ジャパンネクストPTS開業(2007年・SBIHDの決断)

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論点 私設取引システムに参入するか
SBIHD:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
米ゴールドマン・サックスとの折半出資で始めた私設取引システム(PTS)事業への参入

何をなぜ決めたか:米ゴールドマン・サックスとの折半出資で始めた私設取引システム(PTS)事業への参入

概要

2007年8月27日、SBIホールディングスと米ゴールドマン・サックスが折半出資で設立したSBIジャパンネクスト証券が、株式の夜間私設取引システム「ジャパンネクストPTS」の運営業務を開始した。取扱銘柄は国内証券取引所の上場銘柄から選んだ約4,000銘柄、取引時間は19時00分から23時50分まで、売買価格の決定は指値注文のみの顧客注文対当方式とした。

運営業務の認可は開業に先立つ2007年6月27日に金融庁から得ている。初日に取引を開始したのはゴールドマン・サックス証券とSBIイー・トレード証券の2社で、9月7日にGMOインターネット証券が加わった。

背景

1998年12月の証券取引法改正で取引所集中義務が撤廃され、取引所外での株式売買が解禁された。先行して開いた夜間市場は取引量が集まらず、流動性の確保が参入の最大の壁になっていた。そこで取ったのは、自社だけで市場をつくるのではなく複数の証券会社が参加する市場を目指し、広く証券会社に取引参加を呼びかけるという道である。世界最大手の投資銀行グループを折半出資の相手に選んだのも、注文の出し手を先に確保するためであった。

内容

運営会社はSBIジャパンネクスト証券準備株式会社として2006年11月に設立され、2007年3月の証券業登録完了と同時に現商号へ改めた。2007年2月に米ゴールドマン・サックスが資本参加し、SBIホールディングスと各50.0%を持つ形になる。開業にあたっては両社が2.5%ずつを拠出して証券5社へ各5.0%を譲渡し、オリックス証券・楽天証券・SBIイー・トレード証券・SBI証券・GMOインターネット証券が株主に加わった。SBIグループの議決権所有割合は47.5%となり、50%以下ながら実質的に支配しているとして持分法適用の非連結子会社に区分された。

含意

資本金は1,050百万円から2009年3月期に2,550百万円、2011年3月期に3,050百万円へ積み増され、2013年3月期には議決権所有割合52.8%で連結子会社となり、段階取得に係る差益2,762百万円を計上した。2008年10月には昼間のデイタイム・セッションも始めている。

東証一極の構図は崩れなかったが、取引の場を持つ構想は消えなかった。2021年4月1日に大阪デジタルエクスチェンジを設立し、2022年4月28日にPTS運営の認可を取得、2023年12月25日には日本初のセキュリティトークン二次流通市場「START」の売買を始めた。

いつ何が起きたか 10件
考察:値付けの場を誰が掌握するか
考察

考察:値付けの場を誰が掌握するか

この判断は、証券会社が新しい商品を売る話ではなく、売買の場そのものを自前で持つという選択だった。ネット証券として口座を伸ばすだけなら注文を取引所へ流していればよく、市場を開く必要はない。それでも折半出資で運営会社を立て、競合にもなりうる証券会社へ株式を各5.0%ずつ配ったのは、流動性は独占からは生まれないと見切ったからだろう。市場をつくる側に回るとは、参加者に主導権を分け渡すことでもあった。取引所に払う手数料を取り返す話ではなく、値付けの場を誰が握るかという話である。

もっとも、開いた場が育ったかは別の話である。ジャパンネクストPTSが連結子会社になるまでには開業から5期を要し、東証一極の構図を崩すには至らなかった。花が開いたのはむしろ隣の市場で、支配的な市場開設者がまだいないセキュリティトークンにこそ、後発が場を握る余地が残っていた。夜間という空いている時間を突いた発想が、STでは空いている資産を突く形で繰り返されているといえる。STARTが流動性を集めきるかは、まだ答えが出ていない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

