ジュピターテレコムへの資本参加(2010年・KDDIの決断)

更新:
論点世帯基盤は自社網か出資か
KDDI:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
自社網の積み増しから327万世帯の顧客基盤の持分取得への転換

何をなぜ決めたか:自社網の積み増しから327万世帯の顧客基盤の持分取得への転換

概要

2010年1月25日、KDDIがLiberty Global, Inc.(LGI)グループと譲渡契約を締結し、2月19日にLGIが持つ中間持株会社3社の持分すべてを3,616億5,500万円で取得した経営判断。承継したジュピターテレコム(J:COM)株式は2,592,511株、議決権所有割合は30.9%で、国内最大のケーブルテレビ統括運営会社が持分法適用関連会社となった。

背景

収益を移動通信に依存する構図が続くなかで、固定通信の世帯基盤をどう積み増すかが課題だった。KDDIは自社のFTTHに加えてMSOのジャパンケーブルネットを傘下に持ち、ケーブルテレビ各社とケーブルプラス電話などの協業を進めており、以前からJ:COMとの協業に高い関心を持っていた。J:COMは1995年設立の国内最大手で、2009年12月末の総加入世帯数は327万世帯にのぼる。

内容

取得したのはJ:COM株そのものではなく、LGIグループがJ:COM株を保有する米国LLC3社(Liberty Global Japan II, LLC/Liberty Japan, LLC/Liberty Jupiter, LLC)の持分の全部だった。取得価額は3社合計で361,655百万円、取得諸経費を含む支出は362,534百万円で、自己資金と借入金等を充てた。

承継した株式のうち458,714株は取得より前に信託銀行へ信託譲渡されており、議決権の行使に関与できない。そのため議決権所有割合は30.9%にとどまった。

含意

3割の議決権では経営権は動かない。掲げたのはJ:COMとの戦略的パートナーシップの構築であり、既存株主と協調しながら企業価値の向上を支える立場と、FMBC(固定・移動・放送の融合)のサービスをケーブルテレビの顧客へ広げることだった。総資産は3兆8,195億円へ3,904億円増加し、有利子負債は1兆967億円と前期末から2,218億円増加した。住友商事の側から見れば筆頭株主の座を争う場面だが、KDDIの記述に争奪の語はない。

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考察:三割の持分で買った時間
考察

考察:三割の持分で買った時間

この投資が買ったのは、ケーブルの設備でも回線でもなく、327万世帯という到達済みの世帯数そのものだったと思われる。自社網で同じ数の世帯へ届かせようとすれば、幹線の敷設と宅内の工事、そして営業に何年もかかる。3,616億円は、その年数を金額に置き換えた値付けだった。しかも取得の対象はJ:COM株ではなく米国LLC3社の持分で、リバティ・グローバルが日本から退く出口の形に合わせ、LLCごと引き受ける買い方をしている。売り手の事情に寄せたからこそ、3割という塊を一度に取れたのだろう。

もっとも、議決権30.9%では何ひとつ決められない。承継した株式のうち458,714株は信託に入ったままで議決権の行使に関与できず、経営は既存株主との協調を前提にするほかなかった。住友商事の側から見れば筆頭株主の座を争う場面だが、KDDIの記述に争奪の語はなく、企業価値の向上を支える立場が繰り返し置かれている。実際、3割で入って3年待ち、2012年に住友商事と株主間契約を締結して共同で公開買付けに動き、2013年4月にJ:COMは連結子会社となった。入り口で支配を取らなかったことが、争った相手と組み直す余地を残したのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

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図と表

KDDI:総資産・純資産と投資活動によるキャッシュ・フロー

総資産(百万円)純資産率(%)
KDDI:総資産・純資産と投資活動によるキャッシュ・フロー
(百万円)総資産純資産投資活動によるキャッシュ・フロー備考
2005年3月期2,472,3221,162,191△136,507
2006年3月期2,500,8641,295,530△435,923
2007年3月期2,803,2401,537,113△442,218純資産額はこの期から少数株主持分を含む区分に変わっている
2008年3月期2,879,2741,715,730△557,688
2009年3月期3,429,1321,881,329△775,470
2010年3月期3,819,5362,078,450△924,441投資支出のうち362,534が中間持株会社3社の持分取得によるもの
2011年3月期3,778,9182,171,839△440,545
2012年3月期4,004,0092,128,624△484,507
2013年3月期4,084,9992,323,363△472,992
2014年3月期4,945,7562,916,989△546,257J:COMを連結子会社としたため総資産が860,757増加している
2015年3月期5,250,3643,238,748△674,520
出所:KDDI 有価証券報告書 第21期・第26期・第31期【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)
出所:KDDI 有価証券報告書 第21期・第26期・第31期【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)

資本参加の条件

資本参加の条件
科目概要備考
取得の相手Liberty Global, Inc.グループLGI International, Inc.とLGJ Holdings LLCの2社が持分を保有していた
取得対象米国LLC3社の持分の全部Liberty Global Japan II/Liberty Japan/Liberty Jupiterの3社
取得の法的形式現金を対価とする持分の取得3社は米国LLCのため株式が存在せず、株数の表記はない
譲渡契約の締結日2010年1月25日2010年2月12日に修正契約を締結している
持分取得日2010年2月19日取得後、3社はKDDI International Holdingsほかへ社名を変更した
取得価額361,655百万円3社の内訳は287,849百万円・38,418百万円・35,387百万円
取得に係る支出362,534百万円連結キャッシュ・フロー計算書の金額で、取得諸経費を含む
取得資金の調達方法自己資金及び借入金等有利子負債は1兆967億円となり、前期末から2,218億円増加した
承継したJ:COM株式数2,592,511株関係会社株式2,133,797株、処分信託305,810株、管理信託152,904株
議決権所有割合30.9%2010年3月31日現在のJ:COM自己株式を除く総議決権数に基づく
議決権を行使できない株式458,714株取得より前に信託銀行へ信託譲渡され、議決権行使に関与できない
取得前後の持分比率0%→100%3社いずれも異動前0%、異動後100%となった
会計上の取扱い持分法適用関連会社連結子会社とはせず、単体では関係会社株式336,794百万円に計上
対象会社株式会社ジュピターテレコム1995年1月設立の国内最大手MSO。資本金117,242百万円
対象会社の上場市場ジャスダック証券取引所2005年3月上場。発行済株式総数は6,940,110株
対象会社の顧客基盤327万世帯2009年12月末の総加入世帯数
取得の理由戦略的パートナーシップの構築FMBC(固定・移動・放送の融合)のサービスをCATV顧客へ広げる
取得後の中間持株会社4社を清算2011年3月期に清算し、清算所得法人税49,177百万円を未払金に計上
出所:KDDI 有価証券報告書 第26期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】【業績等の概要】【関係会社の状況】 / 第27期(2011年3月期)【主な資産及び負債の内容】
出所:KDDI 有価証券報告書 第26期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】【業績等の概要】【関係会社の状況】 / 第27期(2011年3月期)【主な資産及び負債の内容】
参考文献

参考文献

参考
  • KDDI 適時開示「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
  • KDDI 適時開示「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加における住友商事株式会社との協力について」
  • KDDI 有価証券報告書「第26期(2010年3月期)【経営上の重要な契約等】【業績等の概要】【関係会社の状況】【沿革】」
  • KDDI 有価証券報告書「第27期(2011年3月期)【主な資産及び負債の内容】【業績等の概要】」
  • KDDI 有価証券報告書「第29期(2013年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • KDDI 有価証券報告書「第21期・第26期・第31期【主要な経営指標等の推移】」

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