オービックビジネスコンサルタント新ERP・インターネット対応製品への新規開発資源の全面振替と、2005年3月期235億円の計画

次の需要はインターネットとERPから来るのか——1998年に全量を振り替えた開発資源と、6年後に置いた235億円

時期 1998年1月
意思決定者(推定) 和田成史 オービックビジネスコンサルタント 社長
論点 開発資源の配分と製品世代の転換
概要
1998年1月、オービックビジネスコンサルタントは新規開発のリソースのすべてを2000年以降の製品へ振り向けた。対象は401kシステムを含む企業バンキング、新ERP、会計事務所マーケットの3分野で、1999年9月に奉行2000新ERPシリーズを発売し、2005年3月期に売上高235億円という計画を掲げた。
背景
1999年3月期の売上高は102億45百万円、業務パッケージソフト市場の上位7社シェアでは40.3%で首位に立っていた。ただし成長は基本ソフトの世代交代と税制改正という外から来る買い替え需要に支えられており、次の製品世代をどこに置くかが課題として残っていた。
内容
3分野への集中に加え、2000年にはASP事業、電子商取引と連動するEC奉行、奉行.comを予定に並べた。和田成史社長はこの期を従来型の製品から新ERPシリーズへ切り替わる転換期と説明し、2002年3月期に売上高200億円、2005年3月期に235億円という数字を示した。
含意
2001年3月期の売上高は109億円へ1割以上減り、2000年3月期の水準に戻るのは2004年3月期であった。2005年3月期の実績145.7億円は計画の62%にとどまる。一方で売上高経常利益率は同じ4年で37.4%から53.4%へ上がり、従業員は374人から476人に増えた。
筆者の見解

行き先ではなく、時期の読み違い

1998年1月に開発資源の全量を次の世代へ寄せた判断は、当時としては無理のない選択であった。受託ソフトは大規模・特殊な業務へ退き、ERPとパッケージが市場の半分を超えるという見通しは業界で共有されており、64ビットへの移行も翌年に迫っていた。誤算があったのは行き先ではなく、時期のほうだったとみられる。企業バンキングも会計事務所向けも、中小企業の経理の現場が新しい仕組みへ動くまでには、和田社長が見込んだより長い時間がかかった。

2005年3月期の145.7億円は、掲げた235億円の6割強でしかない。企業バンキングは銀行との共同開発を残して沿革から消え、ASP事業もEC奉行も、その後の製品系列に名を残さなかった。それでも同じ4年で経常利益は42.1億円から77.9億円へ、従業員は374人から476人へ増えている。外から来る需要が空いた4年に、売上ではなく利益率と人員を積んだことが、次の製品世代を出せる余力になったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

背景

首位のまま迎えた1999年

1999年3月期のオービックビジネスコンサルタントの売上高は102億45百万円で、内訳はパッケージが53.1%、保守やインストラクター派遣などのユースウェアが46.9%であった。業務パッケージソフト市場の上位7社シェアでは40.3%を占めて首位に立ち、和田成史社長は次に50%を目標に置いていた。売上高経常利益率も1997年3月期の28.6%から1999年3月期の38.4%へ3期続けて上がっていた[1]

売り方の形も固まっていた。全国15か所の営業拠点は直接販売を行わず、約4,000社にのぼる販売代理店への支援に専念する。製品は企業規模別に4階層で、小規模企業には奉行シリーズ太鼓判、中規模企業にはスタンドアローン、中堅企業にはLANPACKを充てた。プロダクト売上高の7割弱をスタンドアローンが、3割弱をLANPACKが占め、秋葉原などのパソコンショップに流れる太鼓判は2〜3%にとどまっていた[2]

次の需要をどこに見ていたか

和田社長が見ていた先は、この4階層の延長ではなかった。受託ソフトは大規模あるいは特殊な業務に限られていき、2005年ごろにはERPとパッケージソフトウェアを合わせた市場が全体の50%を超えるという見通しを説明会で紹介している。翌年にはWindows 2000が発表され、Linuxがこれに対抗する形で64ビット時代が迫っていた。この変化に乗れる仕組みを作れるか否かが生命線になる、というのが本人の認識であった[3]

もう一つの需要は制度から来る。同じ説明会では、2000年問題の特需に反動が出ないかという質問が出た。和田社長は、消費税が導入されたときにも同じことが言われたが反動減らしきものを感じずに済んだとして、今回もあまり意識していないと答えている。成長を支えてきたのは基本ソフトの世代交代と税制改正という外からの買い替え需要であり、同時期の誌面も1995年のWindows 95の登場を飛躍のきっかけとして書いていた[4][5]

