自己資本1,035億円、有利子負債5,021億円という2019年3月期の数字を見れば、異業種を買って収益源を増やす選択肢は初めから存在しなかった。事業を広げるより本業の船に専念するほうが稼ぎを増やせるとした明珍幸一社長の説明は、そのまま読めば戦略の宣言だが、財務の側から読めば制約の言い換えでもある。ただ、狭い範囲を1970年のPCCと1983年の尾州丸に連なる船種に絞ったことで、半世紀の蓄積を使い切る投資になったとみられる。
とはいえ、自己資本が6年で約16倍になった理由の大半は、切り出したコンテナ船がONE経由で戻した利益であって、海運集中の成果ではない。2022年3月期に経常利益6,575億円を計上したとき、自社の営業利益は177億円にすぎなかった。この方針の実質は、自営事業の営業利益が2025年3月期に1,029億円に達し、翌期に842億円へ戻った水準そのものにある。3,300億円の脱炭素投資がこれを押し上げるのかは、まだ決まっていない。