GMOペイメントゲートウェイGMOグループ傘下入りと同業決済代行2社の連続譲受

4年で4度替わった親会社の下で、加盟店をどう一気に積み増したか

時期 2004年9月
意思決定者(推定) 相浦一成・熊谷正寿(グローバルメディアオンライン代表取締役会長兼社長) 社長
論点 資本の帰属と事業規模の確保
概要
2004年7月、グローバルメディアオンライン(現GMOインターネットグループ)が株式交換で持株会社CCSホールディングを完全子会社化し、決済代行のカードコマースサービスをグループへ迎えた。同社は同年9月と11月に同業2社の決済事業を相次いで譲り受け、2005年2月にGMOペイメントゲートウェイへ商号を変更した経営判断。
背景
1995年設立の同社は2000年3月以降、インテグラン・エムティーアイ・CCSホールディングと親会社が入れ替わり続けた。稼動店舗数は2004年9月末で6,837店。決済代行は加盟店数がそのまま収益に積み上がる業態で、規模の先行が競争条件となっていた。
内容
2004年7月に株式交換契約を締結してGMOグループ入りし、9月にアスナルから、11月30日にグループ内のペイメント・ワンから、それぞれクレジットカード決済事業を譲受。ペイメント・ワンの譲受価額は275百万円で、従業員7名と特許・商標も引き継いだ。
含意
譲受で生じた営業権270,194千円は譲受日付で一括償却し、2005年9月期の当期純利益は30,173千円にとどまった。一方で稼動店舗数は1年で6,837店から16,530店へ増え、商号変更2か月後の2005年4月に東証マザーズへ上場した。
筆者の見解

資本が先に動き、統合すべき相手がそこにいた

一連の動きで実際に動いた金額は大きくない。ペイメント・ワンの営業譲受価額は275百万円で、当時の年間連結売上高13億円に照らしても手が届く水準であった。効いたのはむしろ順番である。親会社が入れ替わる過程でCCSホールディングという受け皿ができ、その受け皿ごとGMOグループへ渡り、渡った先には同種の決済子会社が既にあった。買収の相手を探し歩いた結果というより、資本の移動が先にあって、統合すべき相手がそこに用意されていた。

決済代行は、加盟店をひとつずつ増やしていく地道な商売である。その地道さの上に、1年で稼動店舗を2.4倍にする外からの積み増しが乗った。2005年9月期に一括償却した営業権270,194千円は、その期の純利益を30,173千円まで押し下げている。20年後の2025年9月期、同じ会社の連結売上高は824.9億円になった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

4年で3度替わった親会社

1995年3月、東京都渋谷区に資本金60百万円でカード・コール・サービス株式会社が設立された。目的はクレジットカード決済処理業務で、加盟店とカード会社の間に立ち、非対面の決済データを処理する事業である。1999年3月に「CCS-Wareソリューション」の販売とクレジットカード洗替サービスを始め、2000年8月には大阪営業所を開いた。同年11月には代表加盟店契約による事務代行サービスとカード会社へのOEM提供を開始し、商号を株式会社カードコマースサービスへ改めている。設立から5年で、決済代行という業態の輪郭は固まっていた[1]

一方で、資本の側は落ち着かなかった。2000年3月にインテグラン株式会社が株式を取得して親会社となり、同年9月には株式会社エムティーアイがインテグランから株式を引き取った。2004年7月にはエムティーアイが同社株式を保有する持株会社CCSホールディング株式会社を設立し、親会社はさらにCCSホールディングへ移っている。事業そのものは伸びており、稼動店舗数は2001年9月末の764店から2004年9月末には6,837店になっていた。それでも4年で3度替わった資本の持ち主は、この会社が親の事業構想に従属する立場であったことを示している[2][3]

加盟店の数がそのまま競争条件になる業態

2000年代前半、オンラインで代金を受け取りたい事業者は急速に増えたが、その受け皿となる決済代行会社は小さな事業者に分かれていた。カードコマースサービスと競合する株式会社ペイメント・ワンは1999年12月に設立され、グローバルメディアオンライン株式会社(現GMOインターネットグループ)の連結子会社としてクレジットカード決済処理サービスを提供していた。EC事業者から見れば同種のサービスが並立し、接続先のカード会社から見れば小口の接続が乱立する状態であった[4]

