DeNA 米ngmoco社の買収 開発会社の取り込みによる、世界向けソーシャルゲーム基盤の構築
更新:
何をなぜ決めたか
- 概要
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2010年11月9日、DeNAは米ngmoco, Inc.を逆三角合併及び三角合併によって取得し、議決権の100%を握った。取得原価は325百万米ドル。うち現金は132百万米ドルにとどまり、DeNA株式の時価148百万米ドル、新株予約権の時価39百万米ドル、取得に直接要した費用5百万米ドルが積み上がる。ngmoco, Inc.の株式1株につきDeNAの普通株式0.17株を割当交付し、5,006,210株を交付した。企業結合日は2010年11月9日だが、当連結会計年度末をみなし取得日としたため、2011年3月期の連結業績に同社の損益は含まれていない。
- 背景
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フィーチャーフォン向けの「モバゲータウン」が伸び、2011年3月期の連結売上高は1,127億円、営業利益は561億円に達した。国内で組み上げた課金と運営の型は、スマートフォンが主役の海外市場へそのまま持ち出せる保証がない。2008年1月に米国でDeNA Global, Inc.を設けて前線の拠点としたものの、自前で開発力と利用者基盤を育てるには時間がかかる。取得の理由に挙げたのは、スマートフォン市場において相応の事業基盤を保有するngmoco, Inc.との一体運営を図り、グローバルなソーシャルゲームプラットフォームの構築を加速させることだった。
- 内容
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対価の支払いに充てるため、DeNAは普通株式12,105百万円と新株予約権3,245百万円を第三者割当により発行した。連結会社間の取引であり、連結の資金収支には表れていない。株式の交換比率は、創業期の急成長企業の評価法として米国で一般的な類似買収事例比較法を基準に、ディスカウンテッド・IPO法と類似会社比較法の結果も勘案して決めた。
契約には買収後の業績に応じた譲渡価額調整条項が置かれ、ngmoco社の2011年12月に終了する事業年度のEBITDAと売上が目標値を超えた分だけ追加の対価が支払われる。達成の度合いに応じて新株予約権の行使可能数が増える設計で、2011年3月末に今後増加しうる普通株式数は最大2,723,507株、発行済株式総数(自己株式を除く)147,466,418株の1.85%にあたった。
- 含意
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企業結合日に受け入れた資産は18百万米ドル、引き受けた負債は6百万米ドルで、対価のほとんどはのれん313百万米ドルとなった。円貨では25,510百万円が計上され、12年間の均等償却が2012年3月期から始まる。ソーシャルメディア事業に配分されたのれんは2012年3月期に2,572百万円を償却して26,577百万円となった。
2013年3月期のIFRS移行で償却は止まり、円安で帳簿価額はむしろ膨らむ。ゲーム事業ののれんは2015年3月末に42,827百万円、2016年3月末に40,109百万円。ngCoreは2013年12月にサポートを終え、2016年10月にはDeNA Global・ngmoco等の解散・清算が決まった。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
自社株を通貨にして買収したもの
この判断は、稼いだ現金で海外の開発力を買った話として語られやすい。だが対価の内訳を見ると、現金は132百万米ドルにすぎず、残りは自社の株式と新株予約権だった。高い株価そのものを通貨にして、シリコンバレーの人材と会員基盤を獲得した取引だったとみられる。受け入れた純資産をはるかに超えて積まれたのれん313百万米ドルは、その通貨で何を買ったのかを一行で示している。買ったのは資産ではなく、これから生まれるはずの超過収益力の見積りだった。
もっとも、その見積りは帳簿の上ではしばらく傷まなかった。IFRSへ移ると償却が止まり、円安が重なって、ゲーム事業に配分されたのれんは2015年3月末に42,827百万円まで膨らむ。帳簿価額が増えていく一方で、ngCoreはサポートを終え、米国子会社は解散へ向かった。数字が減らないことと事業が育つことは別物で、その乖離が顕在化するまでには時間がかかったのだろう。国内で築いた強みをどの市場でどう生かすのか——早い時期に世界へ問いかけたこの主題は、新しい領域へ参入するたびに形を変えて問い直されたのだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
買収の条件
買収の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 合併契約の締結日 | 2010年10月12日 | DeNA・DeNA Global・ngmoco社らが締結した合併契約の日付 |
| 被取得企業 | ngmoco, Inc. | 事業の内容はスマートフォン向けソーシャルゲームアプリの開発、提供 |
| 企業結合日 | 2010年11月9日 | 当連結会計年度末をみなし取得日としたため、当期の業績には含まれない |
| 企業結合の法的形式 | 米国法に基づく逆三角合併及び三角合併 | 買収子会社Stream Acquisitionを消滅会社とする逆三角合併ののち三角合併 |
| 結合後企業の名称 | ngmoco, LLC | |
| 取得した議決権比率 | 100% | |
| 取得原価 | 325百万米ドル | 現金・DeNA株式・新株予約権の時価と、取得に直接要した費用の合計 |
| 対価とした現金 | 132百万米ドル | |
| 対価としたDeNA普通株式の時価 | 148百万米ドル | 交付した株式数は5,006,210株 |
| 対価とした新株予約権の時価 | 39百万米ドル | 買収の代替報酬として発行。行使可能数はアーンアウトの達成度で増える |
| 取得に直接要した費用 | 5百万米ドル | |
| 株式の交換比率 | ngmoco, Inc.株式1株につきDeNA普通株式0.17株 | 類似買収事例比較法を基準に、ディスカウンテッド・IPO法等も勘案した |
