水島エチレンセンターの1基化(2016年・旭化成の決断)

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旭化成:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
自社のエチレン設備の停止と、三菱化学との運営会社からの原料購入2014年2月、旭化成は三菱化学と、水島地区にある両社のエチレンセンターを2016年4月に1基へ集約し、三菱化学の設備を残すことで合意した。同じ月に、アクリロニトリルやスチレンモノマーなど国内の石油化学事業の基盤強化策も決めている。集約の前提は、前年の2013年8月の時点で「2016年春の1基化」として両社で固まっていた。

何をなぜ決めたか:自社のエチレン設備の停止と、三菱化学との運営会社からの原料購入

概要

2014年2月、旭化成は三菱化学と、水島地区にある両社のエチレンセンターを2016年4月に1基へ集約し、三菱化学の設備を残すことで合意した。同じ月に、アクリロニトリルやスチレンモノマーなど国内の石油化学事業の基盤強化策も決めている。集約の前提は、前年の2013年8月の時点で「2016年春の1基化」として両社で固まっていた。

設備の停止と原料の受け取り方は組で決まった。旭化成は2016年2月に水島製造所内のエチレンセンターの稼働を止め、4月から集約後の設備を三菱化学旭化成エチレンが運営し始めた。旭化成は同社の議決権の50.0%を持ち、持分法適用関連会社としてそこから製品を購入する立場に移った。

背景

水島は旭化成が自ら築いた石油化学の拠点だった。1968年7月に山陽石油化学を設立して水島地区へ進出し、1972年4月には山陽エチレンの年産35万トンのエチレンセンターが完成した。2010年5月、三菱ケミカルホールディングスと共同出資会社によるエチレンセンターの一体運営で基本合意し、2011年4月からは西日本エチレン有限責任事業組合が両社の設備を運営した。三菱ケミカルホールディングスは同年の中期経営計画で、水島について一体運営による設備の縮小と、需要に応じた1基化の検討を掲げていた。

決める前のケミカル事業は利益を大きく減らしていた。ケミカルの営業利益は2011年3月期の64,379百万円から、2013年3月期には22,925百万円まで減少した。合意を挟んだ2014年3月期は、円安の効果で389億円まで持ち直している。

内容

集約の費用は合意した期に計上した。2014年3月期、水島地区エチレンセンターの集約と国内石油化学事業の基盤強化などで事業構造改善費用225億円を特別損失に計上した。同じ期に医薬事業の米国訴訟で受取損害賠償金535億円が入り、当期純利益は1,013億円と前期より476億円増加した。

運営会社の形は合意から1年余りで決まった。2015年5月、集約後の設備を運営する合弁会社の詳細で三菱化学と合意し、社名を「三菱化学旭化成エチレン株式会社」とすると発表した。同じ2016年4月、旭化成は旭化成ケミカルズなど3社を吸収合併し、事業持株会社制へ移った。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:上流の負担を外し、誘導品が残った

なぜ自社の設備を止めたのか。2010年から水島の2基は三菱化学と一体で運営しており、旭化成が分解炉を自社で持ち続ける意味は薄れていた。旭化成に要るのはエチレンそのものより、それを原料にする誘導品の事業である。三菱化学の設備に集約すれば、運営会社の議決権50%で原料の受け取りを保ちながら、自社の分解炉の負担を外せる。事業構造改善費用225億円は、その切り替えの代価だったと読める。

もっとも、1基化で片づいたのは上流の設備だけである。旭化成は分解炉の運転から撤退した一方で、スチレンモノマーやポリエチレンなどの誘導品の工場を水島に持ち続けた。誘導品の採算は、国内の需要と輸出の市況に左右される。1基に寄せても、その構造は変わらない。つまり2014年の判断は、原料の供給の形を変えたが、原料を使う事業の数には手を付けていない。設備の負担を外すことと、誘導品の事業を続けることは、同じ判断の中で両立していた。その両立が保てるかどうかは、誘導品の市況にかかっていた。

その後の数字は、2段目の読みに近い。2024年3月期、エチレンセンターから原料を受ける汎用石化・樹脂資産グループで58,381百万円の減損損失が出た。2026年には西日本の共同事業体で出資比率10%を前提とし、2030年度を目途に誘導品の生産も終える方針を決めた。2014年の1基化は、水島の石油化学から撤退する長い過程の最初の段階だったのだろう。決着は、2030年度以降の撤去を終えた時点で見えてくる。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

