SWCCROIC の経営指標化による低資本効率事業の整理と、古河電工との汎用電線販売事業の統合

時期 2019年4月
意思決定者(推定) 長谷川隆代 社長
論点 資本効率を軸にした事業ポートフォリオの組み替え
概要
2019年春、昭和電線ホールディングスの長谷川隆代社長が事業をセグメント制へ改編し、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として導入した経営判断。事業別のROICと資本コストを突き合わせ、黒字でも資本コストを下回る事業を縮小・撤退の対象とした。同年6月には古河電気工業と汎用電線の販売事業を統合すると発表している。
背景
2004年3月期以降に四度の最終赤字を計上し、黒字の年も利益率は1%程度にとどまっていた。
内容
セグメント制と指名委員会・報酬委員会の設置、相談役制度の廃止、監査等委員会設置会社への移行を同時に進め、事業別ROICと事業別WACCの差を各事業に徹底した。建設・電販市場向け汎用電線は古河電工との共同出資会社SFCCへ販売機能を移し、昭和電線HDが60%、古河電工が40%を出資した。
含意
利益の絶対額ではなく投下資本に対する見返りで事業を測る枠組みが、創業以来の商域である汎用電線にも当てられた。SFCCは2022年に製造まで取り込み、出資比率は80対20へ、2026年3月末にはSWCCの完全子会社となる方針が示されている。
筆者の見解

物差しを替えるということ

長谷川隆代社長が替えたのは事業の顔ぶれではなく、事業を測る物差しであった。電線の付加価値は低くて当然という社内の受け止めに対し、稼ぐのにいくら使ったかを問うROICを持ち込み、黒字であっても資本コストを賄えない事業は手放す基準に改めている。創業以来の商域である汎用電線の販売を、競合の古河電気工業と一つにするところまで踏み込んだ点に、その徹底が表れているとみられる。

ただし、指標を軸にした経営には縮小均衡の危うさがついて回る。同社自身、成長のための先行投資は一時的にROICを押し下げるため、ROICを最終目標に据えると事業責任者の投資意欲が下がると認め、成長性とキャッシュ・フローを併せて見る形へ組み替えようとしている。古河電工と分け合った汎用電線も、2026年3月末には持ち分をすべて買い取って自前へ戻す。物差しを替える判断は一度で終わらず、当てる対象が変わるたびに引き直しを迫られるとみることができる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

同じ問いに直面した会社

何を捨てて、何に絞るか2022年名村造船所佐世保重工業の新造船事業の休止と、伊万里への造船集約造船拠点の集約と赤字子会社の再建
2023年東急不動産ホールディングス抜本的再構築による非中核事業の一斉譲渡(ハンズ・ゴルフ場・スキー場・フィットネス)非中核事業の整理と経営資源の集中
2002年岩谷産業牧野明次体制の「量から質への転換」―戸建住宅事業撤退と水素先行投資事業ポートフォリオの整理と水素事業への転轍
1999年名古屋鉄道不採算路線・多角化事業の見直しと分社化、中部圏への経営資源集中多角化事業の整理と経営資源の集中
1992年ハウス食品グループ本社低シェア事業からの撤退方針とチルド食品事業の全面撤退事業ポートフォリオの絞り込みと商品数の削減
構造改革で、事業を絞り込むか1991年日立化成好況期に着手した低収益製品の選別と不採算製品からの撤退不採算製品の整理と収益体質の立て直し
2016年旭化成水島の自社エチレンセンターの停止と、西日本3社によるエチレン集約への参加基礎石油化学原料事業の集約と設備からの撤退
2015年太陽誘電光記録メディア事業からの撤退と、電子部品単一セグメントへの回帰縮小市場からの撤退と事業構成の絞り込み
2010年セイコーエプソン電子デバイス事業の縮小と、中小型液晶ディスプレイ事業資産の譲渡事業構造の絞り込みと電子デバイスの置きどころ
2007年シチズン時計電子デバイスの選択と集中、携帯電話向けカメラ部品と小型液晶パネルからの撤退電子デバイス事業の選択と集中
出典・参考

免責事項およびポリシー