| 対価に充てた第三者割当 | DeNA普通株式12,105百万円・新株予約権3,245百万円 | 連結会社間の取引であり、連結の資金収支には表れない |
| 発生したのれん | 313百万米ドル | 円貨では25,510百万円。主としてngmoco社の今後の事業展開による超過収益力 |
| のれんの償却方法及び期間 | 12年間にわたる均等償却 | 2012年3月期から償却を開始。2013年3月期のIFRS移行で償却を止めた |
| 受け入れた資産 | 18百万米ドル | 流動資産11百万米ドル、固定資産7百万米ドル |
| 引き受けた負債 | 6百万米ドル | 流動負債6百万米ドル、固定負債0百万米ドル |
| 条件付取得対価 | 買収後の業績に応じた譲渡価額調整条項 | 追加支払が生じた場合は取得価額を修正し、のれんと償却額を修正する |
| アーンアウトの業績指標 | EBITDA及び売上 | ngmoco社の2011年12月に終了する事業年度。目標値に達しなければ発生しない |
| 追加で発行されうる株式数 | 最大2,723,507株 | 2011年3月末の発行済株式総数(自己株式を除く)147,466,418株の1.85% |
| 通期換算した影響額 | 売上高22百万米ドル | 売上総利益は11百万米ドル。当該注記は監査証明を受けていない |
出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第13期(2011年3月期)【企業結合等関係】【事業等のリスク】【新株予約権等の状況】
のれんと無形資産の推移
DeNA:のれんと無形資産の推移
| (百万円) | のれん | 無形資産(のれんを除く) | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2006年3月期 | 0 | 213 | 13,294 | |
| 2007年3月期 | 509 | 694 | 21,120 | |
| 2008年3月期 | 721 | 1,064 | 32,847 | |
| 2009年3月期 | 0 | 1,356 | 37,335 | |
| 2010年3月期 | 0 | 1,698 | 55,273 | |
| 2011年3月期 | 28,062 | 2,163 | 127,216 | ngmoco社とGameview社の取得でのれんが計上された。うちngmoco社分は25,510 |
| 2012年3月期 | 32,512 | 4,229 | 152,486 | 横浜ベイスターズの取得で5,935増。ngmoco社分は2,572を償却した |
| 2013年3月期 | 39,437 | 8,719 | 194,784 | IFRSへ移行。のれんは非償却となり、無形資産はのれんを含まない表示に変わる |
| 2014年3月期 | 42,730 | 15,089 | 197,325 | |
| 2015年3月期 | 53,111 | 19,241 | 218,529 | 企業結合で4,404、為替換算差額で5,977増えた |
| 2016年3月期 | 50,825 | 16,860 | 254,861 | 為替換算差額で2,769減。減損損失累計額はこの時点でない |
出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第8期〜第14期(連結貸借対照表) / ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第15期〜第18期(連結財政状態計算書・注記「のれん」)
ソーシャルゲームを担う報告セグメントへ配分されたのれん
DeNA:ソーシャルゲームを担う報告セグメントへ配分されたのれん
| (百万円) | のれん残高 | 当期償却額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 28,062 | 154 | ソーシャルメディア事業。全社ののれん28,062の全額がこのセグメントにある |
| 2012年3月期 | 26,577 | 2,572 | ソーシャルメディア事業。全社の32,512との差5,935はプロ野球事業 |
| 2013年3月期 | 33,553 | − | IFRSではのれんを償却しない。前期末の残高はIFRSベースで29,361 |
| 2014年3月期 | 36,846 | − | ソーシャルメディア事業。全社の42,730との差はプロ野球事業ほか |
| 2015年3月期 | 42,827 | − | 報告セグメントの区分変更により、ゲーム事業への配分となる |
| 2016年3月期 | 40,109 | − | ゲーム事業。ほかにプロ野球事業5,883、キュレーション等4,833がある |
出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第13期・第14期【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】 / ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第15期〜第18期(注記「のれん」の資金生成単位)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- DeNA 有価証券報告書【沿革】
- DeNA 有価証券報告書(連結・2020年3月期)
- ディー・エヌ・エー 適時開示「米国ngmoco社の買収について~世界No.1のソーシャルゲームプラットフォームの構築を加速~」
- ディー・エヌ・エー 決算説明会 質疑応答「2010年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第13期(2011年3月期)【企業結合等関係】」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第14期(2012年3月期)【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第15期(2013年3月期)注記「のれん」」
- ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第18期(2016年3月期)注記「のれん」」