DeNA 怪盗ロワイヤルの課金転換 広告収入に依存するモデルからアイテム課金へと収益源を移す転換

更新:

時期 2009年10月
当時の社長 守安功
論点 収益モデルの転換
何をなぜ決めたか
概要

携帯電話専用ゲームサイトとして2006年2月に始まった「モバゲータウン」は、アバターの販売と広告を収益源としていた。DeNAは2009年10月、自ら開発したソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の正式サービスを始め、ゲーム内で使うアイテムの販売へ収益の軸を移した。

2010年3月の月間ページビューは2009年9月の3.5倍以上に増え、期末の会員数は1,813万人となった。転換の効果は翌期に表れ、連結売上高は2009年3月期の37,607百万円から2011年3月期の112,728百万円へ、営業利益は15,843百万円から56,096百万円へ伸びた。

背景

モバゲータウンの会員数は2009年3月末に1,344万人まで増え、月間187億ページビューを持つ国内最大級のモバイルメディアとなっていた。だが収益源だったアバター関連売上は、アバター自体や利用シーンの新規性の不足、健全性施策の強化による若年層のコミュニティレベルの低下といった要因で減少に転じていた。

広告関連売上も景気低迷に伴う広告主の出稿の手控えで落ち、会員を集めるほど費用はかさむのに収益が伸びない状態に陥っていた。一方で高速データ通信が可能な第三世代携帯電話の加入者は2010年3月末に1億905万人、加入者全体の97.2%を占め、少額の課金が成り立つ土台は整っていた。

内容

2009年10月に内製ソーシャルゲームの正式サービスを開始し、基本の利用は無料のまま、ゲーム内で使うアイテムをゲーム内専用仮想通貨「モバコイン」で販売する方式をとった。12月には他社の運営するSNSへのゲーム提供と、テレビコマーシャルを中心とした広告宣伝活動を始めた。

2010年1月には、プラットフォームを外部のゲームデベロッパーへ開放する「モバゲーオープンプラットフォーム」を開始した。同年3月末には59社から148タイトルが公開され、2011年3月末には317社869タイトルへ増えた。同年10月にはヤフーとの提携でPC向けの「Yahoo! Mobage」も始めている。

含意

ゲーム関連売上は2011年3月期に79,482百万円(前期比440.6%増)となり、同期の広告関連売上7,037百万円とアバター関連売上9,880百万円を大きく上回った。会員数も2011年3月末に2,714万人、2012年3月末に3,998万人へ増え、収益源は広告からアイテム課金へ入れ替わった。

もっとも、ソーシャルゲームとプラットフォームサービスが短期間で主要収益源となったことは、移り変わりの激しいゲーム需要による変動リスクを抱えることでもあった。多様で強固な収益構造の構築を課題に掲げ、この事業を主導した守安功氏は2011年6月に代表取締役社長兼CEOへ就任した。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

広告メディアから課金プラットフォームへ

この転換の核心は、単一タイトルの商業的な成功よりも、収益を生む仕組みそのものを作り替えた点にある。無料で会員を集めて広告とアバターを売るモデルは、会員が増えても一人あたりの売上が伸びにくく、広告市場の変動に収益が縛られる。怪盗ロワイヤルで確立したのは、利用者同士の競争と協力を課金の動機へ変える設計と、外部の決済に頼らずゲーム内専用仮想通貨で売上を回収する体制であった。集客と課金と決済を一つに統合したこの仕組みは、2010年1月のプラットフォーム開放によって、他社の作ったゲームの売上までも自社の収益へ流し込む器へと広がった。

もっとも、この成功は収益の偏りという課題を同時に残した。ゲーム関連売上が2011年3月期に79,482百万円へ膨らむ一方、広告関連売上は7,037百万円まで減少し、収益は移り変わりの激しいゲーム需要に全面的に委ねられた。連結営業利益が2015年3月期に24,764百万円まで減少したのは、その裏返しだろう。広告に依存するモバゲータウンを課金プラットフォームへ作り替えた選択は、DeNAに国内で有数の高収益をもたらすと同時に、その成長モデルへの依存という次の課題を生んだのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
収益モデル転換の条件

