名古屋鉄道名鉄百貨店本店の営業終了と名古屋駅地区再開発

時期 2025年5月
意思決定者(推定) 髙﨑裕樹 社長
論点 不採算が続いた百貨店事業の整理と名古屋駅地区再開発
概要
2026年2月28日、名古屋鉄道は完全子会社である㈱名鉄百貨店の名鉄百貨店本店の店舗営業を終えた。閉店セールが盛況で当期の百貨店業は5.1%増収の18,081百万円となる一方、連結の特別損失には店舗閉鎖損失1,547百万円を計上し、うち1,360百万円は割増退職金であった。翌3月1日、外商事業は㈱名鉄生活創研が引き継ぎ、アートや趣味の逸品などを提案するギャラリー型の拠点「エムズロイヤルギャラリー」を開いて顧客との接点を残した。
背景
百貨店業の営業損益は2021年3月期から一度も黒字に届かなかった。2024年3月期に名鉄百貨店一宮店を閉じるなど不採算店舗の閉鎖で赤字幅は縮んだが、最終期となる2026年3月期でも763百万円の営業損失が残った。㈱名鉄百貨店は名古屋市中村区に本社を置く資本金100百万円・議決権比率100%の連結子会社で、2004年に名古屋証券取引所の上場を廃し、簡易株式交換で名古屋鉄道の完全子会社となっていた。
内容
本店の跡地は名古屋駅地区再開発計画の対象地に含まれる。名古屋鉄道は2025年5月26日の取締役会で事業協定書の締結を決議し、日本生命保険・近畿日本鉄道・近鉄不動産と名鉄都市開発を含む5社で計画を進める。対象地は名古屋市中村区名駅一丁目2番他で敷地面積は約32,700㎡、再開発ビルは地上31階・地下2階、延床面積約520,000㎡に商業・オフィス・ホテル・鉄道駅・バスターミナルが入る。解体着工は2026年度、新築着工は2027年度、1期本工事の竣工は2033年度を予定する。
含意
営業を終えたのは本店だけではない。名鉄グランドホテルは2026年3月22日、名鉄バスセンターは同年3月中に営業を終え、駅前の既存施設は一体で解体に向かう。ただし名古屋鉄道は2025年12月12日に再開発のスケジュール変更と現計画の再検証および見直しへ着手し、2026年度に方向性を判断するとしている。2027年3月期からは報告セグメントを7区分から5区分に改め、百貨店業の区分は残らない。
筆者の見解

駅前を建て替えるために、店を先に閉じる

百貨店業の営業損益は2021年3月期から一度も黒字に届かなかった。一宮店をはじめ不採算店舗を閉じて赤字幅は縮めたものの、最終期となる2026年3月期でも763百万円の営業損失が残る。皮肉なことに、その最後の期は閉店セールが盛況で5.1%の増収となった。客が集まらなかったわけではない。集まっても、名古屋駅前の一等地を百貨店として建て替え直す原資には届かなかったということである。

本店の営業終了日は、閉店の告知としてではなく、再開発の日程表の一行として先に現れていた。名鉄グランドホテル、名鉄バスセンターと並んで既存施設の営業終了に置かれ、翌年度の解体着工へつながる。約32,700㎡の敷地に延床面積約520,000㎡のビルを建てる計画のなかで、本店は畳まれる側にまわった。もっとも、その計画自体が2025年12月に再検証と見直しに入り、方向性の判断は2026年度に持ち越されている。店を閉じる決定だけが先に実行され、跡に何を建てるかはなお定まっていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

