この合弁の要点は、菓子という新しい分野に参入するときに、山崎製パンが技術も商標も自前で用意しなかったところにある。工場を建設して量を作る力はすでに持っていたから、足りないのは中身と名前であった。米ナビスコの技術と商標、商社の日綿実業の実務を借り、自社は製造と販路を出す——役割を分けたこの組み方は、参入の速さという点で理にかなっていたと推察される。販売店の棚をパン以外の商品でも埋めるという目的からすれば、ブランドが自社のものかどうかは二の次であった。
もっとも、借りた名前で押さえた場所は、貸し手の考えが変わればそこまでとなる。2016年、モンデリーズが日本での販売を自ら担うと決めた時点で、46年分の売り場は交渉の対象へ戻った。残ったのは"チップスター"のような自社ブランドと、ビスケットを量産できる設備と人であり、ヤマザキビスケットはそこから棚を取り直した。外部ブランドを借りる多角化は、入口を短くする代わりに出口を相手に委ねる。その両面が、この46年には収まっていると思われる。