SBIHD:SBIジャパンネクスト証券の資本金と議決権所有割合

資本金(百万円・%)議決権の所有割合(%)
SBIHD:SBIジャパンネクスト証券の資本金と議決権所有割合
(百万円・%) 資本金議決権の所有割合 備考
2007年3月期 1,05050 2006年11月に設立。2007年3月に証券業の登録を完了
2008年3月期 1,05047.5 2007年8月に取引開始。証券5社への譲渡でグループ47.5%(うち間接10.0%)
2009年3月期 2,55045.7 増資で資本金2,550百万円。うち間接所有10.0%
2010年3月期 2,55045.7 うち間接所有10.0%
2011年3月期 3,05047.4 本店を千代田区へ移転。うち間接所有10.4%
2012年3月期 3,05047.4 うち間接所有10.4%
2013年3月期 3,19052.8 連結子会社化。うち間接所有9.9%。段階取得に係る差益2,762百万円
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9〜15期(2007年3月期〜2013年3月期)【関係会社の状況】
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第9〜15期(2007年3月期〜2013年3月期)【関係会社の状況】

SBIHD:ブローカレッジ&インベストメントバンキング事業の推移

外部顧客への売上高(百万円)セグメント利益率(%)
SBIHD:ブローカレッジ&インベストメントバンキング事業の推移
(百万円) 外部顧客への売上高セグメント利益 備考
2005年3月期 45,39614,814
2006年3月期 80,22138,536
2007年3月期 65,42624,374
2008年3月期 67,67520,511 PTS開業の期。住宅不動産関連事業などの分離でセグメント区分が5つに増えた
2009年3月期 47,6485,714
2010年3月期 46,9869,374
2011年3月期 45,3746,123
2012年3月期 41,4853,607
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8〜14期(2006年3月期〜2012年3月期)【事業の種類別セグメント情報】【セグメント情報】
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第8〜14期(2006年3月期〜2012年3月期)【事業の種類別セグメント情報】【セグメント情報】

PTS事業への参入条件

PTS事業への参入条件
科目 概要 備考
運営会社の設立 2006年11月 SBIジャパンネクスト証券準備株式会社。2007年3月の証券業登録完了と同時に商号を変更
設立時の出資比率 各50.0% SBIホールディングスと米ゴールドマン・サックスの折半出資
米ゴールドマン・サックスの資本参加 2007年2月 資本参加の相手はザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インク
PTS運営業務の認可 2007年6月27日 認可を出したのは金融庁
取引開始 2007年8月27日 初日の参加はゴールドマン・サックス証券とSBIイー・トレード証券の2社
参加証券会社への株式譲渡 各5.0% SBIと米ゴールドマン・サックスが2.5%ずつを拠出。証券5社で計25.0%
取扱銘柄 約4,000銘柄 国内証券取引所に上場する銘柄のうち運営会社が指定したもの
取引時間 19時00分〜23時50分 売買価格の決定は顧客注文対当方式(指値注文のみ)
グループの議決権所有割合 47.5% 2008年3月期末。うち間接所有10.0%。2007年3月期末は50.0%
資本金 1,050百万円 2008年3月期末。2009年3月期に2,550百万円、2011年3月期に3,050百万円へ
会計上の取扱い 持分法適用の非連結子会社 議決権所有割合は50%以下だが実質的に支配しているため子会社とした
連結子会社化 2013年3月期 議決権所有割合52.8%(うち間接9.9%)。段階取得に係る差益2,762百万円
大阪デジタルエクスチェンジの設立 2021年4月1日 株式PTSを先に開き、セキュリティトークンのPTSを後から載せる構想
出所:SBIホールディングス アニュアルレポート2007「ジャパンネクスト証券によるPTS(私設取引システム)事業の開始について」/有価証券報告書 第9期(2007年3月期)・第10期(2008年3月期)・第15期(2013年3月期)【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考

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