1992年8月、創業者の古川國久氏[1]は大阪府吹田市にシップコーポレーション株式会社[2](現シップヘルスケアホールディングス)を設立し、医療・保健・福祉施設のコンサルティング業務を開始[3]した。社名の『SHIP』は Sincere(誠実な心)・Humanity(情の心)・Innovation(革新者の気概)・PartnerSHIP(パートナーシップ精神)の頭文字であり、帆に風を受けて航海を続ける船でありたいという思いに由来する。その根底には『至誠惻怛』(まごころと、いたみ悲しむ心)という、幕末の備中松山藩の藩政改革を導いた山田方谷ゆかりの言葉を据えた。古川氏はのちに、真心といたみ悲しむ心があれば物事が正しく運ぶというのが人としての生き方だと振り返っており、コンサル領域での創業時から人材・組織観を経営の中心に置いた。施設の企画段階から建設・運営までを統合的に支援できる事業者は、当時の医療市場には限られていた。
シップコーポレーション設立3カ月後の1992年11月、古川氏は別法人としてグリーンホスピタルサプライ株式会社を設立し、富士写真フイルム製のレントゲンフィルム・自動現像機等の販売事業を開始した[4]。コンサル本体と物販子会社を分けて立ち上げた構成は、後のグループ化の原型である。1994年には株式会社保健医療総合研究所(現シップヘルスケアリサーチ&コンサルティング)と日星調剤株式会社を設立し[5]、コンサル・物販・調剤の3軸を整えた。1995年6月には医療機関向けリース事業も開始し[6]、医療施設に対して企画・コンサルから物販・調剤・金融までを一気通貫で提供する原型ができた。
1997年2月、グリーンホスピタルサプライ[7]がSPD(サプライ・プロセシング・ディストリビューション、院内物流代行システム)事業[8]を開始した。SPDは病院内の医療材料・診療材料の発注から在庫管理・院内配送までを外部事業者が一括代行する仕組みで、当時の日本の病院ではほぼ未整備の業務領域だった。当時の同社が踏み込んだのは、診療報酬改定の連続で経営圧迫が続く病院側の余地が大きい領域だった。
SPD事業の立ち上げと並行して、グループ内では子会社化と機能補強を続けた。2000年10月にセイコーメディカル株式会社[9]、2001年10月にシップヘルスケアエステート(旧多治川経営企画)[10]、2003年1月にグリーンライフ株式会社[11]、2004年6月にグリーンファーマシー株式会社などを順次グループ化し[12]、医療機器販売・施設建設・介護・調剤に事業領域を広げた。2002年3月には親会社シップコーポレーションがグリーンホスピタルサプライを吸収合併し、商号を『グリーンホスピタルサプライ株式会社』に変更[13]、医療機器販売事業を本体に統合した。創業10年でコンサル単体から医療機器商社・SPD運営・施設プロデュース・調剤・介護を抱える複合体に組み変わり、これがのちに『トータルパックプロデュース(TPP)』[引用元]と呼ばれる病院丸ごと請負モデルの基盤となった。なお当時の有価証券報告書での事業呼称は『トータルパックシステム(TPS)』[引用元]であり、TPP の名称は後年に用いられたものである。
創業10年余の同社が掲げたのは、病院新設や建て替えの際に建築・医療機器・什器・情報システム・物流までを一括で請け負う事業モデルだった。後年大橋太社長が説明している通り、新設・建て替え時は病院職員だけでは分からない領域が多く、従来は調達対象ごとに別会社へ相談していたところを全領域一括で請け負う仕組みがTPPである。病院側からみれば調達窓口が一本化される利点があり、同社からみればコンサル・SPD・物販・建設・調剤の各機能を結合して収益化できる仕組みだった。創業期の有価証券報告書では事業呼称は『トータルパックシステム(TPS)』[引用元]であり、TPP の語が事業セグメント名として用いられるのは後年であるが、その原型はこの時期に組み上がった。
業績面では創業10年目あたりから売上が立ち上がり、FY11(2012年3月期)の連結売上高は1,888億円・経常利益112億円・当期純利益70億円に達した。1992年の創業から20年で1,000億円規模のグループに到達したのは、SPDという院内物流の新カテゴリーを早期に確立できたことと、病院丸ごとを顧客とするTPPモデルを組み上げたことの両方が寄与した。一方で、グループは多数の連結子会社を抱える分散構造になっており、グループ統治と意思決定の一本化は時間を要した。創業者の古川氏は2009年の持株会社化後も初代社長を務め[14]、2014年に代表取締役会長CEOへ退いて社長職を専門経営者に委ねた。