決済代行の収益は、加盟店から受け取る月次の固定費と、処理件数に応じた従量課金で積み上がる。稼動する店舗が増えるほど収益は厚くなり、いったん組み込んだ決済システムは容易には入れ替えられない。有価証券報告書も「他社サービスへの乗換えが容易ではないシステム・サービス特性」を挙げ、その裏返しとして稼動店舗数の増加ペースが鈍る事態を業績上の危険として記していた。加盟店の数で先んじられなかった事業者は、後から追い抜くことが難しくなる。規模を早く積むことが、この業態では競争の中身そのものであった[5]

決断

株式交換で持株会社ごとGMOへ渡る

2004年7月、グローバルメディアオンラインは株式交換によりCCSホールディング株式会社を完全グループ会社化することを決議し、株式交換契約書を締結した。同社の会社沿革は、これにより「同事業分野において最大級の事業規模と実績を誇る」カードコマースサービスがグループに参画したと記している。取得は2004年9月に完了し、同社は設立から9年で4社目の親会社を迎えた。エムティーアイが決済子会社の上場準備をにらんで作った持株会社が、そのままGMO側への受け渡しの枠組みになった[6][7]

新しい親会社は、経営の中身には深く手を入れなかった。2005年9月30日時点で同社の役員9名のうちグローバルメディアオンライン(現GMOインターネット)の役員を兼ねるのは、取締役会長(非常勤)の熊谷正寿氏と監査役(非常勤)の安田昌史氏の2名にとどまる。有価証券報告書はこの非常勤取締役について「業務を遂行するために招聘されたものではなく」、事業への助言を目的とする招聘であって経営執行に与える影響は限定的だと説明している。2000年4月に代表取締役社長へ就いた相浦一成氏は、親会社の交代を通じて社長の座にとどまり続けた[8]

同業2社の決済事業を2か月で吸収する

傘下入りと同時に始まったのが、同業の決済事業の取り込みである。2004年9月に株式会社アスナルからクレジットカード決済事業の営業を譲り受け、11月10日にはグループ内のペイメント・ワンと営業譲渡契約を結んで、同月30日に営業の全部を譲り受けた。譲受価額は275百万円で、ペイメント・ワンに在籍していた従業員7名は12月1日付で移籍している。ソフトウェア関連の取得済み特許1件と出願中3件、商標権1件も同時に引き継いだ。2か月のうちに、競合2社の加盟店と技術者と権利がひとつの会社へ集まった[9][10]

譲受の理由について、有価証券報告書は「営業基盤拡大による業務効率、収益性、競争力の向上を図るためには株式会社ペイメント・ワンの経営資源を統合することが不可欠と判断した」と記している。会計処理は踏み込んだものであった。譲受で生じた営業権270,194千円を、譲受日である2004年11月30日付で一括償却し、特別損失として計上している。買った営業基盤を資産として残さず初年度に落とし切る処理で、上場を目前にした身軽さを優先したものといえる。2005年1月にはCCSホールディングがグローバルメディアオンラインに吸収合併され、同社はGMOの直接子会社となった[11][12]

結果

商号変更2か月後の上場と加盟店2.4倍

2005年2月、商号を「GMOペイメントゲートウェイ株式会社」に変更し、その2か月後の4月に東京証券取引所マザーズへ上場した。5月には中小加盟店を得意とするイプシロン株式会社を子会社化している。株式会社J-Paymentとの提携や大手モール事業者との業務提携の本格化も重なり、2005年9月期の稼動加盟店増加数は9,693店に達した。期末の累計稼動店舗数は16,530店で、1年前の6,837店から2.4倍になっている。年間の増加数が、それまでの累計を上回った計算になる[13][14]

業績は、譲受の代金を先に落とした形で着地した。2005年9月期の連結売上高は1,305,157千円、営業利益は323,328千円、経常利益は295,828千円となったが、ペイメント・ワンからの営業権270,194千円を特別損失として一括償却したため、当期純利益は30,173千円にとどまった。従業員は48名で、16,530店の加盟店をこの人数で支えていた。2008年9月には東京証券取引所市場第一部へ上場市場を変更し、決済代行の専業上場会社として国内での位置を固めている[15][16]

出典・参考

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