セメント価格を値上げ(2022年・太平洋セメントの決断)更新:2026/07/26論点数量より採算を優先する値決めに転換するか太平洋セメント:業績の推移売上高(億円)営業利益率(%)データ出所石炭サーチャージ撤回後の1トン3000円の直接転嫁何をなぜ決めたか:石炭サーチャージ撤回後の1トン3000円の直接転嫁概要石炭価格の急騰で13年ぶりの赤字を計上した太平洋セメントが、2022年から国内セメントの値決めを作り直した経営判断。石炭価格に連動するサーチャージ制度の導入をいったん表明したのち撤回し、1トン3000円の値上げと1年固定を選べる方式に改めた。2024年の26中期経営計画では『シェア重視から収益重視への転換』を明記した。背景国内のセメント価格は供給過剰によるシェア争いで1980年度から長く下落し、2015年時点でも太平洋セメントは4年前に掲げた1トン1000円の値上げを"道半ば"としていた。そこへ2022年、ロシアのウクライナ侵攻とG7のロシア産石炭禁輸が重なり、石炭市況は1年強前の約4倍に跳ね上がった。内容2022年6月10日、石炭が1トン200ドルを超えた分のコストの9割を自動転嫁し、2カ月ごとに価格を見直すサーチャージ制度を9月から導入すると表明。しかし8月9日に全面導入を撤回し、価格改定を10月へずらしたうえで、1トン3000円値上げして1年間固定する選択肢を生コンメーカー側に用意した。含意2023年度は国内販売数量が減少したにもかかわらず国内セメントの営業損失が369億円から14億円へ縮み、連結営業利益は565億円へ回復した。2024年度には国内セメントが148億円の黒字に転じている。ただし石炭のC&F調達価格も340ドルから150ドルへ下がり続けており、値上げの効果だけを取り出すことは難しい。いつ何が起きたか7件当時の取締役9名当時の取締役(2022年6月株主総会決議)不死原正文:社長北林勇一:副社長安藤國弘:副社長朝倉秀明:専務執行役員大橋徹也:専務執行役員小泉淑子:取締役江守新八郎:取締役振角秀行:取締役中野幸正:専務執行役員考察:撤回された制度が示したもの考察考察:撤回された制度が示したものいちばん語るのは、2カ月で引っ込めたほうの案である。石炭が1トン200ドルを超えた分の9割を自動転嫁し、2カ月ごとに値段を見直す——太平洋セメントが最初に出したのは、交渉そのものを仕組みに置き換える案であった。国内シェア約39%を占める会社でも、取引先の商習慣までは動かせなかったと推察される。もっとも、採算が戻ったことと値決めが変わったことは同じではない。国内輸入石炭の調達価格は340ドルから210ドル、150ドルへ下がり続け、営業損失の縮小はその追い風と重なっている。販売数量は1313万トン、1295万トン、1233万トンと落ち続けており、価格を通した分だけ数量が減少する関係も残ったままである。26中計が掲げた営業利益率10%以上に届くかどうかは、石炭が再び上がったときに同じ値段を保てるかにかかっている、といえる。Yutaka Sugiura, 2026年7月当時の取締役9名当時の取締役(2022年6月株主総会決議)不死原正文:社長北林勇一:副社長安藤國弘:副社長朝倉秀明:専務執行役員大橋徹也:専務執行役員小泉淑子:取締役江守新八郎:取締役振角秀行:取締役中野幸正:専務執行役員参考文献参考文献参考太平洋セメント 2023年度決算説明資料(2024年5月14日)太平洋セメント 2024年度決算説明資料太平洋セメント 26中期経営計画(2024年度〜2026年度)(2024年5月14日)太平洋セメント 有価証券報告書【沿革】太平洋セメント 有価証券報告書(連結)次に読む決断太平洋セメントの意思決定2000年太平洋セメント太平洋セメントエコセメントを事業化都市ごみ・産業廃棄物の受け入れによる廃棄物処理事業の確立2000年2015年太平洋セメント太平洋セメント米でオログランデ工場取得西海岸でのレディング工場の取得と、生コン・骨材までの追加買収2015年同じ問い:価格政策2017年ヤマトHDヤマトHD宅急便運賃の全面値上げ27年ぶりの価格改定と取扱総量の抑制による収益の立て直し2017年2013年九州電力九州電力川内1・2号機の再稼働申請全原発停止下での家庭向け料金値上げと、原子力復帰を先頭に据えた収支の立て直し2013年1924年日本セメント日本セメントセメント連合会を創設生産・販売数量と最低価格を業界で取り決める協定の主導1924年2007年アコムアコムグレーゾーン金利の消滅過払金返還への対応——崩れた収益モデルの再建2007年1969年明治製糖明治製糖精糖工業会への3割削減案精製糖業界への設備能力3割削減案の提出と、任意・補償方式への後退1969年×出所