SBIホールディングス ソフトバンクからの資本独立 資本の切り離しとSBIブランドの確立

更新:

時期 2005年7月
当時の社長 北尾吉孝
論点 資本独立とブランド確立
何をなぜ決めたか
概要

2005年7月、ソフトバンク・インベストメントは商号を"SBIホールディングス"へ改め持株会社体制へ移行した。2006年8月、議決権の26.6%を保有していたソフトバンクが完全子会社ソフトバンク・エーエム名義の保有株を手放し、両社の資本関係は消滅する。孫正義氏の企業グループの一員から、北尾吉孝氏が率いる独立した金融グループへ転じた経営判断である。

背景

SBIは1999年7月、孫正義氏の依頼を受けた北尾吉孝氏が、ソフトバンク・ファイナンスの子会社としてベンチャー・キャピタル事業のために設立した会社である。上場と度重なる株式分割を経ても資本の綱は残り、2006年3月末のソフトバンク側の議決権比率は26.6%、その全額が完全子会社ソフトバンク・エーエムを通じた間接所有だった。そのソフトバンクは2006年3月にボーダフォン日本法人の1兆7,500億円での買収を発表し、同年4月に子会社化して有利子負債を急拡大させていた。免許事業である金融を営む側にとって、株価と信用力が相手方と連動する関係は制約になっていた。

内容

2006年7月31日の取締役会が、上限1,111,000株・49,995百万円の自己株式取得を決議した。取得期間は翌8月1日の1日限りで、実際に取得したのは1,047,900株、取得価額の総額は47,155百万円、1株当たり45,000円だった。

ソフトバンク・エーエムが保有していた3,245,899株は同じ月にすべて手放され、ソフトバンクとの資本関係は消滅し、その持分法適用関連会社からも外れた。自己株式は1,109,186株まで積み上がり、2007年3月末には発行済株式総数の8.95%を握る大株主第1位が自社となった。

含意

株主構成は1年で塗り替わった。ソフトバンクを含む「その他の法人」は30.93%から4.25%へ落ち、外国法人等は19.45%から29.87%へ、個人その他は42.58%へ上がった。北尾吉孝CEOは資本関係の解消の効果を 『株価の相関関係の解消や、より柔軟な財務戦略・事業戦略の展開が可能になるものと認識しております』 と記し、同時にソフトバンクとは双方折半出資の合弁会社を中核として事業上の友好関係を維持する方針を示している。以後のネット証券・ネット銀行・地方銀行連携・暗号資産へ広がるSBI独自の路線は、この資本独立から始まった。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

金融子会社の独立が意味したもの

この判断の核心は、成長した金融子会社が、大株主の信用力と戦略から自らを切り離した点にある。ソフトバンクにとってSBI株の処分は、ボーダフォン日本法人の買収で膨らんだ有利子負債を圧縮する財務上の必要から来ていた。一方の北尾吉孝氏にとっては、免許事業である金融を営むうえで、過大な借入を抱える相手に議決権の26.6%を握られていること自体が制約だった。売り手の資金需要と買われる側の独立志向が、47,155百万円の自己株式取得という一つの取引のなかで一致した点に、この決別の特徴がある。

もっとも、資本の分離は関係の断絶にはつながらなかった。孫正義氏と北尾吉孝氏は決済や投資で連携を続け、資本関係が切れたのと同じ2006年8月には、双方折半出資の合弁会社設立に向けた協議開始も公表されている。独立して北尾吉孝氏が率いたSBIホールディングスは、ネット証券・ネット銀行を軸に地方銀行との連携、暗号資産、半導体へと事業を広げ、連結売上高は2025年3月期に1兆4,000億円を超えた。ソフトバンクの一金融子会社という出自から離れ、自らの路線を選び取った——2005年から2006年のこの決断が、その後のSBIの姿を決める分かれ道だったとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
資本独立の条件

