筆者の見解
専業のまま技術を持つという選択
高砂熱学工業のこの30数年は、専業に徹することと技術を持つことを同時に追求した経営判断の連なりとみられる。総合設備工事業者になれば受注機会は広がるが、電気・給排水を含む全領域で技術力を維持するのは容易ではない。逆に専業に閉じれば技術の幅は広がらない。高砂熱学は、空調・熱源・換気という狭い領域に的を絞ったうえで、自社研究所を持ち、必要な技術を持つ海外企業を子会社に取り込んだ。総合化でも受託への専念でもない、専業のまま技術を内製化するという選択が、半導体投資の拡大という追い風と重なったことが今日の高収益体質を導いたとみられる。
もっとも、この技術路線が今後も同じ強さを保つかは、なお不確実な面が残る。半導体投資は循環性が強い産業であり、2020年代後半にラピダスをはじめとする国内投資が一巡した後の受注の厚みは、現時点では見通しにくい。また、ICTの連結子会社化から10年近くが経過し、追加出資で持分を高めてきた経緯からは、インドという一拠点への依存を深めている面もうかがえる。空調専業としての技術蓄積という1984年以来の路線を、特定市場・特定顧客への集中とどう両立させていくかが、今後の高砂熱学に問われる論点であるといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月