オリエンタルランド東京ディズニーシーの建設決定:既存パークの増設ではなく、第2パークとホテル・モノレールの同時建設で滞在型リゾートへ移る選択

更新:

時期 1996年4月
意思決定者(推定) 加賀見俊夫 オリエンタルランド 社長
論点 単一パークの集客の頭打ちと第2パークへの巨額投資
概要

1996年4月、オリエンタルランドはディズニー・エンタプライゼズ・インクとの間に、東京ディズニーシーおよび東京ディズニーシー・ホテルミラコスタのライセンス、開発、建設及び運営に関する業務提携の契約を締結した。東京ディズニーランド1つで年間1,700万人に迫っていた集客を、アトラクションの追加で押し上げる道ではなく、ほぼ同じ規模の第2パークと直営ホテル・モノレールを同時に建てて超えにいく選択である。

加賀見俊夫社長のもとで、同年12月の東京証券取引所市場第一部への上場と、その後の社債発行が資金の裏づけとなった。

背景

東京ディズニーランドは1983年の開業以来、大型アトラクションの継続的な導入とスペシャルイベントで集客を保ち、1991年3月期に年間入園者が初めて1,500万人を超え、1996年3月期には過去最高の1,698万6千人に達していた。入園者の9割超はリピーターで、営業収益1,715億200万円のほぼ全てが1つのパークへの来園に由来する構造だった。

第2パークの構想そのものは東京ディズニーランド開業5周年の1988年に着手されており、日本人の感性に訴えるものを作るために7年の検討を要し、その後の3年で基本設計と実施設計を進めている。

内容

契約の対象は第2パークとホテルミラコスタで、建設地は東京ディズニーランドと同じ浦安市舞浜である。1996年6月に舞浜リゾートホテルズ、1997年4月に舞浜リゾートラインを100%出資で設立し、ホテルとモノレールを自社グループで抱えた。資金は1996年12月の上場に伴う17,000千株の公募と、1998年4月に発行した第1回無担保社債1,000億円などで賄っている。

加賀見俊夫社長は 『このプロジェクトは景気が悪く、低コストで発注できるときに投資を行い、景気回復時に回収する理想的パターンになる』 と、不況下での発注をむしろ投資の好機と位置づけていた。

含意

東京ディズニーシーとホテルミラコスタは1998年10月に着工し、2001年9月に開業した。2006年3月末の帳簿価額は2施設あわせて262,396百万円で、東京ディズニーランドおよびテーマパークサポート施設の93,556百万円を大きく上回る。連結売上高は開業を挟んで2002年3月期の281,081百万円から2003年3月期に331,753百万円へ跳ね、2007年3月期には344,082百万円まで伸びた。

1日で帰る客を泊まる客に変える構えは、テーマパーク1つの会社をホテルとモノレールを持つリゾート運営会社へ組み替えるものだった。

筆者の見解

天井を壊すのではなく、もう一つ建てる

この判断が選んだのは、1つのパークを広げ続けることではなく、隣にもう1つ建てることだった。舞浜という単一の立地に閉じたまま、テーマランドを7つまで増やしても、1日で帰る客の数には物理的な上限がある。オリエンタルランドは、その上限を押し上げる努力から降り、滞在の長さそのものを商品に変える側へ回った。ホテルとモノレールを外部に任せず100%出資で抱えたことは、入園料の外側にある宿泊と移動の収入まで自社の会計に取り込む意思の表れであったとみることができる。

もっとも、この転換は資金の裏づけがあって初めて成立した選択でもある。上場して公募増資の手段を得た会社が、その資金を日帰り集客の効率化ではなく1,000億円規模の社債と合わせて超長期の設備投資へ振り向けたことは、当時の景気を思えば楽観的にすら映る。景気が悪いときに安く発注するという読みが結果として当たったのか、それとも独占ライセンスと立地の強さが揺らがなかっただけなのかは、なお判じにくい。ただ、テーマパーク1社がリゾート運営会社へ姿を変えた起点がここにあることは確かだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

