シーキューブ等3社子会社化(2018年・エクシオグループの決断)

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論点 株式交換で全国の施工網を統合するか
売上高(億円)営業利益率(%)
現金を使わない3件の株式交換による同時完全子会社化と、負ののれん発生益183億円の計上

現金を使わない3件の株式交換による同時完全子会社化と、負ののれん発生益183億円の計上

概要

2018年5月9日の取締役会で、協和エクシオはシーキューブ・西部電気工業・日本電通の3社をそれぞれ株式交換完全子会社とする3件の株式交換を決議し、同日に各社と株式交換契約を締結した。効力発生日は2018年10月1日で、3社は同年9月26日に上場を廃止している。

取得原価は27,674百万円・18,929百万円・13,362百万円の合計59,965百万円、交付した協和エクシオの普通株式は17,949,533株にのぼる。対価は現金ではなく自社の株式で、発行済株式総数117,812,419株に増減はなく、自己株式が22,049千株から5,201千株へ減った。

背景

統合の目的に掲げたのは、全国ワンストップ施工体制のさらなる強化と、各社が保有する経営資源や顧客基盤を効率的に活用してシナジー効果を発揮することだった。3社の本社は名古屋市中区・福岡市博多区・大阪市港区に分かれ、2018年3月期の売上高は合計1,519億円、営業利益率は3.7%である。

同じ期の協和エクシオは売上高3,126億円・営業利益率8.2%で、規模でも採算でも開きがあった。4社を単純合算した売上高は4,645億円・営業利益312億円、従業員は協和エクシオの8,331名に3社の4,093名が加わる規模になる。

内容

株式交換比率はシーキューブが1対0.31、西部電気工業が1対1.29、日本電通が1対1.86で、いずれも簡易株式交換のため協和エクシオ側は株主総会の承認を経ていない。取得した議決権比率は3社とも100.0%となり、企業結合日直前にシーキューブの1.1%、日本電通の1.2%を保有していた。

会計処理は3社で割れた。シーキューブに6,642百万円、西部電気工業に11,670百万円の負ののれん発生益が立ち、日本電通だけが1,912百万円ののれんを5年間の均等償却で計上している。負ののれん発生益18,313百万円は2019年3月期の特別利益となり、同期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期の17,993百万円から40,219百万円へ倍増した。

含意

統合の効いた2019年3月期は、売上高が312,669百万円から423,727百万円へ、総資産が261,305百万円から416,483百万円へ、連結従業員数が8,331名から13,151名へ増えた。3社は企業グループ別の報告セグメントとして2022年3月期まで置かれ、シーキューブグループの売上高は6か月分の34,730百万円から2021年3月期の87,433百万円へ伸びている。

2022年4月からは通信キャリア・都市インフラ・システムソリューションの事業別3区分へ組み替え、企業グループ別の区分は廃した。2026年3月期の売上構成比はシステムソリューション36%・通信キャリア32%・都市インフラ32%で、2030年度に各セグメントの売上高を同等程度にまで成長させる目標に近づいている。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解 規模を買ったのか、差額を受け取ったのか
筆者の見解

規模を買ったのか、差額を受け取ったのか

この統合で協和エクシオが動かした現金はない。対価は自社の株式で、しかも発行済株式総数は117,812,419株のまま動かず、金庫に眠っていた自己株式が22,049千株から5,201千株へ減っただけである。その見返りに立った負ののれん発生益183億円は、3社の純資産が交換比率で測った時価を上回っていたことの裏返しで、連結キャッシュ・フロー計算書には株式交換に伴う現金及び現金同等物の増加額209億円が並ぶ。既存株主の持分を薄めず、現金も出さずに、東海から九州までの施工網と手元資金を同時に受け取った取引だっただろう。

もっとも、負ののれん発生益は買った瞬間に一度だけ立つ利益で、統合が働いたかどうかはそこには表れない。3社の企業グループ別セグメントは2022年3月期を最後に廃され、以後は事業別の3区分へ溶けたため、各社がどれだけ採算を改善したかを外から追う手立ては失われた。統合前の3社の営業利益率3.7%は、協和エクシオ単体の8.2%の半分に満たない水準にあった。2030年度に3セグメントの売上高を同等程度にまで成長させるという目標に照らせば、この統合の意味は規模そのものより、通信キャリアへの偏りを薄める側にあったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

