富士電機の直近の業績・経営課題と展望

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富士電機の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高11,234億円YoY+1.8%
2025/3売上総利益3,179億円YoY+4.8%
2025/3販売費及び一般管理費2,003億円YoY+1.5%
2025/3営業利益1,176億円YoY+10.9%
2025/3経常利益1,188億円YoY+10.1%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益922億円YoY+22.4%
2025/3自己資本比率52.7%YoY+5.3pt
2025/3有利子負債合計408億円前年比▲14,570億円
2025/3現金同等物期末残高627億円YoY▲4.4%
経営トップ北澤通宏代表取締役会長CEO
2025/3従業員数27,391前年比+66人
2025/3平均給与810万円前年比+24万円
歴史的背景1923年に古河電工とシーメンスの合弁で設立され「古河(富)」「シーメンス(士)」を社名とした。1969年自販機進出で4年で国内シェア1位、FY08のリーマン直撃で純損失733億円を経て北澤通宏社長下でパワー半導体に集中、デバイスからシステムまでの垂直統合へ転換した
経営課題FY24売上1兆1,234億円・営業利益1,176億円と過去最高を更新したが、電装分野でのEV伸長鈍化、銅・銀など素材価格高騰の通期減益影響50数億円、価格転嫁のタイムラグ、中国政府の補助金政策次第で左右される再エネ需要、日中関係リスクが並列で残る
経営方針2024年6月就任の近藤史夫社長下で2026年度中計に対しては下振れ見通しを示し、SiC生産能力2.5倍計画は需要に連動させて調整する。データセンター向けは「高圧盤、遮断機、変圧器、UPS、低圧盤を全て自社製品で対応できる」自社一貫供給を強みに「まるごと提案」を進める
主な投資2024年11月にデンソーと総額2,116億円の共同投資を決定。FY25設備投資は約400億円弱(SiC 8インチ・6インチ向け中心)でSiC 6インチはほぼ投資完了。成長投資の主軸は8インチ化と北米市場開拓に移り、2026年度から北米データセンター市場への本格展開を計画する

デンソー協業と北米データセンターで動くパワー半導体集中

1923年に古河電気工業とドイツ・シーメンスの合弁で発足した富士電機は、設立時にシーメンス引受300万円が機械現物と技術報償金で振り替えられ現金不足を抱えたまま、日立・三菱・明電舎が握る重電市場へ後発参入した。1969年自販機進出で4年後に国内シェア1位を確保し、後発でも勝てる隣接領域へ資源を振り向けた。2009年3月期はリーマン・ショックで純損失733億円・営業赤字188億円に沈み、同年6月就任の北澤通宏社長がパワー半導体への集中を選択した。デバイスからシステムまでの垂直統合に事業を組み替えた。EV伸長鈍化と素材価格高騰が直近利益率の課題として残る。

2024年6月、北澤通宏社長は会長CEOに退き、近藤史夫氏が社長に就任した。FY24売上1兆1,234億円・営業利益1,176億円・純利益922億円と過去最高を更新したものの、2026年度中期経営計画に対して下振れ見通しを示し、SiC生産能力を2025年度末に2.5倍へ引き上げる計画は電装分野の伸長鈍化を受けて需要に連動させる調整を同時に発表した。SiC比率はFY26電装分野15〜20%、FY27以降さらに上昇の見通しで、第4世代チップと小型高電力密度パッケージで性能差別化を図る。銅・銀の価格高騰による通期減益影響は50数億円、3Q累計で約40億円となり、価格転嫁のタイムラグが短期利益率を揺さぶる。

2024年11月、富士電機とデンソーはパワー半導体の共同投資を決定し、2社合計2,116億円のうち705億円に経済産業省の補助が決まった。富士電機は松本工場のエピウエハーとパワー素子の増産にこの資金を充てる。FY25設備投資は約400億円弱でSiC 8インチ・6インチ向けが中心、SiC 6インチはほぼ投資完了し、同社はFY26以降の成長投資の主軸を8インチ化と北米データセンター市場開拓に移している。エネルギー事業では高圧盤・遮断機・変圧器・UPS・低圧盤を自社一貫供給できる強みを「まるごと提案」として一括提供し、2026年度から北米データセンター市場への参入を計画する。再エネ向けモジュールの世界シェアは20%超と同社は認識する。

それゆえに、富士電機の系譜は規模で先発に届かない条件下で領域を絞り込み他社と組む繰り返しであり、2024年11月のデンソー協業はシーメンス合弁から101年を経て大型他社共同投資という同じ構図に戻ったかたちである。FY24で連続最高益を更新しながらも、銅・銀価格高騰と価格転嫁の遅れ、中国補助金政策次第で左右される再エネ需要、日中関係リスクが並列で残る。SiC生産能力2.5倍の積極投資と需要に連動させた投資調整を同じ説明会で両立させる近藤史夫社長下の体制が、デバイス垂直統合で得た優位を超過利潤に変換し、生成AIで拡大するデータセンター需要に重電機器の販売を乗せられるかが、次に検証される論点となる。

