通信工事3社の同時子会社化とエクシオグループへの改称・再編
地域割拠だった通信工事業界を、株式交換による一括統合と顧客カテゴリ別再編でどう塗り替えたか
更新:
- 概要
- 2018年10月、協和エクシオ(現エクシオグループ)が地場通建大手のシーキューブ・西部電気工業・日本電通を株式交換で同時に完全子会社化し、2021年10月には社名を「エクシオグループ」へ変え、地域別だった事業セグメントを顧客カテゴリ別の3体制へ再編した経営判断。
- 背景
- NTT指定工事会社制度のもとで地域ごとに独立して上場してきた通建大手各社は、固定通信網への投資減少という共通の逆風に直面し、経営資源を効率的に振り分ける必要に迫られていた。
- 内容
- 2018年5月に発表した株式交換により3社を同時に完全子会社化して10月に全国施工網を完成させ、2021年10月の社名変更に合わせて通信キャリア・都市インフラ・システムソリューションの顧客カテゴリ別3セグメント体制へ組み替えた。
- 含意
- 統合効果は翌期の決算に直ちに表れ、その後の海外進出や非通信領域への連続M&Aの土台となったが、事業構成を3分の1ずつにする長期目標はなお道半ばである。
規模の統合か、事業構成の転換か
この経営判断の核心は、単なる規模拡大ではなく、NTT指定工事制度のもとで地域ごとに独立してきた通建業界の構造そのものに一手を打った点にある。中部・関西・九州の独立系地場大手を株式交換という現金を要さない手法で同時に取り込んだ2018年の統合は、首都圏中心だった協和エクシオの事業基盤を一気に全国規模へ広げ、単一顧客への依存構造を和らげる契機となった。統合効果が翌期の決算に即座に表れたことは、対象3社がいずれも健全な収益基盤を持つ地場大手であったことの裏返しともいえる。
もっとも、2018年の統合と2021年の改称・セグメント再編は、単発で完結した出来事というより、その後も続く一連の変化の入り口として捉えたほうが実像に近いとみられる。通信キャリア・都市インフラ・システムソリューションを3分の1ずつにする目標は掲げられて日が浅く、改称後に加速したM&Aはグループ会社数を大きく押し上げた。規模拡大とガバナンス体制の整備をどう両立させるかは、通信工事会社から総合インフラサービス会社への転身を掲げるエクシオグループにとって、今後も問われ続ける論点であるとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
NTT指定工事制度と地場通建の独立割拠
協和エクシオ(現エクシオグループ)は、日本電信電話公社(現NTT)の指定工事会社制度のもとで通信線路・機械・伝送工事を担う地場の有力会社として、首都圏を主戦場に発展してきた。同じ制度下では中部のシーキューブ、九州の西部電気工業、関西の日本電通など、地域ごとにNTTグループ向け工事を担う有力会社が独立して存在し、いずれも東証一部に上場する地場通建大手として並び立っていた。全国は事実上、地域割拠の構図で通信インフラ工事を分担してきた[1]。
だが2010年代後半、この構図を支えてきた前提が揺らぎ始めた。携帯電話網の高度化が進む一方、固定通信網への設備投資は減少傾向をたどり、NTTグループからの受注量そのものが先細るとの見方が業界内に広がった。協和エクシオを含む地場通建各社にとって、限られた市場を奪い合うのではなく、経営資源をどう振り分け直すかが共通の課題として浮上していた[2]。
協和エクシオ自身の子会社化路線の蓄積
協和エクシオはこの間、単独でも子会社化による事業拡張を重ねていた。2001年に電気設備工事を手がける昭和テクノスを合併して事業領域を広げたのを皮切りに、2004年の大和電設工業、2004年の和興エンジニアリング、2010年の池野通建、2011年のアイコムシステックと通信工事・ICTソリューション会社の取り込みを連続して実行し、2015年には和興エンジニアリングと池野通建を合併させてエクシオテックとして再編した[3]。
これらのM&Aは首都圏の施工力強化とICT領域への進出を両立させる意図のもとで進められたが、買収対象はいずれも非上場の中堅企業であり、中部・関西・九州で独自に施工基盤を築いてきた地場大手そのものを取り込む規模の統合ではなかった。全国規模の施工網を完成させるには、これら独立系の地場大手を一括で傘下に収める、より大きな一手が必要だった[4]。
決断
株式交換による3社同時完全子会社化
