コンテナ船事業をONEへ切り出し(2016年・川崎汽船の決断)更新:2026/07/26論点赤字のコンテナ船事業を分離するか川崎汽船:業績の推移売上高(億円)営業利益率(%)データ出所半世紀続けた自社運航の終了と、共同出資会社への事業移管何をなぜ決めたか:半世紀続けた自社運航の終了と、共同出資会社への事業移管概要2016年10月、川崎汽船が日本郵船・商船三井とコンテナ船・海外ターミナル事業を統合すると発表した経営判断。3社が出資する新会社Ocean Network Express(ONE)を2017年7月にシンガポールで設立し、2018年4月に営業を開始した。1968年のフルコンテナ船就航から50年続けたコンテナ船の自社運航は、ここで終わった。背景コンテナ船は船腹の供給増が荷動きを上回り、運賃が崩れていた。川崎汽船は2016年までの10年間で7度の部門赤字、計1,000億円超の損失を重ねた。売上高に占めるコンテナ船の比率は約5割で、日本郵船の3割・商船三井の4割より高く、市況の振れが全社の損益を左右した。内容出資比率は日本郵船38%、商船三井31%、川崎汽船31%。統合後の世界シェアは7%で6位となる計算であった。含意切り出しの直後、2019年3月期は用船契約の解約などで純損失1,111億円を計上した。ところがコロナ禍の運賃急騰でONEの利益が持分法投資利益として流れ込み、2022年3月期は経常利益6,575億円・純利益6,424億円の過去最高益となった。同期の自社の営業利益は177億円で、切り出した事業に利益の大半を依存する構造が残った。いつ何が起きたか8件考察:主力を売却するという選択の後味考察考察:主力を売却するという選択の後味ターミナルと内陸輸送を自前で抱える以上、簡単には畳めないという認識である。その本人が翌年、売上の5割を占める事業を切り出す側に立った。10年で7度の赤字と1,000億円超の部門損失、そして外資の傘下入りまで語られる状況が、自らの前提を書き換えさせたと推察される。ただ、切り出しは依存の解消ではなかった。2022年3月期の過去最高益6,424億円のうち、自社の営業利益は177億円にすぎず、利益の出所はONE経由のコンテナ船であった。売却した事業から最も多くを受け取り、運賃が正常化すれば受取額も縮む。自ら運航する事業の営業利益が2025年3月期に1,029億円に達したことで、ようやく二本目の足が立ったといえる。撤退した判断の評価は、この足がどこまで伸びるかで決まっていく。Yutaka Sugiura, 2026年7月参考文献参考文献参考川崎汽船 有価証券報告書 第157期(2025年3月期)【沿革】川崎汽船 有価証券報告書(2017年3月期・連結)川崎汽船 有価証券報告書(2019年3月期・連結)川崎汽船 有価証券報告書(2022年3月期・連結)川崎汽船 有価証券報告書(2025年3月期・連結)川崎汽船 有価証券報告書(2026年3月期・連結)次に読む決断川崎汽船の意思決定1989年川崎汽船川崎汽船北米定期航路への集中投資1,200億円を投じた邦船6社共同運航体制からの離脱と単独運航への移行1989年2019年川崎汽船川崎汽船エフィッシモの大量保有受入筆頭株主の長期保有の受け入れと、社外取締役の招請による統治の見直し2019年同じ問い:構造改革に伴う事業売却2016年旭化成旭化成水島エチレンセンターの1基化自社のエチレン設備の停止と、三菱化学との運営会社からの原料購入2016年2015年太陽誘電太陽誘電光記録メディア事業撤退一領域の切り離しによる、電子部品単一セグメントへの事業構成の回帰2015年2015年三菱自動車三菱自動車イリノイ工場の閉鎖現地生産の看板を下ろし、米国での自社生産から全面撤退2015年2010年セイコーエプソンセイコーエプソンSE07で中小型液晶を譲渡電子デバイス事業の縮小と、中小型液晶ディスプレイ事業資産の譲渡2010年2026年名古屋鉄道名古屋鉄道名鉄百貨店本店の閉店百貨店事業の店じまいと、名古屋駅地区再開発への資産の振り向け2026年×出所