ファーストリテイリング 低価格GUの設立 主力ブランドより安い価格帯を担う新ブランドの立ち上げ

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時期 2006年3月
当時の社長 柳井正
論点 価格帯別マルチブランド戦略と国内低価格市場の防衛
何をなぜ決めたか
概要

2006年3月、ファーストリテイリングは低価格なカジュアル衣料品を販売する株式会社ジーユー(GU)を全額出資で設立し、同年10月に店舗の開業を始めた。2007年8月末で50店舗、創業赤字だった。グローバル旗艦店戦略でユニクロの価格帯が緩やかに上がるなか、空く国内の低価格市場を自社の別ブランドで埋める価格帯別マルチブランド戦略の始まりだった。

背景

グローバル旗艦店の展開に伴い、ユニクロは大型店を軸とする高品質・高価格帯へ移りつつあった。かつての"安い普段着"から離れるほど、国内の低価格衣料市場に空白が生じ、その市場を他社に奪われる恐れが高まった。

内容

ユニクロで組み上げた製造小売業(SPA)の運営ノウハウと中国調達を転用し、ユニクロより低い価格帯を担うGUを設けた。ブランド・商品開発・店舗運営を切り分け、ユニクロとGUのカニバリゼーション(共食い)を避ける設計とした。

含意

同一企業が価格帯別に2ブランドを持つ構造は、ザラとベルシュカを擁するスペインのインディテックスと同型である。ユニクロの世界展開が国内低価格帯に空けた穴をGUで自ら埋める二段構えは、国内市場の防衛であると同時に、第二の主力事業づくりでもあった。

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筆者の見解
筆者の見解

グローバル化の裏で打った「価格帯の穴埋め」

この意思決定の核心は、新規事業の派手さではなく、自社の成功が生む副作用を先回りして埋めた点にある。ユニクロがグローバル旗艦店で高品質・都市型ブランドへ移るほど、かつて自社が握っていた国内の低価格帯に空白が生まれる。その空白を競合に渡せば、いずれ自社の顧客が削られる。ファーストリテイリングは、その穴を他社ではなく自社の別ブランドで埋める道を選び、ユニクロのSPAという既存資産を転用してコスト優位を持ち込んだ。

同一企業が価格帯別に複数ブランドを運用する構造は、ザラとベルシュカを擁するスペインのインディテックスと同型である。GUは追随ではなく、ユニクロの垂直補完として設計された。グローバル旗艦店戦略とGU設立が同じ2006年に打たれた事実は、価格帯を上げる動きと下の帯を守る動きを同時に走らせた、表裏一体の判断であったことを示す。好調な主力事業ほど、その成功が自ら空ける穴に気づきにくい。2006年の選択は、主力の成長がもたらす死角を別ブランドという資産で先回りして埋めた事例といえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
設立の条件

設立の条件

科目 概要 備考
設立 2006年3月 「ユニクロ」に次ぐブランド開発として設けた新ブランドの運営会社
会社名 株式会社ジーユー 本店所在地は東京都千代田区
資本金 450,000千円 2007年8月末時点
議決権の所有割合 100.0% 全額出資。第45期は非連結子会社、第46期から連結子会社
ブランド g.u.(ジーユー) ファミリーカジュアルの新ブランド
店舗の開業 2006年10月 設立の7か月後。第45期の有価証券報告書の提出前に開業が始まった
店舗数 50店舗 2007年8月31日現在。この期は創業赤字で、事業基盤の構築段階にあった
店舗等の帳簿価額 1,373百万円 2007年8月末の国内事業店舗等。従業員は58名

出所:ファーストリテイリング 有価証券報告書 第45期(2006年8月期)【沿革】【関係会社の状況】・第46期(2007年8月期)【事業の内容】【関係会社の状況】【設備の状況】

連結業績の推移

ファーストリテイリング:連結業績の推移

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2002年8月期 344,17051,11027,850
2003年8月期 309,78941,56920,933
2004年8月期 339,99964,18331,365
2005年8月期 383,97358,60733,884
2006年8月期 448,81973,13840,437 3月にジーユーを設立。この期は非連結子会社で、業績への影響はない
2007年8月期 525,20364,60431,775 ジーユーを連結子会社化。50店舗を出店したが創業赤字だった
2008年8月期 586,45185,69843,529 9月にワンゾーン・ビューカンパニーと統合しGOVリテイリングとなる
2009年8月期 685,043101,30849,797 3月の「990円ジーンズ」を機にジーユー事業の売上高と収益が改善
2010年8月期 814,811123,75561,681 ジーユー事業は8月末で115店舗、通期43店舗増
2011年8月期 820,349107,09054,354 心斎橋と池袋東口に旗艦店を出店。9月に商号をジーユーへ戻した
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:ファーストリテイリング 有価証券報告書 第44期・第49期・第50期【主要な経営指標等の推移】(連結経営指標等)

同じ問いに直面した会社

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2002年ユキグニファクトリー競合主力のぶなしめじ・エリンギへの参入と生産拠点の増設まいたけ1品目への依存ときのこ品目の拡大
2011年ANAホールディングス格安航空(LCC)への参入と二ブランド体制の構築格安航空(LCC)市場への参入とブランド戦略
2001年ホクトまいたけ市場への参入と、赤字を織り込んだ値下げの継続単品依存の解消と価格競争
1997年KDD企業向け国内電話への参入と、列島周回海底ケーブルの敷設事業構造と新規参入
隣接領域への展開1994年第二電電地域別9社によるポケット電話会社の設立移動体通信の第二系統と地域別会社の設計
1972年カシオ計算機12,800円という個人が買える価格の設定と、電卓の大衆化電卓の低価格化と個人市場の創造
1992年東海カーボン同年創業の同業との合流による、炭素製品国内首位の総合メーカーへの再編黒鉛電極の国際競争力と事業構成の再編
1947年三洋電機松下を退いての独立と、北条工場を拠点とする総合家電への出発自転車用発電ランプの事業化(公職追放を機に松下を退いた専務による独立起業)
2007年富士フイルム写真技術の化粧品への転用と、スキンケアブランドによる新市場への進出技術転用と多角化
参考文献
出典・参考

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