シップヘルスケアホールディングス東証二部上場とセントラルユニ買収による院内設備事業の取り込み

公開で得た資金を、材料の在庫に回すか、病院の壁の内側に回すか

時期 2006年11月
意思決定者(推定) 古川國久 社長
論点 上場資金の使い道と事業領域の拡張
概要
2005年2月に東京証券取引所市場第二部へ上場したグリーンホスピタルサプライが、2006年11月に株式会社セントラルユニとその子会社5社を72億4,989万円で取得し、医療ガス配管設備の製造・メンテナンスをグループに取り込んだ経営判断。
背景
上場前は非上場企業として資金調達手段が限られていた。2005年2月の新規上場と2006年3月の公募増資により、2006年3月期だけで資本金・資本剰余金が67億5,643万円増えた。
内容
2006年11月、東京都千代田区のセントラルユニと子会社5社を連結子会社化した。取得価額72億4,989万円に対しのれんは10億2,456万円、議決権比率は54.1%で、少数株主持分54億8,831万円が連結貸借対照表に残った。
含意
医療機器・診療材料の販売に、医療ガス配管設備等の製造とメンテナンスが加わった。2007年3月期の連結売上高は788億円(前期比26.7%増)、同月には東証一部へ指定替えとなり、以後の連続買収の型が定まった。
筆者の見解

買い物の順番が示すもの

上場で得た資金の使い道として、材料流通の運転資金を厚くする道もあった。院外SPDは在庫を自社で抱える商いであり、受託先を増やすほど資金が要る。それでも同社が2006年に最も大きな額を投じた先は、病院の壁の内側に配管を敷き、保守を続ける会社であった。診療報酬引き下げで機器の買い換えが止まる一方、老朽化した病院の建て替え計画は動き出していた。売り切りではなく建物の寿命に沿って続く収益を、材料の流通とは別に確保しようとしたとみられる。

取得価額72億4,989万円に対し、のれんは10億2,456万円にとどまった。買い手にとっては安い買い物に近く、有価証券報告書が「構造改革による原価低減策や販売管理費の削減等の効果により、業績を急速に回復させ」と書いたことからも、対象が直前まで立て直しの途中にあったことがうかがえる。ただし議決権は54.1%で止め、少数株主持分54億8,831万円を3年間そのままにした。残る45.9%を株式交換で取り込んだのは2009年10月、持株会社へ移行したのと同じ月であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

非上場のまま買い進める限界

2005年2月22日、グリーンホスピタルサプライは東京証券取引所市場第二部へ上場した。1992年8月の創業から13年目にあたる。前日の2月21日に実施した有償一般募集はブックビルディング方式で、発行価格は1株40万円、引受価額は37万2,000円であった。同社はそれまで株価も期中平均株価も存在しない非上場企業で、買収資金は借入と自己資金に限られていた[1]

上場翌期の動きは速かった。2006年3月10日に二度目の有償一般募集を実施し、同月17日にはオーバーアロットメントに伴う第三者割当増資も行っている。2006年3月期の連結の自己資本は、公募増資等による資本金および資本剰余金の増加67億5,643万円と利益剰余金の増加14億822万円で膨らんだ。同期の連結売上高は622億円。手元資金の厚みは、それまでの子会社化とは桁の違う買い物を可能にした[2]

診療報酬引き下げのなかで動き出した建て替え需要

上場から2年目の医療業界は荒れていた。2007年3月期の有価証券報告書は、過去最大の診療報酬引き下げと報酬体系の変更を引き金として、医師・看護師を中心とした医療従事者の不足と地域間格差が深刻になり、病院経営環境は厳しい状況にあると書いている。医療機器の買い換え需要は抑えられ、診療材料への価格引き下げ圧力も例年になく強かった。業界全体が一時の調整に入り、同業各社も厳しい経営環境に置かれた[3]

一方で、逆向きの動きも同時に走っていた。第5次医療法改正を受け、大規模病院を中心に、老朽化と制度改正へ対応するための新・増築計画の具体化が活発になっていた。病院を建てる、あるいは建て替える案件が増えるなら、一括受注の商いは伸びる。ただし当時の同社が一括受注として提供できたのは、企画運営と医療設備のコンサルティング、機器・設備の販売とリース、建設工事、不動産賃貸までであり、病院の設備そのものを作る機能は持っていなかった[4][5]

