オリエンタルランド ファンタジースプリングス投資 3,200億円を一つの区域に投じ、契約期間ごと半世紀先へ延ばした回収設計
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2018年6月、オリエンタルランドは東京ディズニーシーに8番目のテーマポート「ファンタジースプリングス」を開発する工事へ着手した。予算金額は250,000百万円、完成予定は2022年度、資金は自己資金ほかで賄う計画だった。
工事はコロナ禍の休園と赤字を挟んでも止まらず、予算金額は2023年3月期に320,000百万円へ積み増され、2024年6月6日に開業した。着手から開業までの支払は2024年3月期末で279,277百万円に達し、資金調達方法には社債が加わった。
- 背景
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東京ディズニーランドは1983年、東京ディズニーシーは2001年9月に開業し、以後17年にわたって新しいパークは増えなかった。2019年3月期の連結売上高は525,622百万円、営業利益は129,278百万円といずれも当時の最高だったが、テーマパークセグメントの売上高は2015年3月期から2018年3月期まで387,622百万円から395,978百万円の幅で足踏みしていた。用地と収容力の制約を超える次の伸びには、東京ディズニーシー開業以来最大のエリア拡張が要る段階にあった。
- 内容
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計画は東京ディズニーシーに3つのエリアとテーマパーク一体型ホテルを設けるもので、投資はテーマパークとホテルの2セグメントにまたがる。着手と同じ2018年6月、ディズニー・エンタプライゼズ・インクとの間に東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルのライセンス、開発、建設及び運営に関する業務提携の契約を締結した。
あわせて東京ディズニーランド・東京ディズニーシーのライセンス契約期間が、2018年3月期まで「東京ディズニーシー開園日の20年後」すなわち2021年9月3日までだったものから、2051年9月3日までへ延びた。5年ずつ5回という延長条項を使い切れば、2076年まで伸びる。
- 含意
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2021年3月期に541億円の当期純損失という開業以来初の通期赤字を計上しても、投資は止まらなかった。同期末の既支払額は107,797百万円で、前期末の52,580百万円から積み増されている。開業した2025年3月期の連結売上高は679,374百万円、営業利益は172,111百万円といずれも過去最高を更新した。ただし入園者数は27,558千人で前期比100.2%にとどまり、伸びたのはディズニー・プレミアアクセスや1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジックが押し上げたゲスト1人当たり売上高だった。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
数十年で回収する投資という様式
この判断の芯は、財務の一時的な悪化に耐えたことよりも、投資の可否を数十年という時間の幅で測る同社固有の考え方にある。3,200億円という額そのものより重いのは、同じ2018年6月にライセンス契約の終期が2021年9月3日から2051年9月3日へ、30年ぶん先へ移ったことだろう。回収の期間を先に確保してから、そこへ収まる規模の箱を建てた順序だろう。埋め立てから半世紀をかけて土地と契約を積み上げてきた企業であればこそ、赤字の年にも半世紀先への投資を続けられた。
もっとも、時間を味方につける投資は、前提が崩れれば重い負担にもなる。開業した2025年3月期の入園者数は前期比100.2%で、増えたのはゲスト1人当たり売上高だった。入場を制限したうえで有料の優先入場やホテル込みの商品に需要を寄せる設計は、単価を上げ続けられる限りは効くが、値上げの余地には限りがある。人口減少と娯楽の多様化のなかで2051年までの回収をどう埋めるのか、答えの出ていない問いは残る。それでも、不況期にこそ次の収益源を仕込むという創業以来の考え方を、コロナ禍という試練のなかでも崩さなかった点に、この投資判断の意味がある。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
投資の条件
投資の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象 | 東京ディズニーシーの8番目のテーマポート | 3つのエリアとテーマパーク一体型ホテル。所在地は千葉県浦安市 |
| セグメント | テーマパーク、ホテル | |
| 予算金額 | 320,000百万円 | 2019年3月期から2022年3月期までは250,000百万円。2023年3月期に増額 |
| 既支払額 | 279,277百万円 | 2024年3月期末時点。2019年3月期末は6,944百万円 |