数字で見る

旭化成:連結の売上高・営業利益・特別損失の推移

旭化成:連結の売上高・営業利益・特別損失の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

1基化で合意した2014年3月期は、特別損失が34,539百万円に拡大した

旭化成:連結の売上高・営業利益・特別損失の推移
(百万円)売上高営業利益特別損失備考
2009年3月期1,553,10834,95914,009
2011年3月期1,555,945122,927−特別損失は決算短信の逐語で照合できていない
2012年3月期1,573,230104,25815,6622011年4月に西日本エチレンLLPが水島の2基の運営を開始
2013年3月期1,666,64091,96013,151ケミカルの営業利益が22,925百万円まで減少
2014年3月期1,897,766143,34734,5392月に1基化で合意。事業構造改善費用225億円を計上
2015年3月期1,986,405157,93311,241
2016年3月期1,940,914165,20324,1732月に水島製造所内のエチレンセンターを停止
2017年3月期1,882,991159,22913,3284月から三菱化学旭化成エチレンが運営を開始
2018年3月期2,042,216198,4759,908
2019年3月期2,170,403209,58721,814
出所:旭化成 有価証券報告書 第125〜128期(2016年3月期〜2019年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / 旭化成 決算短信(平成21年3月期・平成24年3月期・平成25年3月期・平成26年3月期)【連結損益計算書】
出所:旭化成 有価証券報告書 第125〜128期(2016年3月期〜2019年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】 / 旭化成 決算短信(平成21年3月期・平成24年3月期・平成25年3月期・平成26年3月期)【連結損益計算書】
当時の取締役7名

取締役7名(2016年6月株主総会決議)

役員名役職
取締役業務執行担当領域
伊藤一郎取締役:取締役業務執行:会長担当:
市野紀生取締役:取締役業務執行:担当:
小堀秀毅取締役:取締役業務執行:会長担当:
白石真澄学者取締役:取締役業務執行:担当:
柿澤信行取締役:取締役業務執行:担当:総務部長
坂本修一取締役:取締役業務執行:担当:
立岡恒良官僚取締役:社外取締役業務執行:担当:
この一覧は2016年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • 旭化成 2013年度 決算説明資料(2014年5月9日)ケミカル事業のトピックス
  • 旭化成 決算説明資料(2013年10月31日)ケミカル事業のトピックス
  • 旭化成 2015年度 決算説明資料(2016年5月11日)ケミカル事業のトピックス
  • 旭化成 有価証券報告書 第126期(2017年3月期)【関係会社の状況】
  • 旭化成 有価証券報告書 第125期(2016年3月期)【沿革】
  • 旭化成 決算説明資料(2010年8月3日)ケミカル事業のトピックス
  • 旭化成 2010年度 決算説明資料(2011年5月11日)ケミカル事業のトピックス
  • 三菱ケミカルホールディングス 新中期経営計画「APTSIS 15」の策定について(2010年12月8日)
  • 旭化成 平成24年3月期 決算短信・平成25年3月期 決算短信【セグメント情報】
  • 旭化成 平成26年3月期 決算短信(2014年5月9日)【経営成績に関する分析】
  • 旭化成 決算説明資料(2015年8月4日)ケミカル事業のトピックス
  • 旭化成 株主向け グループ事業のご報告(2015年)
  • 旭化成 2024年3月期決算説明会 議事録要旨(2024年5月9日)
  • 旭化成 有価証券報告書 第125〜128期(2016年3月期〜2019年3月期)【主要な経営指標等の推移】【連結損益計算書】
  • 旭化成 決算短信(平成21年3月期・平成24年3月期・平成25年3月期・平成26年3月期)【連結損益計算書】
  • 旭化成 決算短信「平成26年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
  • 旭化成 決算説明会資料「2013年度 決算説明資料」
  • 旭化成 決算説明会資料「2015年度 決算説明資料」
  • 旭化成・三井化学・三菱ケミカル ニュースリリース「西日本におけるエチレン製造設備の統合に向けた共同事業体の出資比率について」
  • 旭化成 決算短信「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
  • 旭化成 有価証券報告書「第125期(2016年3月期)【沿革】【業績等の概要】」
  • 旭化成 有価証券報告書「第133期(2024年3月期)【連結損益計算書関係】」

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