筆者の見解
個人宅配市場を創った当事者が、その市場の取扱量を抑えるという逆説
この判断が映し出すのは、1976年に自ら切り拓いた個人宅配という市場を、成長の限界という理由で自ら絞り込んだという逆説である。密度が採算を生むという宅急便本来の論理は、EC時代の小口化と再配達の増加によって裏側から崩された。値上げと総量規制は、量を追う経営から抜け出す決断であったのだろう。
もっとも、値上げそのものは荷主の強い抵抗を招かず、業界全体の価格体系を書き換える引き金になった一方で、デリバリー事業の収益がV字回復を描くまでには2年近くを要し、道半ばで引っ越し料金の過大請求という別の問題も表面化した。効率と成長を同時に追ってきた宅配便最大手にとって、この値上げは収益改善への区切りであると同時に、組織としての足腰の弱さを映し出す機会にもなっただろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月