決断

2006年11月、72億円でセントラルユニ群を取得する

2006年11月、同社は東京都千代田区の株式会社セントラルユニとその子会社5社を連結子会社にした。セントラルユニ株式の取得価額は72億4,989万円。連結開始時の同社群の流動資産は135億9,500万円、固定資産は48億8,885万円で、のれんは10億2,456万円にとどまった。取得価額のうち46億4,384万円は同社群が持っていた現金および現金同等物であり、差し引きの純支出は26億605万円であった。資産の裏づけを見て買った取引であった[6]

買い方には特徴があった。議決権の所有割合は54.1%で、100%には遠い。連結貸借対照表には少数株主持分54億8,831万円が残り、セントラルユニ自身は有価証券報告書提出会社として、また特定子会社として注記された。資本金17億700万円の相手を、過半だけ押さえて連結に取り込む形であり、残る少数株主との関係は先送りされた[7]

手に入れたのは病院の壁の内側

セントラルユニが持っていたのは、病院の設備そのものを作り、保守する機能であった。2007年3月期の有価証券報告書では、トータルパックシステム事業の説明に「主として医療ガス配管設備等の製造及びメンテナンス、医療情報システムの開発販売及び保守」が加わっている。前期の同じ項目にこの記述はない。手術室やICUへ酸素・吸引などを送る配管は、いったん納めれば建物が使われる限り保守が続く。売り切りの機器販売とは収益の続き方が異なる[8]

子会社5社も一緒に付いてきた。株式会社エフエスユニ、株式会社エフエスユニマネジメントに加え、韓国慶尚南道馬山市の韓国セントラル株式会社と韓国ユニ株式会社、台北市の台湾優寧股份有限公司が名を連ねる。関西発の医療商社が、この一件で海外に法人を持つ企業群を抱えた。もっとも中核はあくまで国内の設備事業にあり、海外子会社の規模は資本金でみて数億ウォン、数百万台湾ドルにとどまっていた[9]

結果

増収増益と、市場第一部への指定替え

2007年3月期の連結売上高は788億4,543万円で前期比26.7%増、営業利益32億9,701万円で2.1%増、経常利益36億4,301万円で9.5%増、当期純利益は24億6,858万円で45.5%増となった。トータルパックシステム事業の売上高は383億5,337万円と21.0%伸び、営業利益は33億6,373万円。有価証券報告書は、当期に連結会社となったセントラルユニグループ各社が構造改革による原価低減策や販売管理費の削減で業績を急速に回復させ、ほぼ当初予定通りの業績を収めたと記した。連結従業員数は757名増え、1,377名になった[10][11]

買収から4カ月後の2007年3月、同社は東京証券取引所市場第一部へ指定変更となった。二部上場から2年での移行にあたる。同じ月に株式会社仙台調剤とアイネット・システムズ株式会社およびその子会社1社も子会社化しており、仙台調剤の取得価額は41億7,389万円、のれんは29億902万円であった。1年のうちにサンライフ、セントラルユニ、仙台調剤、アイネット・システムズと4件を重ね、連結貸借対照表ののれんは74億9,983万円へ増えた[12][13]

過半で止めた買収の後始末

54.1%で止めた取引には続きがあった。2009年5月にシップヘルスケアホールディングス株式会社を設立し、同年10月に分社型吸収分割で事業を承継させて持株会社体制へ移行すると、同じ月にセントラルユニとの株式交換を実施した。連結貸借対照表に3年間残っていた少数株主持分は、この株式交換で解消された。買収から完全子会社化までに3年を要したことになる[14]

取り込んだ設備事業は、その後も名前を残した。2025年3月期の決算説明資料では、セントラルユニがメーカー系の中核として手術データからの運用改善サービス、手術準備支援アプリの共同開発、IoTを使った手術室内の空間可視化という三つの戦略を担っている。2026年3月期のトータルパックプロデュース事業のうちメーカー系の売上高は330億6,100万円で、セグメント売上1,366億円の4分の1近くを占めた[15][16]

出典・参考
  • グリーンホスピタルサプライ 有価証券報告書(2006年3月期)【事業の内容】【株式等の状況】【財政状態】
  • グリーンホスピタルサプライ 有価証券報告書(2007年3月期・連結)【沿革】【事業の内容】【関係会社の状況】【業績等の概要】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
  • シップヘルスケアホールディングス 有価証券報告書【沿革】
  • シップヘルスケアホールディングス 2025年3月期 決算説明資料(中期経営計画 SHIP VISION 2030)
  • シップヘルスケアホールディングス 2026年3月期 決算説明会資料

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