東芝不動産の株式取得(2008年・野村不動産HDの決断)

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論点 商業・賃貸へ買収で事業を広げるか
野村不動産HD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
ジオ・アカマツの全株式と65%の持分取得による商業・賃貸ビル事業の拡張

何をなぜ決めたか:ジオ・アカマツの全株式と65%の持分取得による商業・賃貸ビル事業の拡張

概要

2007年に商業施設の企画・運営を手がける株式会社ジオ・アカマツの全株式を取得し、2008年には東芝から東芝不動産株式会社の株式65%を取得して連結子会社とした、上場後2年で続けて打った2件の買収。

背景

上場直前の2006年3月期は住宅事業が連結売上高の63%を占め、ビル事業は13%にとどまっていた。有報は2008年3月期の住宅分譲市場について、改正建築基準法の影響で供給戸数が減少するなか用地価格と建築費の高騰が販売価格を押し上げ、市場全体の契約率が低下傾向を示したと記している。住宅偏重の収益構成を薄める必要があった。

内容

ジオ・アカマツは2007年4月26日の取締役会決議で全株式を11億9,600万円で取得し、7月2日に引き渡し。東芝不動産は2008年7月22日の基本合意を経て11月27日の取締役会で取得を決議し、12月25日に19,853,600株を798億円で取得してNREG東芝不動産へ商号変更した。

含意

東芝グループ各社を主要テナントとする賃貸資産を傘下に入れ、CRE(企業保有不動産)戦略のリーディングケースと位置付けた。取得完了はリーマンショックの3カ月後にあたり、直後の2009年3月期に経常利益は前期比で約6割減となった。

いつ何が起きたか 8件
考察:買った床と、借りた時間
考察

考察:買った床と、借りた時間

二つの買収に共通するのは、自分で用地を仕入れて造るという同社本来のやり方では届かない場所を、会社ごと取得した点にあるだろう。商業施設の企画・運営は経験の蓄積が要る仕事であり、東芝グループの社屋や商業施設は市場に出回る性質の資産ではない。上場で得た調達力の最初の使い道が、開発用地ではなく事業会社であったことには、住宅分譲の伸びだけでは持たないという当時の判断が表れているといえる。

もっとも、タイミングは選べなかった。798億円の支払いが確定した数カ月後に金融危機が来て、利益は大きく減少する。それでも賃貸資産は毎月の賃料を生み続け、市況の回復を待つ時間を会社に与えた。買収がうまくいったかどうかを、取得直後の損益で測るのは早すぎたのかもしれない。東芝との提携は14年で解消され、買った2社はいずれも野村不動産の名の下に収まった。外から迎えた会社をどこまで自立させ、どの時点で溶かすのか——この2件は、買収後の距離の取り方についても一つの答えを残したとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

野村不動産HD:有形固定資産と総資産の推移

有形固定資産(百万円)有形固定資産以外の資産(百万円)
野村不動産HD:有形固定資産と総資産の推移
(百万円) 有形固定資産総資産 備考
2006年3月期 153,170689,287
2007年3月期 174,992836,303 2006年10月に東京証券取引所市場第一部へ上場した期
2008年3月期 195,271891,700
2009年3月期 575,7611,385,531 東芝不動産の連結により固定資産が385,646百万円増加した
2010年3月期 626,2681,405,424
2011年3月期 732,5731,474,331
2012年3月期 709,7161,402,624
2013年3月期 737,3991,369,949
2014年3月期 716,0931,313,887
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第3〜11期(連結貸借対照表)
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第3〜11期(連結貸借対照表)

野村不動産HD:ビル事業(現・賃貸事業)の推移

野村不動産HD:ビル事業(現・賃貸事業)の推移
(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2006年3月期 44,9327,158
2007年3月期 46,9128,372
2008年3月期 51,8869,414
2009年3月期 84,60315,769 NREG東芝不動産の収益は2009年1月からの3か月分だけが入る
2010年3月期 88,40021,587
2011年3月期 93,02622,644
2012年3月期 100,14825,345
2013年3月期 103,82723,335 区分名をビル事業から賃貸事業へ変更した期
2014年3月期 94,80427,034
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第3〜11期(事業の種類別セグメント情報・セグメント情報等)
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第3〜11期(事業の種類別セグメント情報・セグメント情報等)

2件の買収の条件

2件の買収の条件
科目 概要 備考
東芝不動産|取締役会決議 2008年11月27日 東芝と東芝グループ会社3社に株式譲渡契約、東芝に株主間契約を締結
東芝不動産|株式取得日 2008年12月25日 基本合意は同年7月22日
東芝不動産|取得株式数 19,853,600株 東芝不動産の発行済株式総数は30,544,000株
東芝不動産|取得価額 79,800百万円 連結開始時の株式の取得価額は付随費用等を含め82,420百万円
東芝不動産|取得後の所有割合 当社65.0%・東芝35.0% 株主間契約により不動産事業分野の戦略的提携関係を構築した
東芝不動産|連結開始時の資産 固定資産 283,181百万円 ほかに流動資産12,957百万円。のれんは4,711百万円
東芝不動産|連結開始時の負債 固定負債 150,893百万円 ほかに流動負債25,693百万円、少数株主持分41,843百万円
東芝不動産|のれんの償却 5年から20年の定額法 第4期までは5年間の定額法。当期から償却期間の幅を広げた
東芝不動産|商号変更 NREG東芝不動産 NREGはNomura Real Estate Groupの略。従業員は170名
東芝不動産|追加取得 2015年9月30日に30%を37,000百万円 共通支配下の取引。資本剰余金が16,937百万円増加し所有割合は95%へ
ジオ・アカマツ|株式取得 2007年7月に全株式を取得 商業施設の企画・設計、テナントリーシング、プロパティマネジメント
ジオ・アカマツ|取得価額 記載なし 有報は連結の範囲に加えた旨のみ。適時開示では1,196百万円
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第5期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】・第12期(2016年3月期)【企業結合等関係】
出所:野村不動産ホールディングス 有価証券報告書 第5期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】・第12期(2016年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 野村不動産ホールディングス「株式会社ジオ・アカマツの株式取得のお知らせ」(2007年4月26日)
  • 野村不動産ホールディングス・東芝「東芝不動産株式会社の株式一部売買による、野村不動産ホールディングス株式会社と株式会社東芝との不動産事業分野における提携関係の構築について」(2008年7月22日)
  • 野村不動産ホールディングス「東芝不動産株式会社株式の取得完了、および新社名、人事異動等について」(2008年12月25日)
  • 野村不動産ホールディングス「野村不動産グループ 株式会社ジオ・アカマツ 商号変更のお知らせ」(2020年8月21日)
  • 野村不動産ホールディングス 公式IR沿革ページ
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書(2008年3月期・連結/2009年3月期・連結)
  • 野村不動産ホールディングス 統合レポート2023
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第5期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第5期(2009年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第5期(2009年3月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第12期(2016年3月期)【企業結合等関係】」
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第4期(2008年3月期)【連結の範囲に関する事項】【業績等の概要】」
  • 野村不動産ホールディングス 有価証券報告書「第3〜11期(連結貸借対照表・セグメント情報)」

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