収益モデル転換の条件

科目 概要 備考
転換の起点となったタイトル 怪盗ロワイヤル 2009年に「Mobage」で大ヒットし、当時は月あたり数十億円のモバコイン消費があった
正式サービスの開始 2009年10月 「モバゲータウン」で内製ソーシャルゲームの正式サービスを開始した
課金の方式 ゲーム内で使用するアイテムの販売 基本の利用は無料。ゲーム内専用仮想通貨「モバコイン」で決済する
他社SNSへのゲーム提供 2009年12月 他社の運営するSNSに内製ソーシャルゲームの提供を開始した
テレビコマーシャルの開始 2009年12月 テレビコマーシャルを中心とした積極的な広告宣伝活動を開始した
プラットフォームのオープン化 2010年1月 ゲームデベロッパーに開放する「モバゲーオープンプラットフォーム」を開始した
オープン化の規模 59社148タイトル 2010年3月末。2011年3月末は「Mobage」に317社869タイトルへ増えた
会員数 1,813万人 2010年3月末。前期末比468万人増。同年3月は過去最高の87万人増を記録した
月間ページビュー 616億 2010年3月。前年同月比429億増。2009年9月と比べて3.5倍以上に増えた
PC向けプラットフォームの開始 2010年10月 ヤフーとの提携による「Yahoo! Mobage」。スマートフォン向けは同年12月
サービス名称の変更 2011年3月 「モバゲータウン」を「Mobage」へ。ロゴも世界共通のものに一新した

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第12期(2010年3月期)【沿革】【業績等の概要】、第13期(2011年3月期)【業績等の概要】、2012年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約

モバゲーを擁するセグメントと連結の業績

DeNA:モバゲーを擁するセグメントと連結の業績

(百万円) セグメント売上高連結売上高連結営業利益 備考
2006年3月期 2,7946,4291,883 モバイル事業。モバゲータウンは2006年2月に開始したばかり
2007年3月期 9,01414,1824,506 モバイル事業
2008年3月期 23,63829,73612,662 モバイル事業
2009年3月期 30,73037,60715,843 モバイル事業。アバター関連売上と広告関連売上がともに減少に転じた
2010年3月期 32,75948,10621,266 ポータル・マーケティング事業へ区分変更。10月に内製ソーシャルゲームを開始
2011年3月期 97,193112,72856,096 ソーシャルメディア事業へ名称変更。売上高・営業利益とも7期連続で過去最高
2012年3月期 130,499145,72963,415 ソーシャルメディア事業
2013年3月期 179,627202,46776,840 ソーシャルメディア事業。連結売上高・営業利益はこの期が頂点
2014年3月期 155,871181,31353,198 ソーシャルメディア事業
2015年3月期 115,511142,41924,764 ソーシャルメディア事業
セグメントと連結の売上高
セグメント売上高(百万円)他のセグメント(百万円)連結営業利益率(%)

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第8期〜第17期【業績等の概要】【生産、受注及び販売の状況】

ソーシャルメディア事業の売上内訳

DeNA:ソーシャルメディア事業の売上内訳

(百万円) ゲーム関連売上アバター関連売上広告関連売上 備考
2011年3月期 79,4829,8807,037 ゲーム関連売上は前期比440.6%増。内部売上高の消去前の金額
2012年3月期 118,2735,6935,026 前期まで「その他売上」に含めた海外売上高をゲーム関連売上へ区分変更

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第13期(2011年3月期)・第14期(2012年3月期)【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

モバゲータウンの会員数

DeNA:モバゲータウンの会員数

(万人) 会員数 備考
2008年3月期 987 前期末比545万人増。月間179億ページビュー
2009年3月期 1,344 前期末比357万人増。10代中心の構成から20代以上へ裾野を広げた
2010年3月期 1,813 前期末比468万人増。2010年3月は過去最高の87万人増を記録した
2011年3月期 2,714 前期末比901万人増。30代以上の会員獲得割合が増加した
2012年3月期 3,998 前期末比47.3%増。ARPU(ユーザ1人当たりの利用高)も向上した
モバゲータウンの会員数
会員数(万人)

出所:ディー・エヌ・エー 有価証券報告書 第10期〜第14期【業績等の概要】

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参考文献
出典・参考
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第11期(2009年3月期)【業績等の概要】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第12期(2010年3月期)【沿革】【業績等の概要】【対処すべき課題】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第13期(2011年3月期)【業績等の概要】【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • ディー・エヌ・エー 有価証券報告書「第14期(2012年3月期)【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • ディー・エヌ・エー 決算説明会 質疑応答「2009年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約」
  • ディー・エヌ・エー 決算説明会 質疑応答「2012年度第4四半期決算説明会 主な質疑応答の要約」

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