OA機器販売への転換(2003年・光通信の決断) 更新:2026/09/10 論点 社債の維持条項をどう守り抜くか 光通信:業績の推移 売上高(億円)当期純利益率(%)データ出所 社債償還危機下の有利子負債圧縮と収益源の入れ替え 何をなぜ決めたか:社債償還危機下の有利子負債圧縮と収益源の入れ替え 概要 ITバブル崩壊で携帯電話販売が失速した光通信は、2002年から2003年にかけて不採算店舗を整理し、収益源を携帯電話の受付コミッションからOA機器などの自社商材へ組み替えた。2003年3月、携帯電話販売ショップは不採算店舗のリストラで全国470店舗まで縮み、代わって複写機を売る法人事業の営業所が全国22ヶ所に立った。この期の連結売上高は124,105百万円、経常利益は3,403百万円、当期純損益は7,922百万円の赤字である。 背景 1999年11月24日に発行した第5回無担保社債は利率2.35%、償還期限は2006年11月24日で、一部の社債には株主資本724億円を維持する財務制限条項が付いていた。提出会社の純資産額は2002年3月期が77,393百万円、2003年3月期が74,505百万円と、条項の水準をわずかに上回るところまで減少していた。単体の当期純損失は2期続き、2002年3月期が13,171百万円、2003年3月期が7,686百万円である。 内容 光通信は2002年3月28日に7,600,000株の第三者割当増資で10,024百万円を、2003年3月27日に4,500,000株で4,995百万円を払い込み、自己資本を積み増した。2期にわたる単体の当期純損失は、定時株主総会の決議による資本準備金の取崩しで埋めた。取崩額は2002年6月25日が13,171百万円、2003年6月24日が7,686百万円で、いずれもその期の損失と同額である。並行して転換社債の株式への転換が進み、2003年6月18日までに5,696,461株が発行され、資本金と資本準備金がそれぞれ2,739百万円増えた。 含意 決算期を8月から3月へ変えた2002年3月期に169,937百万円あった連結総資産は、2004年3月期には101,068百万円まで縮んだ。自己資本比率は32.9%から71.0%へ上がり、2004年3月期の連結経常利益は19,628百万円、当期純利益は10,626百万円で黒字へ復帰した。法人事業の営業所は2004年3月に38ヶ所、2005年3月に62ヶ所へ増え、携帯電話代理店に代わる多品目の直販モデルが、のちに水・保険・電力へと商材を広げる下地となった。 いつ何が起きたか 8件 考察:商材を替えても販売手法は替えない 考察 考察:商材を替えても販売手法は替えない この再建で目を引くのは、危機の引き金と再建の手段がいずれも販売力という同じ資産だった点である。過剰出店で会社を追い込んだのも、社債の償還原資をひねり出したのも、中小企業へ商材を売り込む営業網であった。携帯電話販売ショップを470店舗まで畳む一方で、同じ売り方を複写機に載せ替え、法人事業の営業所を全国へ立てていった。店を減らして営業所を増やすという入れ替えは、商材を替えても売り方は替えないという判断だったのだろう。 もっとも、この判断の速度と順序を決めていたのは、社債に付いた株主資本724億円の維持という外部の制約だっただろう。2003年3月期の提出会社の純資産額は74,505百万円で、期末の4日前に払い込まれた増資を差し引けばこの水準を割る。決算期の末に増資を入れ、総会で資本準備金を取り崩して損失を埋める手当ては、条項への抵触を先送りする綱渡りでもあった。財務の制約に追われながら収益源の組み替えを同時に進めた再建であり、どちらが欠けても成り立たなかった。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 数字で見る 5表 数字で見る 図と表 光通信:提出会社の純資産額と当期純損益の推移 純資産額(百万円) 表を見る 光通信:提出会社の純資産額と当期純損益の推移 × (百万円) 純資産額当期純損益総資産額 備考 2002年3月期 77,393△13,171173,896 決算期変更により7か月決算。3月28日に10,024百万円を払い込んだ 2003年3月期 74,505△7,686123,579 当期純損失7,686百万円を、3月27日払込の増資4,995百万円で埋めた 2004年3月期 85,0642,431105,814 単体の自己資本比率は80.4% 2005年3月期 86,6364,440123,561 2006年3月期 100,1716,390161,141 2007年3月期 98,7939,083181,578 第20期から純資産の部の表示に関する会計基準を適用している 2008年3月期 94,112△2,006174,223 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(提出会社の経営指標等) 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(提出会社の経営指標等) 光通信:連結の純資産額と総資産額の推移 純資産額(百万円)純資産以外(百万円) 表を見る 光通信:連結の純資産額と総資産額の推移 × (百万円) 純資産額総資産額 備考 2002年3月期 55,846169,937 自己資本比率32.9%。決算期変更により7か月決算 2003年3月期 53,028122,078 自己資本比率は前期の32.9%から43.4%へ上がった 2004年3月期 71,748101,068 自己資本比率は71.0%まで上がった 2005年3月期 88,530147,005 自己資本比率60.2% 2006年3月期 116,424183,612 自己資本比率63.4% 2007年3月期 138,193214,191 第20期から純資産の部の表示に関する会計基準を適用。