田角陸氏の起業からにじさんじ運営まで
2017年5月、田角陸CEOが[1]東京都新宿区にいちから株式会社を資本金100万円で設立した[2]。設立の時点で21歳、[3]早稲田大学を休学して[4]の創業であった。在学前にガイアックスでマーケティングのインターン[5]を経験し、そのまま起業へ向かった。初代事業はVR元年と呼ばれた[6]当時のVR・MRデバイス向けアプリ開発[7]だった。田角陸CEOはのちに、アニメ業界にもYouTube配信の時代がやってくる[8]と確信してバーチャルYouTuber(VTuber)事業への参入を決めたと語った(Forbes JAPAN 2020年11月16日)。手段にライブ配信を選んだ理由も同じ取材で述べており、ライブ配信で同じ時間を過ごせればファン同士も一緒に盛り上がれる[9]とみていた。同年11月、本店を新宿区から渋谷区へ[10]移した。
2018年1月、いちからは[11]VTuberグループ『にじさんじ』の始動を発表し、ライバーの募集を開始した。翌2月8日にはiPhone X向けアプリ[12]『にじさんじ』を公開した。顔認識機能で利用者の表情をキャラクター[13]へ反映し、そのまま配信できる仕組みであった。同じ2月、第1期の所属VTuber8名が活動を開始[14]した。ところが支持を集めたのは、売り物のアプリではなく、宣伝のためにオーディションで採用した1期生[15]のほうであった。いちからは1期生の人気などを受けて[16]アプリの提供を主力から外し[17]、タレント事業へ切り替えた。田角陸CEOは、プラットフォームに頼らず演者個人の力を信じるマネジメント[18]のほうが伸びると読み、トレンドの強い領域へ寄せた[19]と述べた。
2018年5月、いちからはゲーム配信者に[20]特化したVTuberグループ『にじさんじゲーマーズ』を開始し、6月には候補生で構成する[21]『にじさんじSEEDs』を加えた。だが同年12月、いちからは『にじさんじ』『にじさんじゲーマーズ』『にじさんじSEEDs』の3グループを『にじさんじ』へ統合し[22]、国内の所属ライバーを単一のブランドの下に置いた。派生グループを設けてから統合までは7か月[23]であった。2018年4月期の売上高は1,662万円、経常損益は396万円の赤字[24]だったが、2019年4月期には売上高8億6,652万円、経常利益4,726万円[25]となった。
2019年2月、いちからは配信スケジュールサイト『いつから.link』のウェブブラウザ版[26]の提供を始め、4月にはiOS・Androidアプリ版[27]を加えた。同じ4月、中国におけるVTuberグループ[28]『VirtuaReal Project』の始動を発表し、ライバーの募集を開始した。デビュー後の主な活動の場には中国の動画共有サイト『bilibili』を予定し[29]、別のグループ名で始動した。続けて7月にインドネシアの[30]『NIJISANJI ID』、11月にインドの『NIJISANJI IN』[31]、12月に韓国の『NIJISANJI KR』[32]を発表し、いずれもライバーの募集を始めた。
2020年3月、いちからは本店を東京都渋谷区から千代田区へ移した[33]。同年6月1日には任天堂と著作物の利用に関する包括的許諾契約[34]を結んだ。任天堂は個人向けにゲーム実況のガイドラインを公開していたが法人は対象外で、同社の発表によれば、いちからは法人として初めて包括的な許諾を受け[35]、所属ライバーによる任天堂ゲームの配信と収益化に道をつけた。同じ6月に『にじさんじ』の英語圏に向けた公式YouTubeチャンネル[36]を開設し、9月には専用オンラインショップ『にじさんじオフィシャルストア[37]』、10月にはチャット機能等の有料サービス[38]を備えたファンクラブ『にじさんじ FAN CLUB』を開いた。2020年4月期の領域別売上高は、国内コマース領域の15億1,933万円[39]が国内ライブストリーミング領域の12億3,871万円を上回った。従業員数は前期末の48人から150人へ[40]増えた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、オフラインイベントの中止[41]とそれに伴うグッズの販売中止、企業案件の商談期間の長期化が生じた。一方で在宅勤務の増加により動画視聴時間が増える[42]プラスの影響もあったと、ANYCOLORは有価証券報告書で説明した。2021年4月期の売上高は76億3,604万円と前期の34億7,870万円[43]から2.2倍になり、営業利益は4,426万円から14億5,201万円へ、経常利益は4,201万円から14億5,100万円へ[44]、営業利益率は1.3%から19.0%へ[45]上がった。所属VTuber数(日本)は99人から103人、従業員数は150人から156人と人の増え方はわずかで、YouTube再生時間は2億7,200万時間から4億9,600万時間[46]へ8割増えた。国内コマース領域の売上高も15億1,933万円から33億5,535万円へ[47]2.2倍になった。
