メンズショップ小郡商事の開業(1949年・ファーストリテイリングの決断)

更新:
論点 宇部市で紳士服の店を開くか
会社組織を持たない個人営業での、宇部市の紳士服小売の開始

何をなぜ決めたか:会社組織を持たない個人営業での、宇部市の紳士服小売の開始

概要

1949年3月、柳井等氏が山口県宇部市で「メンズショップ小郡商事」を開業した。会社組織は作らず、個人営業の店として始めている。同じ年の2月7日には、柳井等氏の子で、のちに社長となる柳井正氏が生まれた。

個人営業は14年続いた。1963年5月、経営の基盤を整えるために法人化し、個人営業を引き継いで資本金600万円の小郡商事株式会社を設立した。本店は宇部市大字小串63番地147に置き、この場所は現在の宇部市中央町二丁目12番12号にあたる。

背景

個人営業の時期から、店は家族以外の働き手を抱えていた。1960年3月には浦利治氏がメンズショップ小郡商事に入店している。浦利治氏は法人化後の1981年3月に取締役、1993年9月に常務取締役となり、1999年11月から常勤監査役を務めた。開業期の店員が、上場後の会社に役員として残った。

法人化の後、店は宇部市の外へも出た。1969年3月、福岡県の第1号店として北九州市にメンズショップOS小倉店を出店した。ただし、この店は1972年3月に閉じ、県外への出店は3年で終わった。

内容

家業を承継する準備は1970年代に始まった。柳井正氏は1972年8月に小郡商事へ入社し、翌9月に取締役、1973年8月に専務取締役となった。入社から社長就任までは12年を要している。

1984年は、紳士服の店がカジュアルウエアの店へ替わり始めた年である。2月に販売代行部門としてオーエス販売株式会社を設立し、6月には広島市にユニクロ袋町店を出してカジュアルウエア小売業に進出した。9月、柳井正氏が代表取締役社長に就任した。

含意

開業時の商いは、1990年代の初めに姿を消した。1991年5月にオーエス販売との資本関係を解消し、翌6月に同社の全従業員を小郡商事へ移した。同年9月、商号を小郡商事株式会社から株式会社ファーストリテイリングに改めた。1992年4月には紳士服販売店OS本店をユニクロ恩田店に替え、全店をユニクロに統一した。開業から43年後である。

一方、店の持ち主の形は上場後も変わらなかった。2000年8月末の大株主は、柳井正氏の26.68%を筆頭に、柳井一海氏・柳井康治氏・柳井照代氏を合わせた柳井姓の4名で45.77%を占めた。個人営業の店は、2025年8月期に売上収益3兆4,005億円の企業となっている。

いつ何が起きたか 12件
考察:個人営業で始めた店の持ち主の形
考察

考察:個人営業で始めた店の持ち主の形

なぜ柳井等氏は会社を設立せずに開業したのか。一軒の店を家族と少数の店員で回すなら、個人営業で足りる。法人にすれば、帳簿や登記の手間が先に立つ。会社にしたのは開業から14年後の1963年5月で、その理由は経営の基盤を整えることだった。その間の1960年には、浦利治氏を店員として雇っている。店の規模が個人の家計で支えられる大きさを超えたところで、初めて法人化が要るようになったのだろう。

もっとも、法人化しても商いの中身は変わらなかった。1969年に出した福岡県の店は3年で閉じ、カジュアルウエアへ進出したのは1984年6月である。宇部市の紳士服店として長く続いたことは、地元で店が安定していた証でもある。同時に、1972年に入社した柳井正氏が社長として業態を替えるまでに、12年を要した理由でもあったと思われる。創業の形が強く残るほど、それを替える側の時間は長くなる。

柳井正氏は、紳士服を分離してから新しい業態へ転換する順番を選んだ。1984年2月にオーエス販売を設け、6月にユニクロ袋町店を出店し、1992年4月にOS本店をユニクロ恩田店へ替えた。開業から43年で、紳士服の店は無くなった。それでも、2000年8月末には柳井姓の4名が45.77%を持っていた。開業時から引き継がれたのは商品ではなく、一族が経営を決める持ち主の形だったとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
資本金の推移
参考文献

参考文献

参考
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書 第39期(2000年8月期)【沿革】
  • ファーストリテイリング PRESS PACK(2006年11月1日現在)【沿革】
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書 第39期(2000年8月期)【役員の状況】【沿革】
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書 第39期(2000年8月期)【役員の状況】
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書 第39期(2000年8月期)【大株主の状況】
  • ファーストリテイリング 会社資料「PRESS PACK(2006年11月1日現在)」
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書「第39期(2000年8月期)【沿革】【役員の状況】【大株主の状況】」
  • ファーストリテイリング 有価証券報告書「第64期(2025年8月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」

次に読む決断

免責事項およびポリシー