上場企業の経営論点>競争戦略・投資
プラットフォームの構築
プラットフォームを握った企業は、いずれも自社の取り分を先に減らしている。セイコーは世界初のクオーツウオッチの特許を公開して独占を手放し、機械式時計を駆逐する市場そのものを作った。日本ビクターはVHSを他社へ広く供与して規格戦争に勝ち、シチズン時計はムーブメントを競合へ外販して量産で世界一を取る。供与先の数が技術の優劣を上回った。ソニーがPlayStationで参入し、任天堂がソニー連合と決別した1990年代半ば以降、争点は開発者をどちらへ集めるかに移っている。ダイキン工業が冷媒R32の特許を無償開放したのも、独占より普及を優先した判断だった。収益源も変質し、セブン銀行は金利差ではなくATM受入手数料を、東日本旅客鉄道はSuicaで交通以外の決済を稼ぎに変えた。
財務諸表のどこを見るか
売上高の計上が総額か純額かをまず確かめる。他社の取引を仲介する事業では、収益認識の注記に代理人取引としての純額表示が書かれ、取扱高と売上高が大きく乖離する。その差額が場を提供して得た手数料にあたる。規格や技術を開放した企業では、営業外収益の受取ロイヤリティと無形固定資産の特許権が対価の所在を示す。参加者を集める側の投資は無形固定資産のソフトウェアに積まれるため、償却年数と除却の有無を追う。セグメント区分の新設や名称変更も、収益源が移った時期の目印になる。
2020年代
2010年代
澤田宏太郎氏へ経営交代 創業者・前澤友作氏の辞任と、社長を選ぶ手続きの新設 レシピ事業への集中に転換 本業への絞り込みと、食領域の新規事業への再投資 米Glassdoorを1,430億円で買収 企業の口コミデータベースを1,430億円で買い足したHRテクノロジー事業の第2手 HRMOSの投入とSaaS多角化 隣接市場への広がりによる成功報酬型からの収益源の分散 みずほ銀行とAPI連携 国内初のメガバンクとの接続と、北国銀行への会計データの開放 三井住友FGとの資本提携 約80億円の第三者割当増資による大手金融グループの資本受け入れ Hulu日本事業の承継 事業承継による定額動画配信への参入 即決価格型CtoCの創業 スマホ前提の個人間取引への再定義による新市場の開拓 名刺管理サービスでCM放映 黒字経営から赤字を許す先行投資への転換と、市場そのものの創出 未完成のまま先行公開 課金機能を欠いた会計ソフトの投入と、その空白を「無料期間」と呼ぶ選択 iPhoneの取り扱い開始 自前の端末ラインアップで囲い込む方針を解き、AndroidとiOSの二本立てへ転じた Doctors.net.uk買収 英国での買収を起点に、現地ポータルを束ねる海外展開の型の確立 「LINE」の投入 検索・ゲームからメッセンジャーアプリへの主力の移し替え 冷媒R32特許の無償開放 独占を捨てて普及を優先する、微燃性冷媒をめぐる知財戦略 米ngmoco社の買収 開発会社の取り込みによる、世界向けソーシャルゲーム基盤の構築 ライブドアの買収 63億円を投じた検索サービス「NAVER」への取り込み 「すいそふろんてぃあ」建造 液化水素サプライチェーンへの集中と、世界初の液化水素運搬船の建造
2000年代
全国銀行データ通信システム接続 郵便局網の中で完結していた送金に、銀行間の決済網を重ねた選択 「HD DVD」からの撤退 自ら仕掛けた次世代規格戦争の終息と、敗北の受け入れ ジャパンネクストPTS開業 米ゴールドマン・サックスとの折半出資で始めた私設取引システム(PTS)事業への参入 食べログの立ち上げ 価格比較に続く二本目の収益源としての、飲食店口コミ事業の育成 デジカメ事業の黒字転換 映像事業の構造改革によるコスト構造の立て直しと収益基盤の回復 岩田屋をTOBで子会社化 連結子会社化を選ぶ一方での、丸井今井への出資の見送り ZOZOTOWNへ一本化 セレクトショップ17店舗の統合と、受託販売モールへの転換 あおぞらカード買収 カード会社の取得による個人金融事業への参入と、後の自社ブランド化 旅の窓口買収で経済圏構築 宿泊予約からDLJ証券にまで及んだ連続買収と、三領域にまたがる事業圏づくり m3.comへ統合 並行して運営していた二つの医療情報サイトを畳んでの一本化 高速多機能装着機NXT開発 モジュール型を軸に据えた次世代機への設計転換 アイワイバンク銀行設立 金利差ではなくATM受入手数料を収益の柱に据えた銀行の設計 Suica導入で決済拡張 交通ICから電子マネー・生活決済へ広げた事業領域の拡張 「出前館」の開設 初期負担も会費も課さない取り次ぎ条件による、宅配総合サイトの立ち上げ AT&T Wirelessへ出資 iモード・W-CDMAの世界展開を狙った海外通信事業者への約1.9兆円出資
1990年代
サールオートオークション買収 地方の会場を次々に取り込み、自社方式へ作り替えた全国網の組み立て kitchen@coin提供開始 創業とレシピ投稿サービスの段階的な収益化 ファッションECモール創業 輸入CD通販という家業から、受託販売のモール運営への転身 スカイパーフェクTV発足 先行する2陣営の合併による衛星放送事業の一本化 DDIセルラーグループとの提携 次世代携帯電話でのCDMA方式の共同採用と、陣営づくりへの全面的な踏み込み ソニー連合との決別 64ビット機NINTENDO64の単独開発という選択 米ヤフーとの合弁設立 米国企業との共同出資による国内法人の設立と日本での事業展開 PlayStation参入 家庭用ゲーム市場への進出 標準化買取モデルの構築 目利きを捨てた買取基準の統一とフランチャイズ・チェーン化
1980年代
ドミナント出店戦略 共同配送と単品管理を軸に組み上げた鮮度経営の確立 CD-Rの世界初商品化 That''sブランドによる消費財市場への参入と、追記型光記録メディア NTTからの分社独立 民営化直後のデータ通信事業本部の切り出しと資本金100億円での独立 NTT大容量方式の採用 開業時の無線方式へのTACS方式の不採用 飯塚真玄の専門特化宣言 東証2部上場でも多角化せず、会計事務所と地方公共団体の二本柱へ専門特化 関西セルラー電話を設立 全国8地域への分散設立による移動体通信への参入と、首都圏・中部圏の割り当ての譲歩 MSX規格提唱で国産結集 メーカー各社を一つのパソコン統一規格へまとめる旗振り役の獲得 IBM互換で国内首位に システムエンジニアを前面に立てた営業体制の構築と、その積み上げによる逆転