ケイアイスター不動産東証2部への上場と1年での1部指定、地場住宅会社の連続買収による全国展開

北関東の地場ビルダーにとどまるか、公開会社の信用で商圏を全国へ広げるか

時期 2015年12月
意思決定者(推定) 塙圭二 社長
論点 上場による資金・信用の獲得と、買収を通じた商圏の拡大
概要
2015年12月24日、ケイアイスター不動産は東京証券取引所市場第二部に上場し、1年後の2016年12月に第一部へ銘柄指定された。上場直後から地場の住宅会社を続けて子会社化し、1都4県の地場ビルダーから全国規模の住宅会社へ商圏を広げた。
背景
上場前の事業エリアは東京都・埼玉県・群馬県・栃木県・茨城県の1都4県であった。同社は長期的に人口減少で住宅着工数も減ると予測し、現エリアでのシェア拡大と出店によるエリア拡大を掲げる一方、事業用地と運転資金を借入に依存する財務体質を課題に挙げていた。
内容
2015年12月22日付の有償一般募集で105万株を発行し、資本金と資本剰余金は合わせて11億6,550万円増えた。上場直後の有価証券報告書はM&Aによる業容拡大を明記し、2016年4月にフランチャイズ第一号だったよかタウンを初の連結子会社とした。
含意
旭ハウジング・建新・ケイアイプレスト・エルハウジング・新山形ホームテック・TAKASUGIと買収が続き、連結売上高は上場時の387億円から2025年3月期の3,425億円へ伸びた。一方で経常利益は2022年3月期の232億円から151億円へ戻り、規模と利益率の両立が残された。
筆者の見解

買えたのは資金ではなく信用であった

上場で得た資金で地方の同業を買い集めた、と読むと順序が合わない。公募増資で増えた資本金と資本剰余金は合わせて11億6,550万円にすぎず、その後の買収を賄える額ではなかった。効いたのは金額よりも、公開会社という立場そのものであったとみられる。事業を託す側から見れば、相手が東証二部、1年後には第一部の会社であり、有価証券報告書にM&Aによる業容拡大を書いていることが、地場で築いた会社を手放す判断を支える材料になる。

もっとも、買収を重ねて増えたのは売上高であって利益率ではない。連結売上高は上場時の387億円から2025年3月期の3,425億円へ約8.8倍になったが、経常利益は2022年3月期の232億円を境に151億円まで戻った。事業用地と運転資金を借入に頼る財務体質は、上場前の有価証券報告書が自ら課題に挙げていたところで、金利が上がるほど棟数を追う戦い方は重くなる。規模で得た調達力を利益率でどう返すかが、拡大の後に残ったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

1都4県の地場ビルダーという位置

上場前のケイアイスター不動産は、東京都・埼玉県・群馬県・栃木県・茨城県の1都4県に地域密着型の店舗を置く地場ビルダーであった。土地の仕入れからアフターサービスまで自社で担う体制を敷き、工期短縮と工程改善で原価を下げて「高品質だけど低価格」な住宅を売る型を作っていた。2016年3月期の分譲住宅は販売棟数が前期より341棟増えて1,115棟、単体の売上高は387億円であった[1][2]

同社は自らの市場を縮むものとみていた。有価証券報告書は、長期的には人口減少に伴って住宅着工数も減ると予測したうえで、現エリアでのシェア拡大と出店によるエリア拡大を並べ、規模を広げてスケールメリットで建築コストを下げる方針を書いている。同じ報告書は、事業用地と運転資金を金融機関からの借入に頼ってきたため有利子負債の比率が高く、金利動向に左右される財務体質だとも認めていた[3][4]

決断

上場と、その直後に書かれたM&A方針

2015年12月24日、ケイアイスター不動産は東京証券取引所市場第二部に上場した。公開価格1,200円に対して初値は1,282円、終値は1,210円であった。12月22日付の有償一般募集で105万株を発行し、資本金と資本剰余金は合わせて11億6,550万円増えた。塙圭二社長は上場当日に年間販売棟数で3,000棟を目指すと述べ、その8日前の取材では販売棟数で日本一になると語っている[5][6][7]

公募で得た11億円は、住宅会社を買い集めるには小さい額であった。それでも上場後最初の有価証券報告書は、事業エリアの拡大について、特殊な地域性をもつ地域への業容拡大やシナジー効果による業容拡大をM&Aにより進める予定だと明記した。実際に2016年4月、フランチャイズ第一号だったよかタウンの株式を追加取得して初の連結子会社とし、同年12月には市場第二部から第一部へ銘柄指定された。上場から1年であった[8][9][10]

結果

買収の連続と店舗網の拡大

連結決算の初年度となった2017年3月期の売上高は512億5,760万円、経常利益は39億9,696万円であった。買収はその後も途切れず、2017年4月に旭ハウジング、2019年1月に建新、2021年1月にケイアイプレスト、2023年4月にエルハウジング、2024年4月に新山形ホームテック、2024年5月にTAKASUGIが順にグループへ入った。買収先はいずれも地方の住宅会社で、商圏を面で買う形が繰り返された[11][12][13]

出店も同時に速めた。週刊東洋経済の2021年1月16日号で塙圭二社長は必勝モデルができ上がったと述べ、地域ごとのシェアはまだ3%以下から10%にとどまるとして、その期の営業所を初進出の関西圏を含めて52店舗純増させ合計148店舗にする方針を示している。2023年6月の取材では、地方の住宅会社の買収を進めて1年で戸建て住宅の販売店舗数を12%増の200店にすると語り、2025年3月期末の営業所数は201店舗となった[14][15][16]

出典・参考

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