2019年4月の中国『VirtuaReal Project』から12月の韓国『NIJISANJI KR』まで、9か月で4つの国・言語圏へ広げた[48]海外は、上場を控えて絞り込みに入った。最初に閉じたのはインドで、2021年4月、始動から1年5か月で[49]『NIJISANJI IN』の活動を休止した[50]。翌5月には本店を千代田区から港区へ移し[51]、商号をいちから株式会社からANYCOLOR株式会社へ[52]変更、同じ月に英語圏の『NIJISANJI EN』が活動を開始した[53]。6月にはVTuberとして活躍するためのタレント育成プロジェクト『バーチャル・タレント・アカデミー[54]』を始めた。統合されるまでの海外グループは、いずれも『にじさんじ』とは別のグループ名と公式アカウントを置いて運営された[55]。
2022年4月期の売上高は141億6,414万円で前期比85.5%増[56]、営業利益は41億9,107万円で同188.6%増、営業利益率は29.6%に達した。国内コマース領域が66億3,840万円[57]と全体の47%を占め、前年5月に始まった『NIJISANJI EN』も11億2,684万円を計上した。ANYCOLORは所属VTuber数の増加よりサポート体制の拡充[58]を優先したと説明し、日本のVTuber数は109人、従業員数は230人、平均年齢は30.1歳[59]であった。上場直前の2022年4月30日時点で、田角陸CEOが46.86%にあたる14,031,810株[60]を持ち、LC FUND VIIIが11.18%、HODE HK Limitedが7.98%、Skyland Ventures2号投資事業有限責任組合が7.51%、ソニー・ミュージックエンタテインメントが5.59%で続いた。
2022年2月17日、ANYCOLOR[61]はインドネシアの『NIJISANJI ID』と韓国の『NIJISANJI KR』を『にじさんじ』へ統合すると発表した。理由に挙げたのは、グループのサポート体制を強固でより効率の良いものにする[62]ことであった。統合は同年4月に実施し[63]、英語圏の『NIJISANJI EN』と中国の『VirtuaReal』は対象から外した[64]。インドネシア・韓国・中国のVTuberビジネス等を含む『その他領域』の売上高は、2022年4月期で3億5,130万円、全体の2.5%[65]だった。同年6月8日、設立から5年1か月で東京証券取引所グロース市場[66]に株式を上場した。一般募集は5万株、発行価格は1株につき1,530円[67]で、上場日の時価総額は1,652億円[68]と報じられた。
上場した2022年6月時点で田角陸CEOは26歳[69]、有報が示す2022年4月末の従業員数は230人であった[70]。上場後の株価の振れは激しく、2023年4月期の最高株価は13,790円、最低株価は3,930円[71]と3.5倍の開きがあった。いずれも2023年8月1日付で1株を2株に分割する[72]前の実額である。
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| 2017〜2019年学生起業からVTuber事務所モデルの確立まで──「いちから」の事業転換 | 田角陸 | いちからを設立 | ★ | |
| 田角陸 | VTuberグループ「にじさんじ」の始動を発表 | ★★ | ||
| 田角陸 | アプリ事業から所属ライバーの運営へ——創業1年での主力事業の入れ替え 2018年、いちから株式会社(現ANYCOLOR)が、誰でもVTuberになれるiPhone向けアプリ『にじさんじ』を売る事業から、そのアプリの宣伝のために採用したライバーを預かるタレント事業へ主力を移した経営判断。創業者の田角陸氏が主導し、同年末までに派生グループを『にじさんじ』の単一ブランドへ集約した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 2020〜2022年コロナ特需とIPO──「ANYCOLOR」への商号変更と東証グロース上場 | 田角陸 | 「にじさんじ」の英語圏に向けた公式YouTubeチャンネルを開設 | ★ | |
| 田角陸 | 「にじさんじ」専用オンラインショップ「にじさんじオフィシャルストア」を開設 | ★ | ||
| 田角陸 | インドにおけるVTuberグループ「NIJISANJI IN」の活動を休止 | ★ | ||
| 田角陸 | 英語圏「NIJISANJI EN」始動 + 商号をいちからからANYCOLORに変更 | ★★ | ||
| 田角陸 | タレント育成プロジェクト「バーチャル・タレント・アカデミー」を開始 | ★ | ||
| 田角陸 | 海外4極から2極への絞り込み——インド休止とインドネシア・韓国グループの本体統合 2022年2月17日、ANYCOLORが、インドネシアの『NIJISANJI ID』と韓国の『NIJISANJI KR』を国内の『にじさんじ』へ統合すると発表した経営判断。前年のインド『NIJISANJI IN』活動休止と合わせ、2019年に4つの国・言語圏へ同時に広げた海外グループを、英語圏の『NIJISANJI EN』と中国の『VirtuaReal』の2つに絞った。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 田角陸 | 東京証券取引所グロース市場に株式を上場 | ★★ | ||
| 2023〜2025年プライム市場昇格と「日本発VTuberグローバル企業」への進化 | 田角陸 | 東京証券取引所プライム市場に指定替え | ★ |
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