2005年2月、グリーンホスピタルサプライ[15]は東京証券取引所市場第二部に上場した。創業から13年で公開市場入りし[16]、その後2年後の2007年3月には東証一部に指定替えとなり[17]、機関投資家アクセスを得た。上場資金を活用した最初の本格的M&Aが、2006年11月の株式会社セントラルユニ(東京都千代田区)とその子会社5社の連結子会社化である。2008年から2009年にかけて山田医療照明(2008年4月、東京都文京区)[18]・ライトテック(2008年7月、大阪市西区)[19]・酒井医療(2009年10月、東京都文京区)[20]など医療機器メーカーを連続して子会社化し、医療機器商社から医療機器メーカーまでを含む垂直統合へ踏み込んだ。
並行して、調剤・介護領域の取り込みも加速した。2003年1月のグリーンライフ(兵庫県尼崎市)[21]に続き、2006年1月のシップヘルスケアフード(旧ホスピタルフードサプライサービス)[22]、2007年3月の仙台調剤(現シップヘルスケアファーマシー東日本)[23]など、医療と隣接する病院食・介護・調剤の各領域に手を広げた。FY14(2015年3月期)の連結売上高は2,733億円となり、ライフケア・調剤・メディカルサプライ・トータルパックプロデュースの4セグメントが姿を現した。連続M&Aと内部成長で売上は7年で約3,000億円規模まで拡大したが、グループ会社数は60社を超え、グループ統治の枠組みの整備が次の経営課題となっていた。
2009年5月、グループ統治と上場子会社を含む組織の整理を目的に、シップヘルスケアホールディングス株式会社が新たに設立[24]された。同年10月、分社型吸収分割により事業を新会社へ承継し、旧来の親会社(旧グリーンホスピタルサプライ)が『シップヘルスケアホールディングス株式会社』へ商号変更して持株会社体制に移行した[25]。同月、株式会社セントラルユニとの株式交換も実施し[26]、上場子会社の少数株主整理を進めた。持株会社体制への移行で、グループ統治・資本配分・M&A実行は持株会社が、各事業ドメインは事業子会社が分担する体制が整い、以降の連続M&Aと再編が機動的に走れる枠組みができた。創業者の古川氏は持株会社化後の初代社長(〜2014年)[27]として組織転換期の経営を担い、その後は代表取締役会長CEOとして長期戦略の策定を継続した。
持株会社化後の数年間も、M&Aと内部組織の再構成は連続した。2010年10月に札幌メディカルコーポレーション(札幌市白石区)とその子会社3社を取り込み北海道地盤を確保[28]、2012年5月にはグリーンホスピタルサプライとセントラルユニの一部子会社の管理業務を本体に集約してグループ機能の中央化を進めた。[29]2014年4月にはシップヘルスケアエステート東日本(東京都中央区)を設立し[30]、首都圏での施設事業を強化した。FY13(2014年3月期)の連結売上高は2,591億円となり、4セグメントが揃った2014年時点で、グループは病院ライフサイクル(コンサル・新設TPP・物流SPD・運営支援・介護・調剤)の各局面に1社以上の専門会社を抱える構造となった。
国内事業の垂直統合に続いて、同社は海外進出にも踏み込んだ。2014年8月、GREEN HOSPITAL MYANMAR, LTD.(ミャンマー国ヤンゴン市)を設立し[31]、東南アジアの医療市場へ参入した。2016年4月にはSHIP AICHI MEDICAL[32] SERVICE, LTD.(バングラデシュ国ダッカ市)を設立し、新興国の医療インフラ整備需要に応える布石を打った。海外案件は当初の収益貢献は限定的だったが、新興国の病院新設やSPD導入支援を中長期の成長分野とみなした。ただし2025年の中期経営計画策定時にミャンマー事業からの撤退を決断するなど、長期化した収益化の課題も残った。
国内では、2015年7月の大阪重粒子線施設管理(大阪府吹田市)設立で粒子線治療施設の運営事業に参入し[33]、2016年4月には小西共和ホールディング(大阪市中央区)とその子会社4社を取り込み、関西地盤の医療機器商社網を強化した。[34]2016年12月の昭島国際法務PFI(東京都中央区)設立では、PFI(民間資金活用による公共事業)方式での法務省関連施設運営にも参入し[35]、医療隣接領域へ手を広げた。
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|---|---|---|---|---|
| 1992〜2004年「至誠惻怛」を掲げた医療コンサルからSPD(院内物流代行)への転換 | シップコーポレーションを設立 | ★ | ||
| 古川國久 | グリーンホスピタルサプライを設立 | ★★ | ||
| 古川國久 | 保健医療総合研究所を設立 | ★ | ||
| 古川國久 | 日星調剤を設立 | ★ | ||
