ケイアイスター不動産世帯収入300万〜500万円台の一次取得層に向けた規格型注文住宅「はなまるハウス」の投入

分譲住宅で稼ぎ続けるか、賃貸にとどまる層を持ち家市場へ引き込むか

時期 2009年8月
意思決定者(推定) 塙圭二 社長
論点 低価格帯注文住宅への参入と顧客層の設定
概要
2009年8月、ケイアイスター不動産は注文住宅「はなまるハウス」の提供を始めた。世帯収入が年300万円から500万円台で住宅を初めて買う若年層を主要顧客に置き、自由設計ではなく規格型の商品として売り出した。分譲住宅に偏っていた事業構成を、注文住宅の低価格帯へ広げる商品投入であった。
背景
同社は1990年の創業以来、分譲住宅の販売と施工の内製化で伸びてきた。注文住宅を扱い始めたのは2006年9月であり、収益は分譲住宅への依存度が高い状態にあった。そこへ2008年秋の金融危機が重なり、2009年の新設住宅着工戸数は前年比27.9%減と45年ぶりに80万戸を割り込んだ。
内容
「無理しない。でも妥協しない。870万円からの家づくり」を掲げ、100種類以上の間取りから選ぶ規格型注文住宅として設計した。自由設計の「ケイアイカーザ」を別に用意し、注文住宅事業を価格帯の異なる二本立てとした。分譲住宅で積んだ工期短縮と原価低減の手法を注文住宅へ移した。
含意
2016年3月期の注文住宅事業は売上高が前期比5.7%減となる一方、営業利益は71.0%増えた。低単価でも利益が残る作りを確かめたうえで、2015年5月に九州のよかタウンとフランチャイズ第一号契約を結び、翌年には同社を子会社化した。加盟から資本参加へ進む型がここで生まれたとみることができる。
筆者の見解

価格から逆算した商品

低価格帯への参入とだけ読むと、この判断の順序を取り違える。ケイアイスター不動産が先に決めたのは商品ではなく客であった。世帯収入300万円から500万円台という帯を定め、そこから逆算して本体870万円という価格を置き、100種類以上の規格プランはその価格を守るための手段として用意された。自由設計の「ケイアイカーザ」を別立てにしたのも、価格の異なる客を一つの商品で追わないためだったとみられる。

もっとも、投入から数年の注文住宅事業は会社を牽引する規模ではなかった。2016年3月期の売上高は46億円で前期より減り、分譲住宅事業の294億円には遠く及ばない。フランチャイズ第一号の契約も6年後の2015年5月であった。それでも棟数を保ったまま営業利益を71.0%伸ばしたことは、価格を下げても利益が残る作り方の裏づけになった。後の全国展開が加盟から子会社化へ進む型を取れたのも、この検算が先にあったからだとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

分譲住宅に偏った収益

ケイアイスター不動産は1990年11月に埼玉県本庄市で有限会社ケイアイプランニングとして創業し、不動産の売買と賃貸から出発した。1994年2月には住宅の建設を目的に株式会社グランビルホームを設けて施工を自社に取り込み、分譲住宅の販売で足場を固めた。注文住宅を扱い始めたのは2006年9月に注文住宅事業部を置いてからで、翌2007年4月にはマンション事業部も加えた。後年の有価証券報告書が認めるとおり、収益は分譲事業への依存度が高かった[1][2]

そこへ住宅市場の急収縮が重なった。2008年秋の金融危機を受けて、2009年の新設住宅着工戸数は前年比27.9%減となり、45年ぶりに80万戸を割り込んだ。貸家と分譲マンションが急落し、着工の構成そのものが変わった。用地と在庫を抱える地場のビルダーには売り先が細る事態であったが、頭金を用意できずに賃貸へとどまる若い世帯は残っていた。まだ持ち家を買っていない層をどこに見つけるかが、縮む市場に残された余地であった[3][4]

決断

価格を先に決めて設計した規格型注文住宅

2009年8月、ケイアイスター不動産は注文住宅「はなまるハウス」の提供を始めた。狙いを定めたのは、世帯収入が年300万円から500万円台で住宅を初めて買う一次取得の若年層であった。塙圭二社長は2015年12月の上場に際しても、世帯収入が年300万円から400万円台で住宅を初めて購入する層を主要顧客としていると説明している。大手ハウスメーカーが標準としてきた価格帯より下に、意図して顧客を置いた[5][6][7]

商品は自由設計ではなく規格型とした。「無理しない。でも妥協しない。870万円からの家づくり」を掲げ、100種類以上の間取りから選ぶ方式を採って、価格を先に置いてから仕様を組み立てた。同時に、イタリアの高級住宅を思わせる設計の自由型注文住宅「ケイアイカーザ」を別に用意し、注文住宅事業を性質の異なる二商品で構成した。分譲住宅で積み上げてきた工期短縮と工程改善による原価低減を、そのまま注文住宅へ移す設計であった[8][9]

結果

売上高より利益に表れた効果

効果は売上高ではなく利益に表れた。2016年3月期の注文住宅事業は、販売棟数が4棟増の314棟となる一方、売上高は5.7%減の46億1,993万円にとどまった。単価の低い「はなまるハウス」へ主力を移したためで、営業利益は逆に71.0%増の5億9,607万円へ伸びた。同期の分譲住宅事業の売上高294億5,774万円に比べれば小さい。翌2017年3月期は販売棟数350棟・売上高48億8,251万円・営業利益9億2,585万円となった[10][11][12]

販路は直営の外へも伸びた。2015年5月、福岡県の株式会社よかタウンと同社第一号のフランチャイズ契約を結び、「はなまるハウス」を九州へ持ち込んだ。上場直後の有価証券報告書は、分譲事業への依存度が高いことを課題に挙げ、「はなまるハウス」について営業拠点の出店に加えフランチャイズによる拡大を図ると記している。そして2016年4月、よかタウンの株式を追加取得して子会社とし、加盟による検証から資本参加へ切り替えた[13][14][15]

出典・参考

免責事項およびポリシー