富士電機の業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円8,136+0.4%8,378+3.0%8,935+6.6%9,149+2.4%9,006−1.6%8,759−2.7%9,102+3.9%10,094+10.9%11,032+9.3%11,234+1.8%
インダストリー億円3,5034,0103,967
エネルギー億円3,2953,3893,477
半導体億円1,5401,7422,0162,2272,335
食品流通億円1,0981,0921,1751,1331,0417639029431,0551,093
売上原価億円6,0326,2446,6186,7996,8016,5476,5787,3257,9998,055
売上総利益億円2,1032,1342,3162,3502,2052,2132,5242,7693,0333,179
販管費億円1,6531,6871,7571,7511,7801,7271,7761,8801,9722,003
営業利益YoY億円450+14.5%447−0.7%560+25.2%600+7.2%425−29.1%486+14.3%748+54.0%889+18.8%1,061+19.3%1,176+10.9%
インダストリー億円268343382
エネルギー億円286301321
半導体億円177271322362371
食品流通億円8060625838-53304488139
経常利益YoY億円456+5.7%463+1.5%560+21.1%635+13.3%445−29.9%504+13.2%793+57.3%878+10.7%1,078+22.8%1,188+10.1%
当期純利益YoY億円306+9.5%410+33.7%378−7.8%403+6.6%288−28.5%419+45.6%587+39.9%613+4.6%754+22.8%922+22.4%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%27.332.836.137.036.739.642.343.847.452.7
有利子負債比率%12.110.97.56.26.011.310.06.44.43.1
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円4855825315494612697681,1628491,449
投資CF億円-19497-146-214-276235-224-495-624-634
財務CF億円-316-561-469-382169-395-429-772-459-862
従業員
連結従業員数26,50826,50327,00927,41627,96027,59326,75727,12327,32527,391
単体従業員数10,79010,72010,74510,53910,52410,51310,56610,55810,71110,939
平均年収(単体)万円746749752765763750760776787810

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」(2024〜26)の2年目進捗。SiC・Si 8インチなど前工程の生産能力増強、第8世代IGBT・第3世代SiCの開発を推進。データセンター向け需要拡大で施設・電源システム伸長、xEV向けパワー半導体は海外向け中心。期末配当は1株85円(予定)、年間配当160円。

決算説明会

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/20250425_1a.pdf
FY24中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」(2024〜26)の初年度。パワー半導体生産能力増強と電動車(xEV)向け需要拡大対応を推進、データセンター・半導体メーカ向け案件の増加。期末配当は1株75円に決定。

決算説明会

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/20240425_1.pdf
FY23中期経営計画「令和.Prosperity2023」最終年度に向けた重要な1年。売上高1兆円・営業利益率8%以上目標達成へ向け、パワエレ事業・パワー半導体事業拡大を中核に成長戦略を推進。ディスク媒体事業からの撤退影響を電動車向けパワー半導体需要拡大で吸収。

決算説明会

https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/pdf/gh2023_04/20230427_all.pdf
FY22中期経営計画「令和.Prosperity2023」(2019〜2023)の4年目。営業利益率8.2%を達成し中計目標「8%以上」を2年前倒しで実現。パワー半導体生産能力増強の前倒し、データセンター・半導体メーカ向け施設・電源システム需要拡大、ディスク媒体事業から撤退。

決算説明会

https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/pdf/gh2022_04/20220427_all.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」の進捗と長期ビジョンを提示。パワー半導体・パワーエレクトロニクス・計測制御・冷熱の4コア技術を軸に、ROE12%以上、資本コストを意識したROIC経営、2030年以降を見据えた新たな中核事業育成、強固な事業ポートフォリオ構築を整理。

統合報告書

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all_A4.pdf
FY25中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」(2024〜26)の全体像と前中計の振り返り。パワー半導体生産能力増強、SiC・第8世代IGBT等の開発戦略、エネルギー・環境事業を中核に据える事業構造、サステナビリティ重点課題と財務戦略を一体で整理。

統合報告書

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2024all.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
富士電機社史1923-56 1957
新日本経済 1952/06
日経産業新聞 1987/12/23
日経ビジネス 1988/7/18
日経ビジネス 1985/01/07
日経ビジネス 1997/10/27
日経XTECH 2024/12/2
事業戦略説明会 FY25
決算説明会 FY25-3Q