| 着手年月 | 2018年6月 | |
| 完成予定年月 | 2024年6月6日 | 当初は2022年度。2020年3月期に2023年度、2023年3月期に2024年度第1四半期へ |
| 資金調達方法 | 自己資金、社債ほか | 2022年3月期までは自己資金ほか |
| ライセンス契約期間 | 1979年4月30日から2051年9月3日まで | 5年ずつ5回延長でき、使い切れば2076年。2018年3月期までは東京ディズニーシー開園日の20年後まで |
| ホテルのライセンス契約 | 2018年6月締結 | 東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルについてディズニー社と締結 |
出所:オリエンタルランド 有価証券報告書 第58期(2018年3月期)〜第65期(2025年3月期)【設備の新設、除却等の計画】【経営上の重要な契約等】
ファンタジースプリングスの予算と支払の進捗
オリエンタルランド:ファンタジースプリングスの予算と支払の進捗
| (百万円) | 予算金額 | 既支払額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | 250,000 | 6,944 | 2018年6月に着手。完成予定は2022年度 |
| 2020年3月期 | 250,000 | 52,580 | 完成予定を2023年度へ変更 |
| 2021年3月期 | 250,000 | 107,797 | 通期赤字の期。支払は前期末から55,217増えた |
| 2022年3月期 | 250,000 | 176,475 | |
| 2023年3月期 | 320,000 | 248,019 | 予算を70,000増額し、完成予定を2024年度第1四半期へ |
| 2024年3月期 | 320,000 | 279,277 | 2024年6月6日に開業し、翌期の計画表から外れた |
出所:オリエンタルランド 有価証券報告書 第59〜64期【設備の新設、除却等の計画】
テーマパーク・ホテルの設備投資額と減価償却費
オリエンタルランド:テーマパーク・ホテルの設備投資額と減価償却費
| (百万円) | テーマパーク設備投資額 | ホテル設備投資額 | テーマパーク減価償却費 | テーマパークセグメント資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | − | − | − | 373,889 | 設備投資額と減価償却費はセグメント別の開示がない |
| 2015年3月期 | 33,862 | 1,531 | 27,446 | 383,657 | |
| 2016年3月期 | 36,795 | 2,108 | 28,734 | 438,297 | |
| 2017年3月期 | 46,677 | 2,485 | 31,316 | 524,424 | |
| 2018年3月期 | 57,023 | 1,473 | 30,787 | 566,864 | |
| 2019年3月期 | 80,774 | 1,978 | 32,025 | 664,289 | ソアリンと東京ディズニーランド大規模開発が重なる期 |
| 2020年3月期 | 129,930 | 5,117 | 30,532 | 813,807 | |
| 2021年3月期 | 77,795 | 26,716 | 30,894 | 748,559 | ホテルはトイ・ストーリーホテルの建設が加わる |
| 2022年3月期 | 60,871 | 37,793 | 36,500 | 719,461 | |
| 2023年3月期 | 78,219 | 17,806 | 38,179 | 767,633 | |
| 2024年3月期 | 64,628 | 5,456 | 38,912 | 874,737 | テーマパーク・ホテルとも設備投資の主なものはファンタジースプリングスの開発 |
出所:オリエンタルランド 有価証券報告書 第55〜64期【セグメント情報等】【設備投資等の概要】
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- オリエンタルランド 有価証券報告書「第58期(2018年3月期)【経営上の重要な契約等】」
- オリエンタルランド 有価証券報告書「第59期(2019年3月期)【設備の新設、除却等の計画】」
- オリエンタルランド 有価証券報告書「第63期(2023年3月期)【設備の新設、除却等の計画】」
- オリエンタルランド 有価証券報告書「第64期(2024年3月期)【設備の新設、除却等の計画】【設備投資等の概要】」
- オリエンタルランド 有価証券報告書「第65期(2025年3月期)【重要な契約等】【沿革】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
- オリエンタルランド 決算説明会 質疑応答「2021年3月期 決算電話説明会 質疑応答」
- オリエンタルランド 決算説明会 質疑応答「2024年3月期 決算説明会 質疑応答」