2018年5月9日、協和エクシオはシーキューブ・西部電気工業・日本電通との間で株式交換による経営統合を発表した。株式交換比率は協和エクシオ株1株に対し日本電通1.86株、シーキューブ0.31株、西部電気工業1.29株とされ、3社は同年9月26日付で上場廃止となったうえで、10月1日付で協和エクシオの完全子会社となった。現金を対価とせず、3社を同時に取り込む統合スキームであった[5]。
協和エクシオは統合の狙いを「営業エリアの拡大や装置の共有化などを進め、経営を効率化する」ことに置いた。固定通信網への設備投資が減少傾向をたどるなかで、地域ごとに独立して施工基盤を築いてきた地場大手を経営統合すれば、重複する営業エリアや設備投資を効率的に振り分けられるとの判断であった[6]。
全国施工網の完成と顧客基盤の多層化
統合した3社は、それぞれの地域で確固たる地盤を持っていた。シーキューブは中部地方を地盤にNTT西日本・中部電力向け工事を担い、西部電気工業は九州地方でNTT西日本・九州電力向け工事を担い、日本電通は関西地方でNTT西日本向けアクセス系工事を担っていた。首都圏を主戦場としてきた協和エクシオにとって、この3社を一括で傘下に収めることは、空白地帯だった中部・関西・九州を一度に埋め、全国規模の施工網を完成させる一手であった[7]。
3社の顧客基盤は電力会社や地方自治体にも及んでいた。NTTグループ向け一辺倒だった協和エクシオの受注構造に、地場大手が地道に積み上げてきた電力・自治体向け工事が加わったことで、単一の発注者に依存する体質からの転換が始まった。この顧客ポートフォリオの多層化は、のちの「都市インフラ事業」「システムソリューション事業」という新たなセグメント区分の素地となった[8]。
結果
FY18業績の急拡大とのれん計上
3社統合の効果はFY18(2019年3月期)の連結決算に直ちに表れた。連結売上高はFY17の3,127億円から4,237億円へ約35%拡大し、営業利益も256億円から317億円へ24%増となった。総資産は2,613億円から4,165億円へ約59%拡大し、自己資本も1,759億円から2,643億円へ約50%増となり、3社の連結化に伴うのれんは102億円が計上された。有利子負債も10億円から177億円へ膨らみ、財務規模は前年から一段階拡大した[9]。
従業員数も急増した。連結従業員数はFY17末の8,331名からFY18末には13,151名へと、1年で5,000名近く積み増された。3社の技術者と施工体制をそのまま取り込んだ結果であり、統合が帳簿上の規模拡大にとどまらず、現場の施工力そのものを底上げしたことがうかがえる。翌FY19の連結売上高は5,246億円に達し、FY17からわずか2年で約68%拡大した[10][11]。
海外進出と「エクシオグループ」への改称・非通信領域への布石
統合の勢いは海外展開にも及んだ。2019年3月、協和エクシオの子会社EXEO GLOBAL Pte. Ltd.がシンガポール拠点のDeClout Pte. Ltd.(現EXEO Global Asset Holdings Pte. Ltd.)を子会社化し、東南アジアのICTサービス・データセンター事業へ足がかりを得た。2021年10月1日には社名を「エクシオグループ株式会社」へ変更し、これに合わせて地域別のセグメント体制を解体、「通信キャリア」「都市インフラ」「システムソリューション」という顧客カテゴリ別の3セグメント体制へ再編した[12][13]。
舩橋哲也社長は2021年7月のインタビューで「電気・土木などの技術を生かした『都市インフラ』、ソフトウェア開発のケーパビリティが発揮できる『システムソリューション』の事業を拡大し、2030年度には、通信キャリア、都市インフラ、システムソリューションの各事業の売上高比率をそれぞれ3分の1ずつにしたい」[14]と述べた。目標の実現手段として選ばれたのは追加のM&Aであり、2021年以降、水道管工事会社や大手系列の電設工事会社などを含む買収・出資を10件近く実施した[15]。
- エクシオグループ 有価証券報告書【沿革】
- エクシオグループ 有価証券報告書(従業員の状況)
- 日本経済新聞(2018年5月9日)「協和エクシオ、同業3社を買収」
- 株探ニュース(2018年5月10日)「日本電通、シーキューブ、西部電工がカイ気配スタート、協エクシオが株式交換で経営統合」
- エクシオグループ公式サイト「社名変更|『協和エクシオ』から『エクシオグループ』へ」
- bcm.co.jp(2021年7月)「2030年ビジョン実現に向けたエクシオグループの取り組み」
- 週刊東洋経済 2022年3月12日号「発見!成長企業 【1951】エクシオグループ 5G時代に『非通信』へ投資 M&A強化で祖業の殻を破る」