筆者の見解
抱えることをやめるという判断
この決断の核心は、かつて多角化の成果として誇った事業群を、資本効率という一つの物差しで冷静に選び直した点にある。東急ハンズもゴルフ場もスキー場も、それぞれの時代には確かな戦略の産物であった。だが、稼ぐ力が落ち資本を寝かせる資産になったとき、東急不動産ホールディングスはそれらを抱え続けることをやめ、事業を最も生かせる相手へ委ねる道を選んだ。何でも自前で保有する発想から離れる"脱自前主義"は、資産の量ではなく資本の効率で経営を測る立場への転換と、地続きの判断であったとみられる。
もっとも、抱えることをやめる決断には、失うものもある。多角化は、本業の景気変動を別の事業でならす分散の効果や、思わぬ新しい収益源が育つ余地を持っていた。非中核をまとめて切り離し、都市再開発と再エネへ資源を集中させることは、選択と集中の明快さと引き換えに、事業構成の幅を狭める選択でもある。渋谷という一つの重点と、再エネという一つの成長領域に賭けを寄せた東急不動産ホールディングスが、身軽さと引き換えに手放した分散の価値をどう補っていくか——多角化の幕引きが残した問いは、そこにあるといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月