数字で見る 3表
3件の株式交換の条件

3件の株式交換の条件

科目 概要 備考
取得の法的形式 株式交換(簡易株式交換) 協和エクシオは会社法第796条第2項により株主総会の承認を受けていない
取締役会決議日 2018年5月9日 同日に3社それぞれと株式交換契約を締結。同じ取締役会で自己株式取得も決議
企業結合日 2018年10月1日 3社とも同日。3社の最終売買日は9月25日、上場廃止日は9月26日
取得した議決権比率 3社ともに100.0% 企業結合日直前の保有はシーキューブ1.1%、日本電通1.2%、西部電気工業なし
シーキューブの株式交換比率 1対0.31 交付した株式数は8,255,222株。株主総会の承認決議日は2018年6月27日
シーキューブの取得原価 27,674百万円 交付株式の時価27,366と結合日直前に保有していた株式の時価308の合計
シーキューブの負ののれん発生益 6,642百万円 受け入れた資産47,891・引き受けた負債12,503。取得原価が純額を下回った
西部電気工業の株式交換比率 1対1.29 交付した株式数は5,710,324株。株主総会の承認決議日は2018年6月22日
西部電気工業の取得原価 18,929百万円 全額が企業結合日に交付した協和エクシオ普通株式の時価
西部電気工業の負ののれん発生益 11,670百万円 受け入れた資産50,268・引き受けた負債17,915。3社で最も大きい
日本電通の株式交換比率 1対1.86 交付した株式数は3,983,987株。株主総会の承認決議日は2018年6月28日
日本電通の取得原価 13,362百万円 交付株式の時価13,206と結合日直前に保有していた株式の時価155の合計
日本電通ののれん 1,912百万円 5年間にわたる均等償却。3社で唯一のれんが立った。受け入れた資産19,993
負ののれん発生益の計上額 18,313百万円 2019年3月期の特別利益。報告セグメントには配分していない
主要な取得関連費用 454百万円 アドバイザリー報酬等。シーキューブ167・西部電気工業146・日本電通141
交付した株式数の合計 17,949,533株 発行済株式総数117,812,419株に増減なし。自己株式は22,049千株から5,201千株へ
通期換算した影響額 完成工事高67,263百万円 営業利益1,839百万円。監査証明を受けていない概算額

出所:協和エクシオ 有価証券報告書 第64期(2018年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第65期(2019年3月期)【企業結合等関係】

統合3社グループのセグメント売上高

エクシオグループ:統合3社グループのセグメント売上高

(百万円) シーキューブグループ西部電気工業グループ日本電通グループ 備考
2019年3月期 34,73033,04018,521 10月の企業結合以降6か月分。セグメント利益は2,628/1,234/522
2020年3月期 72,52756,57238,166 通期で連結した初年度。セグメント利益は4,645/2,100/1,334
2021年3月期 87,43359,12949,860 セグメント利益は5,630/3,174/2,830
2022年3月期 77,83660,76044,864 企業グループ別セグメントの最終年。利益は6,080/3,535/2,215

出所:協和エクシオ・エクシオグループ 有価証券報告書 第65〜68期(セグメント情報・外部顧客への売上高) / 協和エクシオ 2017年度決算説明会資料(統合前3社の2018年3月期業績)

のれんと無形固定資産・総資産の推移

エクシオグループ:のれんと無形固定資産・総資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2014年3月期 1,9404,894217,091 のれんは翌期に区分掲記され、組替後の金額
2015年3月期 3,0656,278228,422
2016年3月期 1,9836,477238,301
2017年3月期 1,0534,414243,438
2018年3月期 6583,909261,305
2019年3月期 10,25914,762416,483 3社のうちのれんが立ったのは日本電通1,912のみ。残りはコーケン等の取得分
2020年3月期 7,64012,777444,905
2021年3月期 5,94910,179491,574
2022年3月期 9,20713,745535,617
2023年3月期 15,11223,108577,941
2024年3月期 13,87222,668591,637
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:協和エクシオ・エクシオグループ 有価証券報告書 第61〜70期(連結貸借対照表)

参考文献
出典・参考

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