低価格ブランド「ジーユー(GU)」の設立
2006年実施グローバル旗艦店でユニクロの価格帯が上がるなか、ファーストリテイリングはなぜ国内の低価格市場を自社の別ブランドで埋める道を選んだのか
- 概要
- 2006年3月、ファーストリテイリングは低価格なカジュアル衣料品を販売する株式会社ジーユー(GU)を設立し、同年内に1号店を開いた。グローバル旗艦店戦略でユニクロの価格帯が緩やかに上がるなか、空く国内の低価格市場を自社の別ブランドで埋める価格帯別マルチブランド戦略の始まりだった。
- 背景
- グローバル旗艦店の展開に伴い、ユニクロは大型店を軸とする高品質・高価格帯へ移りつつあった。かつての「安い普段着」から離れるほど、国内の低価格衣料市場に空白が生じ、その市場を他社に奪われる恐れが高まった。
- 内容
- ユニクロで組み上げた製造小売業(SPA)の運営ノウハウと中国調達を転用し、ユニクロより低い価格帯を担うGUを設けた。ブランド・商品開発・店舗運営を切り分け、ユニクロとGUのカニバリゼーション(共食い)を避ける設計とした。
- 含意
- 同一企業が価格帯別に2ブランドを持つ構造は、ザラとベルシュカを擁するスペインのインディテックスと同型である。ユニクロの世界展開が国内低価格帯に空けた穴をGUで自ら埋める二段構えは、国内市場の防衛であると同時に、第二の成長の柱づくりでもあった。
グローバル化の裏で打った「価格帯の穴埋め」
この意思決定の核心は、新規事業の派手さではなく、自社の成功が生む副作用を先回りして埋めた点にある。ユニクロがグローバル旗艦店で高品質・都市型ブランドへ移るほど、かつて自社が握っていた国内の低価格帯に空白が生まれる。その空白を競合に渡せば、いずれ自社の顧客が削られる。ファーストリテイリングは、その穴を他社ではなく自社の別ブランドで埋める道を選び、ユニクロのSPAという既存資産を転用してコスト優位を持ち込んだ。
同一企業が価格帯別に複数ブランドを運用する構造は、ザラとベルシュカを擁するスペインのインディテックスと同型である。GUは追随ではなく、ユニクロの垂直補完として設計された。グローバル旗艦店戦略とGU設立が同じ2006年に打たれた事実は、価格帯を上げる動きと下の帯を守る動きを同時に走らせた、表裏一体の判断だったことを示す。
好調な主力事業ほど、その成功が自ら空ける穴に気づきにくい。ユニクロの高付加価値化と国内低価格帯の防衛を同じ年に手当てした2006年の選択は、主力の成長がもたらす死角を、別ブランドという資産で先回りして埋めた事例として示唆に富む。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
グローバル化で上がるユニクロと、空く国内低価格帯
2006年、ファーストリテイリングはニューヨーク・ソーホーに1000坪のグローバル旗艦店を開き、「今のユニクロで最高水準の商品、売場、サービスを表現する」と掲げた。グローバル旗艦店の展開と国内の大型店化に伴い、ユニクロのブランドは高品質・高価格帯へ移りつつあった。かつての「安くて品質の良い普段着」から離れるほど、国内の低価格衣料市場に空白が生じ、その市場を他社に明け渡す恐れが高まった[1]。
決断
ユニクロのSPAを転用した低価格ブランドの設立
ファーストリテイリングは、空く国内低価格帯を他社に渡さず自ら埋めるため、2006年3月に低価格なカジュアル衣料品を販売する株式会社ジーユー(GU)を設立し、同年内に1号店を開いた。仕入れではユニクロで築いた製造小売業(SPA)の仕組みと中国調達をそのまま活用し、コスト優位を確保した。ショッピングセンターやロードサイドでの展開を志向し、ユニクロより明確に低い価格帯を担わせた[2]。
ブランドを分けたのは、ユニクロとGUの間で価格帯のカニバリゼーション(共食い)を避けるためだった。ブランド名・商品開発・店舗運営を切り分けつつ、SPAの調達と運営のノウハウは共有する設計で、既存のユニクロ事業を土台に低価格帯へ手を伸ばした。ユニクロのグローバル化が国内低価格帯に空けた穴を、その同じ会社がGUで埋めるという二段構えの構図が固まった[3]。
結果
第二の柱への成長と海外への広がり
GUは当初こそ低価格戦略の方向性を探ったが、のちにトレンドを採り入れた低価格ファッションとして支持を集め、ファーストリテイリングにとってユニクロに次ぐ第二の事業の柱へ育った。2013年にはジーユー海外進出の第一歩として上海店を開き、国内で確立した低価格ファッション業態を海外へも広げ始めた。設立の年である2006年8月期のファーストリテイリングは連結売上高4488億円・営業利益704億円を計上しており、ユニクロで得た収益力を新ブランドの育成へ回す体力があった[4][5]。
- ファーストリテイリング 有価証券報告書【沿革】
- ファーストリテイリング アニュアルレポート2006「トップメッセージ」(https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/annual2006_ja.pdf)
- ファーストリテイリング 有価証券報告書(2006年8月期)