第2パーク建設の条件

科目 概要 備考
契約の相手方 ディズニー・エンタプライゼズ・インク 東京ディズニーランドと同じ相手。米ウォルト・ディズニー社の権利保有会社
契約の締結 1996年4月 東京ディズニーシー及び東京ディズニーシー・ホテルミラコスタが対象
契約の範囲 ライセンス、開発、建設及び運営 建設地は東京ディズニーランドと同じ千葉県浦安市舞浜
第2パークの規模 東京ディズニーランドとほぼ同じ規模 併せてイクスピアリ、直営ホテル2つ、モノレールを建てる計画
ホテルの運営会社 舞浜リゾートホテルズ(現ミリアルリゾートホテルズ) 1996年6月に100%出資で設立。当社が賃貸した建物で事業を展開する
モノレールの運営会社 舞浜リゾートライン 1997年4月に100%出資で設立。ディズニーリゾートラインを運営する
株式の上場 1996年12月11日・東証市場第一部 17,000千株を公募。払込金額8,050円、資本組入額2,610円
公募資金の使途 設備投資資金・借入金の返済・運転資金 上場後の発行済株式総数は100,122,540株、資本金632億円
社債による調達 第1回無担保社債1,000億円 1998年4月15日発行、利率2.60%、償還期限2008年4月15日
追加の社債 第2回300億円・第5回100億円 1999年6月1日に利率1.35%、2000年4月11日に1.42%で発行
着工 1998年10月 着工式は10月22日。イクスピアリとアンバサダーホテルは同年8月
開業 2001年9月 モノレールは同年7月、イクスピアリとホテルは2000年7月に開業
施設の帳簿価額 262,396百万円 2006年3月末。2施設の合計で、建設仮勘定を除く有形固定資産
敷地面積 585,846㎡ 東京ディズニーランド及びサポート施設の837,259㎡に次ぐ規模

出所:オリエンタルランド 有価証券報告書 第65期(2024年3月期)【沿革】/第46期(2006年3月期)【主要な設備の状況】【社債明細表】/証券 1997年49巻1号「新規上場会社紹介」

オリエンタルランド:意思決定の前後5期の営業収益

(億円) 営業収益 備考
1992年3月期 1,515 単体の営業収益。1995年3月期までは会社の公表資料で照合できていない
1993年3月期 1,505
1994年3月期 1,562
1995年3月期 1,539
1996年3月期 1,715 東京ディズニーランド単独で過去最高。入園者数は1,698万6千人
1997年3月期 4月に契約を締結し12月に上場した期。単体の数値を照合できていない
1998年3月期
1999年3月期
2000年3月期
2001年3月期
2002年3月期 この期から連結の数値が遡れる。連結売上高は281,081百万円
単体の営業収益
営業収益(億円)

出所:証券 1997年49巻1号(574号)「新規上場会社紹介 株式会社オリエンタルランド」(販売実績・入園者数) / 証券調査 第317号(1992年3月期〜1995年3月期の営業収益)

オリエンタルランド:東京ディズニーシー開業をはさむ連結業績

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
1997年3月期 契約を締結し上場した期。連結の数値は会社の公表資料で照合できていない
1998年3月期
1999年3月期
2000年3月期
2001年3月期
2002年3月期 281,08123,78612,726 第42期。東京ディズニーシーは2001年9月開業で、寄与は約半年分
2003年3月期 331,75333,90818,931 東京ディズニーシーとホテル・モノレールが通年で稼働した最初の期
2004年3月期 336,51634,37218,530
2005年3月期 331,09430,83617,224
2006年3月期 332,88526,68615,703 愛知万博や記録的な寒さの影響で2パーク合計の入園者数は24,766千人
2007年3月期 344,08230,18716,309
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:オリエンタルランド 有価証券報告書 第46期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / オリエンタルランド 有価証券報告書 第47期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】

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出典・参考
  • 証券アナリストジャーナル 1999年37巻1号(加賀見俊夫、1998年12月8日・東京)
  • 証券 1997年49巻1号(574号)
  • オリエンタルランド 有価証券報告書「第65期(2024年3月期)【沿革】」
  • オリエンタルランド 有価証券報告書「第46期(2006年3月期)【主要な設備の状況】【社債明細表】【主要な経営指標等の推移】」
  • オリエンタルランド 有価証券報告書「第47期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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