SBIホールディングス 島根銀行との資本業務提携 複数の地方銀行への出資を重ねて拡大する地域金融連合の形成
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
-
2019年9月、SBIホールディングスは島根銀行との資本業務提携を皮切りに、地方銀行を一行ずつ資本で結ぶ「第4のメガバンク構想」を打ち出した。出資は相手方の同意のもとで第三者割当増資の引受けか既存株主からの取得により行い、比率も相手方の意向に沿って決める。中央から統べるのではなく、SBIの運用力とシステムを共通の基盤として供給し、各行の自立を残したまま連ねる分散型の連合を築く経営判断であった。
- 背景
-
低金利と人口減で地方銀行の収益基盤は細っていた。島根銀行は2020年3月期まで4期連続でコア業務純益の赤字を続け、同期は20億円を超える最終赤字となる。同行の鈴木良夫頭取は{q1}と語っている。
SBI側は金融商品仲介業やSBIマネープラザとの共同店舗を通じて地域金融機関との取引をすでに広げていたが、資本の関係は持たず、地域の顧客接点は薄かった。
- 内容
-
提携先は2020年4月の時点で島根・福島・筑邦・清水の4行。福島銀行へは第三者割当増資を11億円引き受け、既に保有していた分と合わせて議決権の19.25%を握った。筑邦銀行と清水銀行では、発行済普通株式総数の3%前後を既存株主から取得している。4行の株式は、2020年に設立した100%子会社のSBI地銀ホールディングスへ移した。提携先は2021年6月末に8行、2022年6月末に9行まで増え、経営資源の状況に鑑みた上限は10行程度と置かれた。
- 含意
-
持分法適用の関連会社から取り込む損益は、2019年3月期の1,116百万円の損失から2020年3月期に997百万円の利益へ転じ、2025年3月期には30,468百万円に達した。関連会社への投資の帳簿価額も、同じ期間に26,097百万円から334,143百万円へ膨らんでいる。地銀以外の投資も含む数字だが、資本で結んだ相手の損益がグループの利益に乗る構図はこの提携から始まった。2021年12月には新生銀行を子会社化して連合の中核となる銀行を得た一方、2025年12月に筑邦銀行が離脱し、参加する地銀は9行となった。
いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
一行ずつ資本で結ぶ、分散型の銀行連合という賭け
この判断の核心は、地方銀行の再生とSBI自身の成長を一つの構想の上で重ね合わせた点にある。低金利と人口減という同じ逆風が、地銀には収益の枯渇として、SBIには全国の顧客接点の不足として現れていた。北尾吉孝社長は、地銀を救う話としても、SBIが地域へ食い込む話としても語れる枠組みを選んだ。出資比率を相手方の意向に委ね、島根銀行から一行ずつ資本で結んでいく手法は、大型合併で一気に統合する従来の銀行再編とは異なる速度と手ざわりを持っていた。
もっとも、分散型の連合体という設計は、地銀の自立を残す点で受け入れられやすい半面、統括する力の弱さと裏表であった。3%前後の出資では議決の力を持てず、結び目は協業の実利にしかない。筑邦銀行の離脱は、資本で結んだだけの連合がほどけうることを示している。新生銀行という中核を得た今、SBIに残された課題は、10行を上限に想定した連携網を全国規模の一つの金融基盤へ練り上げられるかどうかにある。地方の金融をだれがどう支えるのか――人口が減り続ける日本で避けて通れないこの問いに、SBIの地銀連合は民間からの一つの答えを示している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
地域金融機関との戦略的資本・業務提携の条件
地域金融機関との戦略的資本・業務提携の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 出資の方法 | 第三者割当増資の引受け、既存株主からの取得、またはその両方 | 相手方の同意のもと、合意した株式数だけを取得する |
| 出資比率の決め方 | 相手方の意向に沿って判断する | 出資を伴わない「第4のメガバンク構想」への参加も受け入れる |
| 提携先の上限 | 10行程度 | 経営資源の状況に鑑みた想定。信用金庫・信用組合とは業務提携で広げる |
| 株式の保有主体 | SBI地銀ホールディングス | 2020年に設立したSBIグループの100%子会社。提携4行の株式を移管した |
