米リップルとの提携(2016年・SBIHDの決断)

更新:
論点 ブロックチェーンに先行投資するか
SBIHD:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
提携を足がかりとした暗号資産事業への参入

何をなぜ決めたか:提携を足がかりとした暗号資産事業への参入

概要

2016年、SBIホールディングスは国際送金基盤を開発する米リップルへ出資し、同年5月18日に合弁会社SBI Ripple Asiaを設立した。出資比率はSBIが60%、リップルが40%で、日本を含むアジア地域を対象に、リップルの分散台帳技術を用いた決済基盤を金融機関へ提供する体制を組んだ。

リップル本体へもFinTechファンドを通じて11.3%を出資し、外部の筆頭株主となった。並行して仮想通貨の交換・取引を担うSBIバーチャル・カレンシーズ(現SBI VCトレード)を同年11月に設立し、証券・銀行に続く柱として暗号資産・ブロックチェーン事業へ参入した経営判断。

背景

1999年の株式売買委託手数料の自由化から続いた値下げ競争でネット証券の収益は細り、口座数が増えても収益が連動しない構造が露わになっていた。SBIは2015年12月にFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合を設立し、出資約束金総額300億円程度を見込んで金融を変える技術への先行投資を始めた。

出資者には横浜銀行・足利銀行・山陰合同銀行など約20行の地方銀行が名を連ね、投資先の技術を金融機関と共同で検討する体制を組んだ。リップルへの出資も、このファンドがブロックチェーン技術の分野で選んだ投資先の一つだった。

内容

合弁の下に2016年10月、内外為替一元化コンソーシアムを発足させた。会長行をりそな銀行、事務局をSBI Ripple AsiaとSBIホールディングスが務め、参加金融機関は56行に広がった。米リップルの技術「xCurrent」を載せた送金基盤「RCクラウド2.0」を2017年12月に構築し、2018年3月にはこれに接続するスマートフォン向け送金アプリ「Money Tap」を発表した。

交換業の側では、SBIバーチャル・カレンシーズが2017年9月29日に仮想通貨交換業の登録を受け、2018年1月30日にXRPの試験販売を一部顧客に限って始めたうえで、同年6月に取引サービス「VCTRADE」を開いた。

含意

暗号資産事業は2022年3月期に報告セグメントとして独立し、収益551億円・税引前利益35億円を計上した。翌期は市況の低迷と海外取引先の破綻で184億円の税引前損失に沈んだが、2025年3月期には収益808億円・税引前利益212億円といずれも過去最高を更新した。

米リップル株は外部筆頭株主として約9%を保有し続け、2025年3月にはSBI VCトレードが国内で初めてステーブルコインUSDCの取り扱いを始めた。証券・銀行・保険に続く収益源が加わった。

いつ何が起きたか 9件
考察:インフラの層から先に押さえる
考察

考察:インフラの層から先に押さえる

この判断の芯は、暗号資産そのものへの投機ではなく、送金・取引・保管というインフラの層を先に押さえたことにあると推察される。合弁の出資比率60%は、技術を持つ相手に主導権を渡さず、アジアでの事業設計をSBI側に残すための比率であり、リップル本体への11.3%の出資は、その技術が国際送金の標準になったときに果実を受け取るための布石でもあった。国内の銀行を集約したコンソーシアムも、単独では動かない送金インフラの入れ替えを、業界の合意という形に載せ替えるための装置だったといえる。

もっとも、この事業の収益はなお暗号資産の市況に左右され、2023年3月期の税引前損失と2025年3月期の過去最高益の振れ幅がそれを物語っている。国際送金の置き換えという当初の構想が銀行の実務をどこまで動かしたかについても、評価はまだ定まっていない。交換業と送金基盤のどちらが収益源になるのかも、外からは判じにくいままである。ステーブルコインや証券のデジタル化と接続しながら、この収益源が相場依存をどこまで脱せるかは、これからの検証に委ねられている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 2表

数字で見る

図と表

SBIHD:暗号資産事業の収益と税引前利益の推移

収益(百万円)税引前利益率(%)
SBIHD:暗号資産事業の収益と税引前利益の推移
(百万円) 収益税引前利益 備考
2022年3月期 55,1063,518 報告セグメントとして独立した最初の期
2023年3月期 30,320△18,429 市況の低迷と海外取引先の破綻で税引前損失。収益は前期比45.0%減
2024年3月期 57,1428,428 黒字へ復帰
2025年3月期 80,79721,220 英B2C2社の伸長と取引所の顧客基盤拡大で、収益・利益とも過去最高
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第25期(2023年3月期)・第27期(2025年3月期)【セグメント情報】
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第25期(2023年3月期)・第27期(2025年3月期)【セグメント情報】

出資と合弁の条件

出資と合弁の条件
科目 概要 備考
合弁会社 SBI Ripple Asia株式会社 日本を含むアジア地域を対象に、分散金融技術を活用した決済基盤を提供する
設立日 2016年5月18日 2016年3月期の決算説明会の時点では5月に設立予定と示していた
合弁への出資比率 60% 残る40%を米リップルが保有する
米リップルへの出資比率 11.3% 2017年3月期時点。2025年3月期時点では外部筆頭株主として約9%を保有
出資の原資 出資約束金総額300億円程度 2015年12月設立のFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合。約20行の地方銀行が出資
提供する決済基盤 リップルコネクト 中継銀行を通さないため、手数料の削減と取引時間の短縮が可能となる
内外為替一元化コンソーシアム 56行 2016年10月発足。会長行はりそな銀行、事務局はSBI Ripple AsiaとSBIホールディングス
仮想通貨交換業の登録 2017年9月29日 SBIバーチャル・カレンシーズが取得。2018年1月30日にXRPの試験販売を開始した
出所:SBIホールディングス 2017年3月期 決算説明会資料(2017年4月28日)/2016年3月期 決算説明会資料(2016年4月28日)
参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

免責事項およびポリシー