パワー半導体へ投資集中(2010年・富士電機の決断)更新:2026/07/26論点事業を残したまま投資を傾斜させるか富士電機:業績の推移売上高(億円)当期純利益率(%)データ出所パワーエレクトロニクスを軸とした経営資源の集中何をなぜ決めたか:パワーエレクトロニクスを軸とした経営資源の集中概要2009年3月期に733億円の最終赤字を計上した富士電機が、2010年のSiCモジュール開発から、投資と技術開発の軸をパワー半導体とパワーエレクトロニクスへ寄せていった経営判断。単年の発表ではなく、2010年代を通じて固まった資源配分の方針である。背景リーマン・ショックで電子デバイス部門のHDD向けモータ販売が減少し、2009年3月期は営業赤字188億円・純損失733億円となった。半導体自体は1953年10月に進出した古い事業で、戦時中に開設した松本工場が後のパワー半導体主力工場となっていた。内容2010年にSiCモジュールを開発し、2013年3月に松本工場で増産投資、2016年に鈴鹿工場へパワエレテクニカルセンターを新設した。2018年度から2020年度にはパワー半導体へ500億円の増産投資を計画し、投資時期は前倒しされた。含意集中といっても重電・自販機・計測から撤退したわけではなく、寄せたのは投資と技術の軸であった。2024年3月期以降は最高益の更新が続く一方、パワー半導体の世界シェアは6.1%にとどまり、規模で勝る欧米勢との差は残っている。いつ何が起きたか8件考察:何に集中したのかを読み直す考察考察:何に集中したのかを読み直すこの集中で減らしたものは、事業の数ではなかった。重電も自動販売機も計測も抱えたまま、投資と技術開発の宛先だけをパワー半導体とパワエレに寄せている。総合電機の幅を保ちながら主力事業を一つに絞る方式は、幅を捨てる集中とは別種の選択だろう。ただ、寄せた先の需要は素直に伸び続けてはいない。SiCはBEVの伸長鈍化で中期経営計画を下回り、電装分野の在庫調整も残る。世界シェアは6.1%で、25.2%のインフィニオンとの差は縮んでいない。それでも最高益が続いたのは、データセンター向け無停電電源装置の国内シェア4割や系統蓄電池のように、パワエレという軸が半導体以外の出口を複数抱えていたからだとみられる。集中の効き方は、軸をどの高さで定義したかに左右されるといえる。Yutaka Sugiura, 2026年7月参考文献参考文献参考富士電機 統合報告書2022 社長COOインタビュー富士電機 2025年度 事業戦略説明会 主な質疑応答(2025年5月27日)富士電機 2025年度第3四半期 決算説明会 主な質疑応答(2026年1月29日)富士電機 有価証券報告書(2026年3月期・連結)富士電機 有価証券報告書 第134期(2009年3月期)次に読む決断富士電機の意思決定2008年富士電機富士電機メタウォーター発足日本碍子の同事業との合併による持分法適用会社への切り替え2008年2012年富士電機富士電機持株会社体制の解消純粋持株会社への移行と、9年後の事業会社への再統合2012年同じ問い:新技術量産への設備投資2019年川崎汽船川崎汽船自動車船・LNG船へ集中投資非海運多角化の見送りと、鉄鋼原料輸送を含む海運本業への資源の集中2019年2022年ADEKAADEKA全州第二工場の増強半導体材料への経営資源の集中と、高誘電体ALD材料の生産能力の増強2022年2010年川崎重工業川崎重工業「すいそふろんてぃあ」建造液化水素サプライチェーンへの集中と、世界初の液化水素運搬船の建造2010年2007年日本製鋼所日本製鋼所室蘭製作所を原子力向けに増強製鋼・鍛錬設備の増強と、原子力発電向け大型鍛鋼への傾斜2007年2022年東京エレクトロン東京エレクトロン合志と大和町への開発棟新設統合による規模拡大を捨てた国内の自社開発拠点への投資2022年×出所