東日本旅客鉄道 Suica軸の二軸経営へ転換 二期で六千七百億円を失った後の、二軸経営への組み替え

更新:

時期 2020年6月
当時の社長 深澤祐二
論点 鉄道需要の恒久的な減少への対応
何をなぜ決めたか
概要

2021年3月期に営業損失5,204億円・当期純損失5,779億円、翌2022年3月期にも949億円の純損失を計上し、二期合計で6,728億円を失ったことを受けた事業構造の組み替え。需要が感染症の前へ戻らないという前提に立ち、Suicaと生活サービスを鉄道と並ぶ軸として扱う組織へ再編した。

背景

2021年3月期の連結営業収益は1兆7,646億円で、前期の2兆9,466億円から40%減となった。通勤・通学と出張という、鉄道事業のなかで最も安定していた需要が動かなくなったことが直撃している。運輸事業に偏った収益構造が、需要の急減をそのまま損益へ通してしまう形であった。

内容

2020年6月にMaaS・Suica推進本部を設置してSuica・MaaS・データマーケティングを一体で扱い、2021年4月にはJR東日本リテールネットなど4社を合併してJR東日本クロスステーションとした。2022年6月にグループ経営戦略本部・マーケティング本部・イノベーション戦略本部を新設し、同年10月に支社制を首都圏・東北・新潟の3エリアへ括り直している。

含意

2026年3月期の連結営業収益は3兆847億円と過去最高を更新し、セグメント利益では不動産・ホテル事業1,283億円と流通・サービス事業681億円の合計が運輸事業1,944億円を上回った。ただし資産は運輸事業に7兆5,221億円が残り、従業員も運輸事業が5万3,165人を占める。損益の二軸化は進んだが、資産と人員の配置は途上にある。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

損益では二軸化し、資産ではなお運輸に偏る

2026年3月期のセグメント利益は、運輸事業1,944億円に対し不動産・ホテル事業1,283億円、流通・サービス事業681億円で、鉄道以外の二事業を合わせると運輸を上回った。損益で見る限り二軸化は成っている。ただし資産の配置は動いていない。運輸事業の資産は7兆5,221億円で、不動産・ホテル事業の2兆7,657億円の三倍近い。従業員数も運輸事業が5万3,165人を占め、不動産・ホテル事業6,007人・流通・サービス事業6,310人との差は大きい。利益の出どころは移ったが、資本と人の配置はまだ鉄道会社のままである。二軸経営が構造として定着したかどうかは、資産と人員がどこまで動くかで測られることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年8月

業績の推移
同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

外的危機への対応2021年青山商事コロナ禍での159店の統廃合と、創業以来初の希望退職不採算店舗・人員・非中核事業の整理
2001年アスクル株価の急落を受けた、岩田彰一郎社長による原点への引き返し業績予想の下方修正と株式市場の信頼回復
1995年住友銀行1995年3月期での一括処理に踏み切った結果としての、都市銀行初の経常赤字の計上不良債権処理と決算
1993年横河電機人員整理に頼らずに進めた収益構造の立て直しと、雇用を守る経営路線の選択雇用維持と構造改革の両立
2022年太平洋セメント石炭サーチャージ制度の導入表明と撤回を経た、1トン3000円の直接転嫁と収益重視への価格政策の転換価格政策と国内セメント事業の採算
固定費の削減2020年ANAホールディングス過去最大級の資本調達と事業構造改革による自力再建の選択存亡の危機に立った際の資本増強と事業構造改革
1979年NTN守りから攻めへの転換と、需要変動に合わせて生産量を調整する体制の立て直し不況下の生産調整と成長商品
1974年日本光電工業無配転落下での減量経営「」と、復配目標「0、1、2、3計画」の設定経営危機下の減量経営と復配
1974年コクヨ受注残240億円の全件白紙撤回と紙製品の3割減産、三事業部制への移行需要の見極めと生産・組織の再編
1998年さくら銀行三井グループ各社への総額約自己資本の増強と公的資金
参考文献
出典・参考
  • 東日本旅客鉄道 有価証券報告書【沿革】
  • 東日本旅客鉄道 有価証券報告書(連結損益計算書)
  • 東日本旅客鉄道 有価証券報告書(連結セグメント情報)
  • 東日本旅客鉄道 有価証券報告書(従業員の状況)
  • Impress Watch(2025年)

免責事項およびポリシー