の成否を分けるのだろう。

数字で見る 3表

数字で見る

図と表

KDDI:持分法投資と持分法による投資利益の推移

持分法で会計処理されている投資(百万円)
KDDI:持分法投資と持分法による投資利益の推移
(百万円) 持分法で会計処理されている投資持分法による投資利益うちローソン持分の帳簿価額 備考
2020年3月期 233,2253,256− ローソンは対象外。当時は資本業務提携先で持分法を適用していない
2021年3月期 233,9214,884− ローソンは対象外。当時は資本業務提携先で持分法を適用していない
2022年3月期 244,5155,791− ローソンは対象外。当時は資本業務提携先で持分法を適用していない
2023年3月期 261,1696,213− 第40期の前期列。第39期の当期表示は255,290と4,569
2024年3月期 301,0379,945− 持分法適用は決済日の2024年5月7日から。当期は未適用
2025年3月期 731,94927,501531,112 投資利益は176.5%増。ローソンの取得等による
出所:KDDI 有価証券報告書 第37期(2021年3月期)・第39期(2023年3月期)・第40期(2024年3月期)・第41期(2025年3月期)【連結財政状態計算書】【連結損益計算書】【持分法で会計処理されている投資】
出所:KDDI 有価証券報告書 第37期(2021年3月期)・第39期(2023年3月期)・第40期(2024年3月期)・第41期(2025年3月期)【連結財政状態計算書】【連結損益計算書】【持分法で会計処理されている投資】

KDDI:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
KDDI:のれんと無形資産の推移
(百万円) のれん無形資産資産合計 備考
2020年3月期 540,8861,035,3999,580,149
2021年3月期 540,4201,024,83110,535,326
2022年3月期 540,9621,025,22311,084,379
2023年3月期 541,0581,048,39611,923,522 資産合計は第40期の前期列。第39期の当期表示は11,917,643
2024年3月期 568,1341,062,68314,146,060 公開買付けは2024年3月28日開始。決済は翌期のため当期に影響なし
2025年3月期 595,8291,076,98416,876,219 ローソンは持分法適用のため、のれんは増えない。増加は他の企業結合による
出所:KDDI 有価証券報告書 第37期(2021年3月期)・第39期(2023年3月期)・第40期(2024年3月期)・第41期(2025年3月期)【連結財政状態計算書】
出所:KDDI 有価証券報告書 第37期(2021年3月期)・第39期(2023年3月期)・第40期(2024年3月期)・第41期(2025年3月期)【連結財政状態計算書】

ローソン株式取得と共同経営の条件

ローソン株式取得と共同経営の条件
科目 概要 備考
対象会社 株式会社ローソン コンビニエンスストアのフランチャイズチェーン展開。資本金58,507百万円
取引の法的形式 金融商品取引法に基づく公開買付け 三菱商事と基本契約書・株主間契約書を、3社で資本業務提携契約書を締結
契約の締結日 2024年2月6日 同日付の取締役会(書面決議)で締結を決議し、同日付で契約を締結した
公開買付期間 2024年3月28日〜4月25日 2024年4月26日付で公開買付報告書を提出。決済の開始日は2024年5月7日
公開買付け後の議決権所有割合 41.1% 決済の開始日である2024年5月7日をもって持分法適用関連会社とした
三菱商事との議決権所有割合 当社・三菱商事とも50.0% 株主を三菱商事と当社のみとする一連の手続きを経て同率となった
会計上の取扱い 持分法適用共同支配企業 議決権が三菱商事と同率で支配は生じず、連結子会社としていない
ローソン持分の帳簿価額 531,112百万円 2025年3月31日現在。IFRSでは投資に含むのれんを別掲せず個別に減損しない
ローソンの当期利益のうち当社グループ持分 19,366百万円 2025年3月期。ローソンの当期利益42,259百万円に対する当社グループ持分
関連会社株式の取得による支出 498,898百万円 2025年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書。ローソン等の取得を含む
公開買付けに係る借入 4,050億円 三菱UFJ銀行から2024年5月2日に無担保で借入。借入期間は1年以内
資本業務提携の狙い リアル・デジタル融合型サービスの開発 店舗網の相互活用、店舗での通信・金融・ヘルスケアの拡充、経済圏の拡大
出所:KDDI 有価証券報告書 第40期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【後発事象】・第41期(2025年3月期)【関係会社の状況】【持分法で会計処理されている投資】
出所:KDDI 有価証券報告書 第40期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【後発事象】・第41期(2025年3月期)【関係会社の状況】【持分法で会計処理されている投資】
当時の取締役 12名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

免責事項およびポリシー