住信SBIネット銀行の設立とネット銀行への参入

ネット証券で首位に立った金融グループは、なぜ住友信託と組んで自前の銀行を持とうとしたのか

更新:

時期 2005年10月
意思決定者 北尾吉孝氏 SBIホールディングス 代表取締役執行役員CEO
論点 総合金融圏の構築と業態の拡張
概要
2005年10月、SBIホールディングスは住友信託銀行と折半出資でインターネット専業銀行の設立を発表し、2007年9月に住信SBIネット銀行を開業した。ネット証券に続いて銀行業へ踏み出し、証券・銀行・保険を束ねる総合金融グループへの拡張を進めた経営判断。
背景
SBIはイー・トレードを核にネット証券で国内首位を固めつつあったが、決済や預金を担う銀行機能を自前で持たなかった。相手方の住友信託銀行は長銀統合の破談やUFJ信託買収の白紙撤回を経て、三大メガバンクの傘下に入らない独立路線の突破口を探していた。
内容
両社は出資金を折半し、企業向け融資や信託業務まで手掛けるネット銀行を立ち上げた。あわせてグループ間で相互に株式を持ち合い、住友信託の森田豊社長は会見でメガバンクとは一線を画す「第四の軸」でありたいと述べた。2007年9月の開業後、住宅ローンを軸に個人取引を伸ばした。
含意
SBIはネット証券に銀行を接ぎ、後の「第4のメガバンク」構想や暗号資産事業へ広がる総合金融圏の土台を得た。住信SBIネット銀行は住宅ローンで国内首位級に育ち、2023年に単独で東証へ上場した。
筆者の見解

筆者見解

SBIの強みは、単体の事業を勝たせることより、証券・銀行・保険・投資を一つの経済圏として編み合わせる設計にあったといえる。住信SBIネット銀行はその設計図の初期に置かれた一手で、証券口座にとどまっていた顧客の資金に、預金と住宅ローンという出口を与えた。銀行を借りるのでなく自前で持つという選択が、後年の地銀連合や暗号資産事業まで射程を伸ばす前提になっていた。

一方で「第四の軸」という理念が、そのままの形で実を結んだとは言い切れない。住信SBIネット銀行は2023年に単独で上場し、資本の面ではグループの一子会社という位置づけへ収れんした。メガバンクへの対抗軸という当初の物語より、住宅ローンとテクノロジーで稼ぐ独立した銀行としての姿が前に出ている。理念が事業の現実にどう着地したのかは、なお見届ける段階にあるとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

ネット証券の首位が欠いていた銀行機能

SBIホールディングスは1999年に参入したイー・トレードを核に、オンライン株式取引で口座数を伸ばし、国内ネット証券の首位を固めつつあった。だが証券と投資が事業の中心で、預金や決済を担う銀行機能を自前では持たなかった。顧客の資金を証券口座の内側にとどめ、住宅ローンや預金までグループ内で受け止めるには、銀行免許を持つ子会社をもう一つ抱える必要があった[1]

相手方・住友信託の独立路線

組む相手の住友信託銀行も、岐路に立っていた。1998年に決めた日本長期信用銀行との統合は同年のうちに破談となり、2004年に発表したUFJ信託銀行の買収も、三菱東京グループとの経営統合によって白紙に戻った。信託単独での生き残りを疑う声が業界に強まるなか、住友信託はメガバンクの傘下に入る選択肢を断ち、独立を貫く突破口を探していた[2]

決断

折半出資と「第四の軸」

2005年10月25日、両社はインターネット専業の新銀行を共同で設立すると発表した。出資金は折半とし、2007年度中の開業をめざした。従来のネット銀行が個人向けを主体としたのに対し、この新銀行は企業向けの融資や信託業務まで手掛ける構えであった。あわせて両社はグループ間で相互に株式を持ち合い、提携を資本の関係にまで踏み込ませた[3]

住友信託の森田豊社長は会見で、三菱UFJ・みずほ・三井住友の三大メガバンクとは一線を画す「第四の軸」でありたいと語った。複合企業化へ突き進む巨大銀行への対抗軸を、証券に強いSBIと信託に強い住友信託が持ち寄って描く構図であった。北尾吉孝氏にとっては、ネット証券に銀行を接ぐことでグループの金融圏を一段広げる布石でもあった[4]

結果

住宅ローンを軸にした急成長

住信SBIネット銀行は2007年9月に開業した。実店舗を持たない身軽さを武器に住宅ローンへ資源を集め、2023年3月期の実行額は約1.5兆円と国内シェアの5%超に達した。2016年からは日立製作所と組んでAIによる住宅ローン審査の実証を始め、少人数で大量の案件をさばく体制を築いた。ネット証券から始まったSBIの経済圏に、預金と決済の受け皿が加わった[5]

単独上場と総合金融圏の一角へ

2023年、住信SBIネット銀行は東証へ上場を果たした。上場時の時価総額は2000億〜3000億円と、上位地銀と肩を並べる水準であった。SBIにとって銀行は、後の「第4のメガバンク」構想で地方銀行と組む際の中核インフラとなり、証券・銀行・保険・暗号資産へ広がる総合金融圏の一角を占めた。2005年に住友信託と描いた「第四の軸」の構想は、形を変えて根を張ったとみることができる[6]

出典・参考
  • 週刊東洋経済 2005年11月5日号「住友信託、SBIグループとネット銀行設立へ “非”メガバンク路線の成算」
  • 週刊東洋経済 2023年4月22日号「住信SBIネット銀行 『1年越し』上場の誤算」
  • 週刊東洋経済 2023年7月15日号「時価総額は2000億〜3000億円 住信SBI、楽天ネット銀行の快進撃」
  • SBIホールディングス 有価証券報告書(2007年3月期・連結)

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