決断

1998年1月の全面振替

1998年1月、オービックビジネスコンサルタントは新規開発のリソースのすべてを2000年以降の製品に向けた。対象は3分野で、401kシステムを含む企業バンキング、新ERP、会計事務所マーケットを選んだ。企業バンキングでは電子バンキングの事実上の標準を目指して投資を続け、新ERPは対象利用者を大手企業に定め、会計事務所向けは専用機メーカーに代わって市場を開く設計であった。同じ月に三和銀行とEBシステムを共同開発している[6][7]

振り替えたのは新規開発の余力であり、既存の4階層を刻んで売り続けるための開発はそのぶん細くなる。1999年9月、奉行2000シリーズと奉行2000新ERPシリーズを発売した。新ERPにはODACという接続機構を加え、パッケージだけでは処理できない利用者固有の業務をサブシステムに切り出し、稼働させたまま増築できるようにした。和田社長はこの新シリーズを大手企業向け市場を広げる起爆剤にしたいと述べている[8][9]

インターネット対応と、6年後の235億円

2000年には、ネット経由で業務ソフトを使わせるASP事業、電子商取引システムと連動するEC奉行、企業間の受発注をネットで提供する奉行.comが予定に並んだ。和田社長はこの期を、従来型の製品から新ERPシリーズへ切り替わる転換期と説明している。1995年にもWindows 95の発売による踊り場があったが、LAN対応製品の投入で再び伸びた。今回はインターネット対応の転換期で、やはり大きなチャンスだという見立てであった[10]

目標の数字も置かれた。2000年2月の時点で、2002年3月期に売上高200億円と40%近い経常利益率の維持を経営目標に掲げている。同年6月には、2002年3月期に11.1%増と2桁成長へ復帰し、2005年3月期には売上高235億円に届くという計画が誌面で伝えられた。1999年3月期の102億円から6年で2.3倍にあたる。同業からは、カスタマイズ程度で新ERPと名づけるのは大げさだという声も出ていた[11][12]

結果

好決算と同時に出た1桁成長の予想

2000年5月に発表した2000年3月期は、売上高が前期比21.7%増の124.7億円、当期利益が69.8%増の33億円で、数字の上では好調が続いていた。ところが会社側が同時に示した今期予想は、売上高8.3%増、当期利益2.9%増にとどまる。2000年2月にIT関連株ブームで9万1000円まで買われた株価は、それまでの下落を加速して1万6000円台まで落ちた。株式を店頭登録して、まだ8か月であった[13]

2001年3月期の売上高は109億円で、前期の124.7億円から1割以上減った。経常利益は42億円である。翌2001年9月、和田社長は商品別に見るとネットワーク対応の製品とERP用の製品がかなりの勢いで伸びていると語り、奉行シリーズの利用は30万社にのぼるとした。伸びている製品はあっても、それが全体の売上を押し上げるところまでは届いていなかった[14]

計画235億円と、実績145.7億円

有価証券報告書は、その後の4年を淡々と並べている。2002年3月期112.7億円、2003年3月期124.4億円、2004年3月期137.0億円、2005年3月期145.7億円。2000年3月期の水準に戻るまでに4年かかり、計画の235億円に対する達成率は62%にとどまった。3分野のうち企業バンキングは、2001年2月の東京三菱銀行とのオンライン外為システム共同開発を最後に、沿革から記述が消えている[15][16]

同じ4年で、別の数字は上を向いた。経常利益は2002年3月期の42.1億円から2005年3月期の77.9億円へ、売上高経常利益率は37.4%から53.4%へ上がり、従業員は374人から476人に増えている。製品では2001年3月に奉行21シリーズ、同年11月に奉行21新ERPシリーズを出し、2004年3月には東京証券取引所市場第一部へ上場した。売上が伸びない4年のあいだに、利益率と人員は積み上がった[17][18]

出典・参考
  • 証券アナリストジャーナル 1999年11月号「オービックビジネスコンサルタント」(和田成史社長 企業説明会・1999年10月12日)
  • 週刊東洋経済 2000年2月5日号「[トップの履歴書]オービックビジネスコンサルタント社長 和田成史 財務・管理会計ソフトで次代を担う」
  • 週刊東洋経済 2000年6月24日号「[Lineup/IT最前線]IT決算 転機迎えたOBC 成長鈍化は一服か変調か」
  • 日経ベンチャー 2001年9月号「編集長インタビュー 和田成史 オービックビジネスコンサルタント社長」
  • オービックビジネスコンサルタント 有価証券報告書(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】【沿革】

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