住信SBIネット銀行の設立(2005年・SBIHDの決断)

更新:
論点 銀行業へ折半出資で参入するか
SBIHD:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
住友信託銀行との折半出資で銀行業へ入り、連結子会社にはしなかった選択

何をなぜ決めたか:住友信託銀行との折半出資で銀行業へ入り、連結子会社にはしなかった選択

概要

2005年10月、SBIホールディングスは住友信託銀行との間で、証券業務と親和性の高い「新ネット銀行」の設立について基本合意した。2006年4月に折半出資の設立準備会社である株式会社SBI住信ネットバンク設立準備調査会社を東京都港区に設け、2007年3月末の資本金は9,000百万円、SBIの議決権の所有割合は50.0%だった。

同社は2007年9月11日に住信SBIネット銀行株式会社へ商号を変更し、同月18日に金融庁から銀行営業免許を取得、24日に営業を開始した。SBIの出資額は2007年3月期に6,997百万円、2008年3月末の関係会社株式で12,497百万円となった。

背景

SBIはイー・トレード証券を核にネット証券で首位を確立していたが、預金と決済を担う銀行機能を自前では持たなかった。わが国最大の金融商品ディストリビューターを目指すという課題のもとで、住友信託銀行との多面的提携、2007年度上期のネット銀行の営業開始、あいおい損害保険との損害保険会社の共同設立が同時に準備されていた。証券・銀行・保険を一体で抱える金融コングロマリットの構想の中に、このネット銀行は置かれていた。

内容

提供するのは預金・資金決済・融資・資産運用をそろえたフルバンキングサービスで、議決権の所有割合は50.0%。連結子会社とはせず、持分法適用関連会社として扱った。資本金は9,000百万円から20,000百万円、22,500百万円、25,000百万円と増資を重ね、2011年3月末に31,000百万円に達した。SBIが持つ関係会社株式も23,497百万円まで積み上がった。

株式は相互に持ち合った。SBIは住友信託銀行株式8,630,000株を保有し、2006年3月末の貸借対照表計上額は11,754百万円。住友信託銀行はSBI株式134,000株・所有割合1.09%で大株主に並んだ。

含意

預金総残高は2010年3月末の1兆1,938億円から2013年3月末の2兆6,910億円へ、口座数は75万3千から164万7千へ伸びた。単体の最終損益は開業3期目にあたる2010年3月期に2,316百万円の黒字へ転じ、2012年3月期には5,165百万円となった。50.0%の持分は2023年3月の同行の東証スタンダード市場上場まで動かず、上場時の一部売却で36.3%へ下がった。2025年5月29日にはNTTドコモと三井住友信託銀行との基本契約により、保有する全株式の譲渡が決まっている。

いつ何が起きたか 7件
考察:銀行を持たず、銀行を使う
考察

考察:銀行を持たず、銀行を使う

この判断の眼目は、銀行を持つことではなく、銀行を自らの連結の外に置いたまま銀行機能を得たことにあったといえる。出資は折半で議決権の所有割合は50.0%、連結子会社にはせず持分法適用関連会社にとどめた。証券口座に滞留していた資金へ預金と決済という出口を与えながら、銀行が抱える巨大な資産と負債、そして自己資本規制の重みは自社の貸借対照表に載せない。業態の壁を越える費用を相手方と分け合い、顧客基盤だけを共有する構えで、ネット証券の伸びをそのまま銀行の伸びへ写し取る設計になっていた。

もっとも、折半という均衡が永続したわけではない。50.0%は2023年3月の同行の上場まで動かず、上場時の一部売却で36.3%へ下がり、2025年5月には保有する全株式を譲渡する契約が結ばれた。合弁は解かれ、SBIに残るのは業務提携という関係だけになる。18年をかけて育てた銀行を、ついに支配せず、最後は手放すという結末は、この判断が当初から「銀行を持つこと」ではなく「銀行を使うこと」を狙っていたことの裏返しなのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

SBIHD:住信SBIネット銀行の預金総残高と口座数

預金総残高(億円)口座数(万口座)
SBIHD:住信SBIネット銀行の預金総残高と口座数
(億円) 預金総残高口座数(万口座) 備考
2010年3月期 11,93875.3 預金・口座数ともこの1年で約2倍に拡大し、当初計画を上回った
2011年3月期 15,524104.9 2011年2月に100万口座を突破した
2012年3月期 22,827136.9
2013年3月期 26,910164.7
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第12期〜第15期(財政状態及び経営成績の分析)
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第12期〜第15期(財政状態及び経営成績の分析)

