旭化成の直近の動向と展望
旭化成の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
市場評価への不満が自己株買いという答えを呼ぶ節目
2025年11月、旭化成は上限400億円の自己株式取得を決定した。中期経営計画で株主還元の強化を掲げるなか、自己株式取得は増配に比べて機動的に実施できる手段だという経営陣の判断に基づく決定だった。堀江専務は、中長期視点での事業ポートフォリオ変革や今期の業績が堅調に進捗しているなか、当社に対する株式市場の評価には満足していないというメッセージとして自己株式取得を実施することにしたと決算説明会で説明した。400億円という金額は中期経営計画におけるキャピタルアロケーションを前提に発行済株式数の約2%を目安として決められたが、2026年2月時点では事業ポートフォリオ変革プロジェクトが複数同時に進行していたため取得開始は遅れ、今後順次取得していく方針が示されている。
ヘルスケア事業では米Calliditas社から取得したIgA腎症治療剤「Tarpeyo」が2025年版KDIGOガイドラインで病因となるIgAの減少が唯一証明されたIgA腎症治療薬として推奨され、医師への浸透が買収当初の想定を上回るペースで進み、ピーク売上高5億米ドル超の達成が前倒しになる可能性を経営陣が示した。Veloxisの移植後免疫抑制剤「Envarsus XR」も過去5年間のCAGRで20%台前半の成長率を維持した。2026年1月27日には西日本におけるエチレン生産体制に関する3社連携の検討等を公式発表し、ケミカル事業の構造転換が始まった。政策保有株式の売却加速と事業ポートフォリオ変革という二つの経営手段が並行して進む経営段階へ入った。
- 決算説明会 FY26-2Q 2025/11/5
- 決算説明会 FY26-3Q 2026/2/4
- 旭化成 プレスリリース 西日本エチレン検討 2026/1/27
- 旭化成 プレスリリース 自己株式取得 2025/11
60年循環の先に柱を医薬へ移す経営段階
2026年3月期の第3四半期決算では前回予想からの業績上方修正を発表した。為替が円高に推移する可能性を懸念していた業績予想の変動リスクも、足元では為替が安定していることから、現時点では特段のリスクはないという判断を経営陣が示した。DOE目安3%の早期達成を目指す方針であり、特別損失については事業ポートフォリオ変革を進めるなかで一定の計上が見込まれるが、想定外の巨額損失が発生しないよう中期的な戦略を意識しながら管理する方針が説明された。2026年度の経営計画は現在検討中だが、当期純利益も増益を目指す考えが示され、マテリアル全体では上期から下期にかけて約100億円の増益が見込まれている。こうした取り組みは同社の事業基盤を押し上げる要因となった。
LIB用湿式セパレータ「ハイポア」のカナダ工場については北米EV市場の立ち上がりが想定より遅れるなか、塗工能力増強に伴う収益改善は当初のEV向け需要を前提としていたため、収益への寄与は2027年度以降に本格化する見込みとなる。塗工能力増強の工事は予定通り進捗しているが、稼働時期については市場の状況を見極めながら最適化する方針が示され、2026年度の償却費増加の影響は限定的となる見通しである。エレクトロニクス事業の石英ガラスクロスは2026年度に顧客認定を獲得し、2027年度以降で本格的な売上貢献を目指すスケジュールで進む。60年にわたる拡張と収縮の循環の先で、旭化成はヘルスケアを収益の柱に据え、ケミカル事業の構造転換を進める経営段階へ入った。
- 決算説明会 FY26-2Q 2025/11/5
- 決算説明会 FY26-3Q 2026/2/4
- 旭化成 プレスリリース 西日本エチレン検討 2026/1/27
- 旭化成 プレスリリース 自己株式取得 2025/11