資本独立の条件

科目 概要 備考
独立前のソフトバンクの議決権比率 26.6% 全額が完全子会社ソフトバンク・エーエムを通じた間接所有。2006年3月31日現在
独立前のソフトバンク側の所有株式数 3,245,899株 発行済株式総数に対する割合は26.40%。名義はソフトバンク・エーエム
自己株式取得の決議日 2006年7月31日 取締役会決議。経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行が目的
取得期間 2006年8月1日 決議の翌日1日限り
決議した取得株式数の上限 1,111,000株 取得価額の総額の上限は49,995百万円
取得した自己株式数 1,047,900株 1株当たり45,000円。決議枠に対する当事業年度末の未行使割合は5.7%
取得価額の総額 47,155百万円 連結キャッシュ・フロー上の自己株式の取得による支出は47,165百万円
取得後の自己株式数 1,109,186.96株 発行済株式総数の8.95%。2007年3月末の大株主第1位
資本関係の解消 2006年8月 ソフトバンクの持分法適用関連会社から外れ、その他の関係会社ではなくなった

出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8期(2006年3月期)【関係会社の状況】【大株主の状況】、第9期(2007年3月期)【自己株式の取得等の状況】【沿革】

ソフトバンクの持株比率と株主構成の推移

SBIホールディングス:ソフトバンクの持株比率と株主構成の推移

(%) ソフトバンクその他の法人外国法人等個人その他 備考
2006年3月期 26.430.9319.4527.71 議決権比率では26.6%。名義はソフトバンク・エーエム
2007年3月期 04.2529.8742.58 8月に資本関係が消滅。個人その他には自己株式8.95%を含む
2008年3月期 04.1524.1646.76
2009年3月期 01.3444.1539.3
2010年3月期 01.2345.1936.25
2011年3月期 00.9745.4732.77
2012年3月期 01.3844.9236.34
ソフトバンクの持株比率
ソフトバンク(%)

出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8〜14期(2006年3月期〜2012年3月期)【所有者別状況】【大株主の状況】

発行済株式総数と自己株式数の推移

SBIホールディングス:発行済株式総数と自己株式数の推移

(株) 発行済株式総数自己株式数 備考
2002年9月期 335,849.15− 決算期変更前の9月決算
2003年3月期 336,473.11− 決算期変更により2002年10月から2003年3月までの6か月の変則決算
2004年3月期 2,321,226.94− 2004年1月に1株を3株へ分割
2005年3月期 8,542,343.78− 2004年10月に1株を3株へ分割
2006年3月期 12,290,691.8961,196.89
2007年3月期 12,399,171.011,109,186.96 1,047,900株を47,155百万円で取得。自己株式が大株主第1位となる
2008年3月期 12,435,284.011,109,244.01
2009年3月期 16,768,73337,661
2010年3月期 16,782,29114,621
2011年3月期 19,944,01814,621
2012年3月期 22,451,303371,489
自己株式数
自己株式数(株)

出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9期・第14期(2007年3月期・2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】、第8〜14期【所有者別状況】

純資産額と総資産額の推移

SBIホールディングス:純資産額と総資産額の推移

(百万円) 純資産額総資産額 備考
2002年9月期 23,62239,092 決算期変更前の9月決算
2003年3月期 19,11129,273 6か月の変則決算
2004年3月期 47,464396,644
2005年3月期 129,419755,004
2006年3月期 268,1221,331,643
2007年3月期 346,6401,367,221 自己株式の取得47,155百万円は純資産の控除項目として計上
2008年3月期 387,7661,219,247
2009年3月期 419,3381,079,233
2010年3月期 428,6151,229,939
2011年3月期 456,9821,293,606
2012年3月期 468,5791,663,814
純資産額と総資産額
純資産額(百万円)

出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9期・第14期(2007年3月期・2012年3月期)【主要な経営指標等の推移】(連結・日本基準)

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参考文献
出典・参考

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