| 古川國久 | 医療機関等に対するリース事業に参入 | ★★ | ||
| 古川國久 | 医療コンサルと写真フィルム販売からSPD(院内物流代行)主体への転換 1997年2月、創業5年目のグリーンホスピタルサプライがSPD(サプライ・プロセシング・ディストリビューション、院内物流代行)事業を始め、病院に商品を納める商社から、病院の材料在庫と院内配送を預かる事業者へ主力を移した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 古川國久 | 子会社のメディカルイメージング部門を富士フイルムメディカル西日本へ営業譲渡 | ★★ | ||
| 古川國久 | グリーンホスピタルサプライを吸収合併し「グリーンホスピタルサプライ」に商号変更 | ★ | ||
| 2005〜2014年上場・持株会社化と「病院丸ごと」M&A連鎖 | 古川國久 | 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | |
| 古川國久 | アニマルメディカルセンターを設立 | ★ | ||
| 古川國久 | 東証二部上場とセントラルユニ買収による院内設備事業の取り込み 2005年2月に東京証券取引所市場第二部へ上場したグリーンホスピタルサプライが、2006年11月に株式会社セントラルユニとその子会社5社を72億4,989万円で取得し、医療ガス配管設備の製造・メンテナンスをグループに取り込んだ経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 古川國久 | 東京証券取引所市場第一部へ指定変更 | ★ | ||
| 古川國久 | 山田医療照明を子会社化 | ★ | ||
| 古川國久 | シップヘルスケアHDを設立 | ★ | ||
| 古川國久 | 分社型吸収分割で事業をシップヘルスケアHDへ承継し持株会社体制へ移行 | ★★ | ||
| 古川國久 | セントラルユニとの株式交換を実施 | ★★ | ||
| 古川國久 | 酒井医療・その子会社1社を子会社化 | ★ | ||
| 古川國久 | 札幌メディカルコーポレーション・その子会社3社を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | GREEN HOSPITAL MYANMAR,LTD.(ミャンマー国ヤンゴン市)を設立 | ★ | ||
| 2015〜2024年1兆円構想と SHIP VISION 2030 ── グループ統合と再編の段階 | 小川宏隆 | 大阪重粒子線施設管理を設立 | ★ | |
| 小川宏隆 | 西野医科器械を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | 小西共和HD・その子会社4社を子会社化 | ★★ | ||
| 小川宏隆 | 日本パナユーズ・その子会社1社を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | ユーロメディテックを子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | I&C(大阪市中央区)を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | 日本システム家具を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | 日本ネットワークサービス・その子会社1社を子会社化 | ★ | ||
| 小川宏隆 | エス・ティー・ケーを子会社化 | ★ | ||
| 大橋太 | 中央を子会社化 | ★ | ||
| 大橋太 | キングラン・その子会社11社を子会社化 | ★★ | ||
| 大橋太 | スターシップを子会社化 | ★ | ||
| 大橋太 | エム・アイ・シー(横浜市金沢区)を子会社化 | ★ | ||
| 大橋太 | MONAKAを子会社化 | ★ | ||
| 大橋太 | SHIP VISION 2030によるグループ再編統合と厨房業務からの撤退 2025年5月16日、シップヘルスケアホールディングスが2026年3月期から2030年3月期までの中期経営計画『SHIP VISION 2030』を公表し、重点項目の一つにグループ内再編統合を掲げた。連結グループ会社は2024年4月1日の65社から2025年4月1日に49社へ減った。 詳細を読む | ★★★ |
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事実根拠:出所(シップヘルスケアホールディングス)