本店閉店と跡地再開発の条件

科目 概要 備考
対象会社 ㈱名鉄百貨店 名古屋市中村区。資本金100百万円、議決権比率100%の連結子会社
対象店舗 名鉄百貨店本店 報告セグメントは流通事業、業種区分は百貨店業
本店の営業終了日 2026年2月28日 閉店セールが盛況で当期の百貨店業は5.1%増収の18,081百万円
外商事業の引継ぎ 2026年3月1日 ㈱名鉄生活創研が引き継いだ。店舗営業終了後も顧客との接点を残す
新設した拠点 エムズロイヤルギャラリー アートや趣味の逸品などを提案するギャラリー型の拠点
あわせて営業を終える施設 名鉄グランドホテル、名鉄バスセンター ホテルは2026年3月22日、バスセンターは同年3月中。代替機能は周辺で確保
店舗閉鎖損失 1,547百万円 2026年3月期の連結特別損失。前期までの計上はない
うち割増退職金 1,360百万円 退職給付費用とは別に、特別損失の店舗閉鎖損失に含めて計上した
本店跡地の位置づけ 名古屋駅地区再開発計画 対象地は名古屋市中村区名駅一丁目2番他、敷地面積は約32,700㎡
事業協定書の締結決議 2025年5月26日 共同事業者間で事業化の合意に至り、同日の取締役会で決議した
共同事業者 日本生命保険、近畿日本鉄道、近鉄不動産 名鉄都市開発を含む5社で推進する
再開発ビルの規模 延床面積 約520,000㎡ 地上31階・地下2階。商業、オフィス、ホテル、鉄道駅、バスターミナル
解体着工 2026年度(予定)
新築着工 2027年度(予定)
1期本工事竣工 2033年度(予定) オフィス・商業(一部)・ホテル・バスターミナル開業、鉄道1期リニューアル
2期本工事竣工 2040年代前半(予定) 商業の全面開業と鉄道2期リニューアル(4線)
計画の再検証 2025年12月12日に着手 スケジュール変更と現計画の見直し。2026年度に方向性を判断する
報告セグメントの変更 2027年3月期の期首から 7区分を5区分へ。百貨店業はレジャー・生活サービス事業に含まれる
名鉄百貨店への保証債務 395百万円 銀行借入等に対する名古屋鉄道単体の保証債務。前事業年度も同額
翌期の特別損失の見込み 51,900百万円 2027年3月期の会社予想。内訳は開示されていない

出所:名古屋鉄道 有価証券報告書 第162期(2026年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【経営成績等の状況】【連結損益計算書関係】【退職給付関係】【重要な後発事象】【偶発債務】、第161期(2025年3月期)【重要な後発事象】 / 名鉄グループ統合報告書2025 / 名古屋鉄道 2026年3月期決算説明会資料

名古屋鉄道:百貨店業の営業収益と営業損益の推移

(百万円) 営業収益営業利益 備考
2021年3月期 43,048△2,389 消化仕入を総額で認識していた期。翌期以降と比較できない
2022年3月期 16,274△2,611 収益認識基準の適用で消化仕入を純額へ改め、子会社も譲渡した
2023年3月期 17,412△2,412
2024年3月期 17,762△2,173 1月31日に名鉄百貨店一宮店を閉店
2025年3月期 17,209△1,507 不採算店舗の閉鎖で百貨店業の収支が改善した
2026年3月期 18,081△763 2月28日に本店の営業を終了。閉店セールが盛況で5.1%の増収
2027年3月期 報告セグメントが5区分に変わり、百貨店業の区分は残らない
2028年3月期 有価証券報告書は未到来
2029年3月期 有価証券報告書は未到来
2030年3月期 有価証券報告書は未到来
2031年3月期 有価証券報告書は未到来
百貨店業の営業収益と営業利益率
営業収益(百万円)営業利益率(%)

出所:名古屋鉄道 有価証券報告書 第158期〜第162期(経営成績等の状況 流通事業 業種別営業成績表)

名古屋鉄道:特別利益と特別損失の推移

(百万円) 特別利益特別損失うち店舗閉鎖損失 備考
2021年3月期 7,91322,2910 減損損失9,334を計上した期
2022年3月期 28,48025,5460 工事負担金等の受入額21,697と圧縮額21,140が両建てで膨らんだ
2023年3月期 9,1406,8680
2024年3月期 5,3908,3880 助成金返還損2,552を計上
2025年3月期 15,66412,0950 負ののれん発生益4,756と段階取得に係る差損1,530を計上
2026年3月期 13,66313,2471,547 店舗閉鎖損失のうち1,360は割増退職金。減損5,440に百貨店の区分はない
2027年3月期 会社予想は特別利益57,000・特別損失51,900。内訳は開示されていない
2028年3月期 有価証券報告書は未到来
2029年3月期 有価証券報告書は未到来
2030年3月期 有価証券報告書は未到来
2031年3月期 有価証券報告書は未到来
特別損失とその内訳
うち店舗閉鎖損失(百万円)店舗閉鎖損失以外の特別損失(百万円)

出所:名古屋鉄道 有価証券報告書 第158期〜第162期(連結損益計算書、【連結損益計算書関係】減損損失)

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