川崎汽船の直近の動向と展望

/

川崎汽船の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

脱炭素インフラの海上輸送という新領域への参入

川崎汽船はCCS(炭素回収・貯留)の海上輸送に参入している。2024年2月、ノルウェーのNorthern Lightsプロジェクト向けに3隻目の液化CO2船の傭船契約を締結した。Northern Lightsは世界初のフルスケールCCSプロジェクトであり、欧州で回収されたCO2をノルウェー沖の地下貯留層に輸送して圧入する。川崎汽船は液化CO2を海上輸送できる数少ない船社として、この新規事業領域の開拓を進めている。2024年11月にはNORTHERN PIONEERが竣工し、実際の輸送が始まった。欧州のCCS需要拡大に対応した新たな海上輸送事業が実証段階に入った。LNG輸送で蓄積した極低温管理技術が、液化CO2船の運航に直接活かされる構造が、専用船事業を長年続けてきた川崎汽船に優位を与えている。

自社船舶の脱炭素化も並行して進めている。2020年10月に日本初のLNGバンカリング船「かぐや」を竣工させ、中部地区で船舶向けLNG燃料供給事業を開始した。2024年5月には初のLNG燃料ケープサイズバルカーCAPE HAYATEが竣工し、大型ばら積み船の燃料転換を進めている。洋上風力発電支援では2021年にケイライン・ウインド・サービスを設立し、2024年には海洋地質調査船EK HAYATEを就航させた。脱炭素関連の新事業は現時点では収益貢献が小さいが、2050年に向けた長期の成長領域と位置付ける。1967年に読売新聞が「コンテナー化はすでに海上輸送について海運業界が準備を急ぎ」(読売新聞 1967/03/10)と報じたコンテナ革命期と類似する、次の海運業構造変化の局面でもある。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2024/7/29
  • 読売新聞 1967/3/10

海運専業路線の持続性が問われる局面の継続

明珍社長は「自営事業が成長の柱」(日本経済新聞 2024/07/29)と述べ、競合2社が非海運事業に経営資源を分散するなかで海運への集中投資を継続する方針を示した。中期経営計画では5年間で5200億円の投資を予定しており、自動車船・LNG船・ドライバルクの3事業に重点配分する。2025年4月には五十嵐誠が社長に就任し、同月に監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行してガバナンス体制を刷新した。海運専業路線の継続と経営の透明化を並行して進める体制となった。1989年に「潰れるんじゃない?」と書かれた会社が、ONE経由のコンテナ船利益を内部留保に転換して専業路線を選ぶまでの距離は遠かった。

ONE経由の利益は2021〜2022年度のような異常水準から正常化しており、自営事業単体で中期経営計画の経常利益目標700億円を安定して稼げるかが、海運専業路線の持続性を左右する。FY24の営業利益1028億円は目標を上回ったが、これには自動車船の市況好調が寄与しており、市況が反転した場合にどこまで利益水準を保てるかが焦点となる。1970年のPCC以来の専用船事業の競争力が、ONE後の経営の根幹を支えられるかが試される段階が続く。邦船3社で最小規模という位置づけはそのままに、戦略の独自性だけが競合2社と明確に分かれた状態で、次の時代に入る。脱炭素関連の新規領域、CCS輸送、洋上風力支援といった新しい専用船需要が、次の半世紀の主役となるかが、2026年以降の最大の論点となる。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2024/7/29
  • 読売新聞 1967/3/10

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1989/07/17
日経産業新聞 1983/06/16
読売新聞 1958/06/24
読売新聞 1965/11/27
経済時代 1968/05
読売新聞 1970/07/31
日経産業新聞 1993/12/14
日経新聞 2001/06/18
日経産業新聞 2016/11/21
ダイヤモンド・オンライン 2023/06/08
日本経済新聞 2024/07/29
読売新聞 1967/03/10
日本経済新聞
読売新聞