SBIHD:SBIの保有株式と住信SBIネット銀行の資本金

関係会社株式(SBI単体)(百万円)
SBIHD:SBIの保有株式と住信SBIネット銀行の資本金
(百万円) 関係会社株式(SBI単体)住信SBIネット銀行の資本金 備考
2007年3月期 6,9979,000 設立準備調査会社への出資。議決権の所有割合は50.0%
2008年3月期 12,49720,000 2007年9月に開業。増資の引受けで保有株式が5,500増えた
2009年3月期 14,99722,500
2010年3月期 17,49725,000
2011年3月期 23,49731,000 資本金はこの後2025年3月期まで31,000百万円で変わらない
2012年3月期 23,49731,000
2013年3月期 23,49831,000
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9期〜第15期(関係会社の状況、有価証券明細表の関係会社株式)
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9期〜第15期(関係会社の状況、有価証券明細表の関係会社株式)

SBIHD:住信SBIネット銀行の資産合計と損益

経常収益(百万円)
SBIHD:住信SBIネット銀行の資産合計と損益
(百万円) 資産合計経常収益当期純損益 備考
2009年3月期 647,87411,626△3,699 純資産合計は11,570。開業2期目で最終赤字
2010年3月期 1,248,64020,7382,316 開業3期目で黒字化。純資産合計は26,628
2011年3月期 1,696,18929,0543,528
2012年3月期 2,378,38634,6165,165 純資産合計は43,403。税引前当期純利益は5,611
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第11期〜第14期(重要な関連会社の要約財務情報)
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第11期〜第14期(重要な関連会社の要約財務情報)

合弁の条件

合弁の条件
科目 概要 備考
合弁の相手方 住友信託銀行株式会社 現・三井住友信託銀行。証券業務と親和性が高い相手として選ばれた
基本合意 2005年10月 「新ネット銀行」の設立に関する基本合意。以後、設立準備を進めた
設立準備会社の設立 2006年4月 商号は株式会社SBI住信ネットバンク設立準備調査会社。本店は東京都港区
商号変更 2007年9月11日 設立準備調査会社から住信SBIネット銀行株式会社へ
銀行営業免許 2007年9月18日 金融庁から取得した
営業開始 2007年9月24日 開業は当初掲げた2007年度上期の予定どおりだった
事業の内容 フルバンキングサービス 預金・資金決済・融資・資産運用を提供するインターネット専業銀行
議決権の所有割合 50.0% 住友信託銀行との折半出資。2022年3月期まで50.0%が続いた
会計上の取扱い 持分法適用関連会社 連結子会社とはせず、2025年3月期まで持分法適用関連会社であり続けた
設立時の資本金 9,000百万円 2007年3月末。20,000・22,500・25,000と増資し2011年3月末に31,000百万円
SBIの出資額 6,997百万円 2007年3月期の投資有価証券の取得による支出に含まれる設立時の払込額
SBIの保有株式の帳簿価額 23,498百万円 2013年3月末の関係会社株式。増資の引受けで積み上がった
相互保有(SBI→住友信託銀行) 8,630,000株 2006年3月末の貸借対照表計上額は11,754百万円
相互保有(住友信託銀行→SBI) 134,000株 2006年3月末の所有割合1.09%で大株主に並んだ
上場に伴う持分の低下 36.3% 2023年3月の上場時に一部を売却し、約107億円の売却益を計上した
全株式の譲渡 2025年5月29日 NTTドコモ・三井住友信託銀行との基本契約。自己株式取得を通じて譲渡する
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8期(2006年3月期)〜第10期(2008年3月期)【沿革】【関係会社の状況】、第25期(2023年3月期)、第27期(2025年3月期)【重要な後発事象】
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8期(2006年3月期)〜第10期(2008年3月期)【沿革】【関係会社の状況】、第25期(2023年3月期)、第27期(2025年3月期)【重要な後発事象】
参考文献

参考文献

参考
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第8期(2006年3月期)【沿革】【事業等のリスク】【対処すべき課題】」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第9期(2007年3月期)【沿革】【関係会社の状況】【連結キャッシュ・フロー計算書】」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第10期(2008年3月期)【沿革】【事業の内容】【関係会社の状況】」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第11期〜第14期(重要な関連会社の要約財務情報)」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第12期〜第15期(財政状態及び経営成績の分析)」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第25期(2023年3月期)【沿革】【経営成績等の状況】」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書「第27期(2025年3月期)【重要な後発事象】」

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