SBIホールディングス私設取引所(PTS)事業への参入——株式夜間取引から大阪デジタルエクスチェンジへ
- 概要
- 2007年8月、SBIホールディングスは傘下のSBIジャパンネクスト証券で株式の夜間私設取引システム(PTS)を開業し、参入1カ月で先行2陣営を上回る売買代金を集めた。北尾吉孝氏は当初から昼間市場の開設を公言し、この構想は2022年開業の大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)まで15年かけて引き継がれた経営判断。
- 背景
- 1998年12月の証券ビッグバンで取引所集中義務が撤廃されPTSが解禁されたが、先行したマネックス・カブドットコムの夜間市場は取引量が集まらず苦戦していた。米国では私設市場ECNがナスダック銘柄の4〜6割を約定し、既存取引所がECNを買収するほど市場間競争が進んでいた。
- 内容
- 約150万口座のSBIイー・トレード証券を核に6証券会社の連合を組み、ゴールドマン・サックスの資本参加も得て夜間PTSを開業した。
- 含意
- PTSの売買シェアは長く数%にとどまったが、取引インフラを持つ構想は消えず、2021年設立の大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が2022年6月に株式PTSを開業、2023年12月には日本初のセキュリティトークン二次流通市場『START』を開いた。東証一極への対抗軸は、デジタル証券という新しい市場で形になった。
筆者の見解
筆者見解
この判断の面白さは、単年度の損益では説明しにくい息の長さにある。夜間PTSは開業直後に首位へ立ったものの、市場全体でのシェアは長く数%にとどまり、『SBI取引所』が東証を脅かす日は来ていない。それでもSBIは取引の場を手放さず、ゴールドマン・サックスや三井住友フィナンシャルグループと組み替えながら、市場開設者の立場を15年にわたり保持し続けた。インフラは撤退すれば再取得が難しいという判断が、その底にあったとみることができる。
結果として花が開いたのは、株式そのものよりもセキュリティトークンという隣の市場であった。既存の取引所が上場株で築いた流動性の壁は厚く、正面からの競争では崩せない。だが新しい資産クラスには、まだ支配的な市場開設者がいない。夜間取引で『空いている時間』を突いた発想が、STでは『空いている資産』を突く形で繰り返されているといえる。STARTがどれだけの流動性を集めるかは、本稿の時点ではまだ答えが出ていない。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
- SBIホールディングス ニュースリリース(2008年10月28日)「「ジャパンネクストPTS」の昼間取引開始について~午前8時20分に始まるデイタイム・セッションのスタート~」
- SBIホールディングス 有価証券報告書(2008年3月期・連結)