| 提携先① 島根銀行 | 2019年9月 | 提携第1号。2019年12月にSBIマネープラザとの共同店舗を出店した |
| 提携先② 福島銀行 | 2019年11月11日 | 第三者割当増資を11億円引き受け、既保有分と合わせ議決権19.25% |
| 提携先③ 筑邦銀行 | 2020年1月17日 | 発行済普通株式総数の約3%を既存株主から取得した |
| 提携先④ 清水銀行 | 2020年2月18日 | 3%を上限に既存株主から取得。清水銀行もSBIの普通株式を取得した |
| 提携先⑨ 大光銀行 | 2022年5月12日 | 9行目。発行済株式の3%に相当する株式数を上限に取得する |
出所:SBIホールディングス 決算説明会資料(2020年4月28日・2022年5月27日)/Annual Report 2020
持分法適用の関連会社への投資と取込損益の推移
SBIホールディングス:持分法適用の関連会社への投資と取込損益の推移
| (百万円) | 関連会社への投資の帳簿価額 | 当期利益の当企業グループ持分 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2015年3月期 | 17,756 | △147 | |
| 2016年3月期 | 12,938 | △1,435 | |
| 2017年3月期 | 57,403 | △123 | |
| 2018年3月期 | 32,622 | △1,108 | |
| 2019年3月期 | 26,097 | △1,116 | |
| 2020年3月期 | 15,383 | 997 | 島根・福島・筑邦・清水の4行と提携。取込損益が黒字へ転じた |
| 2021年3月期 | 47,271 | 2,831 | 2021年6月末時点の戦略的資本・業務提携先は8行 |
| 2022年3月期 | 119,401 | 7,688 | 2022年6月末時点の戦略的資本・業務提携先は9行 |
| 2023年3月期 | 190,346 | 7,258 | |
| 2024年3月期 | 211,171 | 14,376 | |
| 2025年3月期 | 334,143 | 30,468 |
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第17〜27期(持分法で会計処理されている投資の注記・関連会社に対する投資)
持分法で会計処理されている投資と投資利益の推移
SBIホールディングス:持分法で会計処理されている投資と投資利益の推移
| (百万円) | 持分法で会計処理されている投資 | 持分法による投資利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2015年3月期 | 45,455 | 5,071 | |
| 2016年3月期 | 43,853 | 1,583 | |
| 2017年3月期 | 90,394 | 2,849 | |
| 2018年3月期 | 68,365 | 2,229 | |
| 2019年3月期 | 68,371 | 5,635 | |
| 2020年3月期 | 63,657 | 6,527 | 関連会社と共同支配企業を合わせた残高。地銀以外の投資も含む |
| 2021年3月期 | 103,807 | 9,458 | |
| 2022年3月期 | 129,141 | 6,822 | |
| 2023年3月期 | 199,882 | 6,376 | |
| 2024年3月期 | 222,010 | 14,513 | |
| 2025年3月期 | 345,353 | 29,474 |
出所:SBIホールディングス 有価証券報告書 第17〜27期(連結財政状態計算書・連結損益計算書)
同じ問いに直面した会社
同じ問いに直面した会社
参考文献
- SBIホールディングス 決算説明会資料「2020年3月期 決算説明資料」
- SBIホールディングス 決算説明会資料「2022年3月期 決算説明資料」
- SBIホールディングス アニュアルレポート「Annual Report 2020」
- SBIホールディングス アニュアルレポート「Annual Report 2021」
- SBIホールディングス 有価証券報告書「第24期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
- SBIホールディングス 有価証券報告書「第17〜27期(持分法で会計処理されている投資)」