自己資本比率57.9% 2008年3月期 135,154230,777 自己資本比率53.7% 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等) 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等) 光通信:連結の売上高と損益の推移 売上高(百万円)経常利益率(%) 表を見る 光通信:連結の売上高と損益の推移 × (百万円) 売上高経常利益当期純損益 備考 2002年3月期 71,058△1,524△16,115 決算期を8月から3月へ変えた移行期で、7か月決算 2003年3月期 124,1053,403△7,922 経常利益は黒字に戻したが、最終損益は2期続けて赤字 2004年3月期 145,99519,62810,626 連結最終損益が黒字へ復帰した 2005年3月期 171,00929,59619,466 2006年3月期 192,83729,90820,569 2007年3月期 211,88120,37418,483 2008年3月期 314,13523,5222,801 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等) 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等) 光通信:連結の従業員数の推移 従業員数(人)平均臨時雇用者数(人) 表を見る 光通信:連結の従業員数の推移 × (人) 従業員数平均臨時雇用者数 備考 2002年3月期 2,1403,070 2003年3月期 2,4452,047 店舗の整理で臨時雇用者が1,023人減り、就業人員は305人増えた 2004年3月期 3,1723,161 2005年3月期 4,5886,296 2006年3月期 4,2874,806 法人事業2,273人、保険事業992人、SHOP事業638人 2007年3月期 4,7606,742 2008年3月期 4,6646,482 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等・従業員の状況) 出所:光通信 有価証券報告書 第19期・第21期(連結経営指標等・従業員の状況) 財務再建と事業転換の条件 償還を控えた社債 第5回無担保社債 決算期の変更 8月31日から3月31日へ 第三者割当増資(第15期) 10,024百万円 第三者割当増資(第16期) 4,995百万円 資本準備金の取崩し(第15期) 13,171百万円 資本準備金の取崩し(第16期) 7,686百万円 転換社債の株式への転換 1,370,006株 転換社債の株式への転換(翌期) 5,696,461株 表を見る 財務再建と事業転換の条件 × 科目 概要 備考 償還を控えた社債 第5回無担保社債 1999年11月24日発行、利率2.35%、償還期限は2006年11月24日。無担保 決算期の変更 8月31日から3月31日へ 2002年3月29日の臨時株主総会で決議。第15期は7か月決算となった 第三者割当増資(第15期) 10,024百万円 2002年3月28日に7,600,000株を発行。発行価格1,319円、資本組入額660円 第三者割当増資(第16期) 4,995百万円 2003年3月27日に4,500,000株を発行。発行価格1,110円、資本組入額555円 資本準備金の取崩し(第15期) 13,171百万円 2002年6月25日の定時株主総会で決議。同期の単体当期純損失と同額 資本準備金の取崩し(第16期) 7,686百万円 2003年6月24日の定時株主総会で決議。同期の単体当期純損失と同額 転換社債の株式への転換 1,370,006株 2003年3月31日まで。資本金と資本準備金がそれぞれ659百万円増えた 転換社債の株式への転換(翌期) 5,696,461株 2003年6月18日まで。資本金と資本準備金がそれぞれ2,739百万円増えた 縮小した事業 携帯電話販売ショップ 不採算店舗のリストラにより、2003年3月に全国470店舗まで縮小した 縮小前の店舗数 1,500店舗 1999年5月時点の全国の携帯電話販売ショップ数 拡大した事業 法人事業の営業所 2003年3月に全国22ヶ所。2004年3月38ヶ所、2005年3月62ヶ所へ増えた 転換後の主力商材 複写機 シャープドキュメントシステムとの売買取引契約。子会社アイ・イーグループが担う 人員規模 2,445人 2003年3月期の連結。ほかに平均臨時雇用者2,047人。前期は2,140人 出所:光通信 有価証券報告書 第19期(2006年3月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】【発行済株式総数、資本金等の推移】【経営上の重要な契約等】【社債明細表】 出所:光通信 有価証券報告書 第19期(2006年3月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】【発行済株式総数、資本金等の推移】【経営上の重要な契約等】【社債明細表】 参考文献 参考文献 参考日経ビジネス 2001年3月5日号(日経BP社)光通信 有価証券報告書「第19期(2006年3月期)【沿革】【発行済株式総数、資本金等の推移】【経営上の重要な契約等】【社債明細表】」光通信 有価証券報告書「第19期・第21期(2006年3月期・2008年3月期)【主要な経営指標等の推移】」 次に読む決断 光通信の意思決定2001年光通信光通信クレイフィッシュ経営権争いネットバブル期に膨らんだベンチャー投資と、その後始末に追われた経営の混乱2001年2015年光通信光通信ウォーターダイレクトの買収中小企業向け営業チャネルに水・保険・電力を載せ替える多品目化2015年同じ問い:経営再建の資金調達2003年りそなHDりそなHD公的資金1.96兆円受入預金保険法102条の初適用と細谷英二会長のもとでのリテール再建2003年2004年双日双日航空機ファイナンス損失処理総額2500億円に及ぶ一括処理と、手を付けてこなかった事業への切り込み2004年2004年三菱自動車三菱自動車ダイムラー撤退後の自主再建三菱グループ各社の支援を軸とした自主再建体制への移行2004年2002年JVCケンウッドJVCケンウッド債務超過を脱する再建策債務超過に陥ったケンウッドの再建と業務用・車載への事業転換2002年2002年丸紅丸紅勝俣宣夫の不良資産処理業績不振からの再建をめざした財務基盤の立て直しと不良資産の処理2002年 × 出所